Event Reports

国際イノベーション会議 Hack Osaka 2014 2014.2.19

( 14年03月13日 ) img_conference_main

イベントの概要やプログラムはこちら

ナレッジキャピタルに鳴り響く和太鼓の音

関西出身の太鼓パフォーマー 和奏人「宴」(en)によるオープニング演出
「大阪を、世界中からチャレンジする人々が集まり、次々と成功する人々がでてくるイノベーション・ハブとしていきます。」
昨年2月に盛況で幕を閉じた大阪市主催の国際会議が、今年も2月19日に開催された。第2回となる”Hack Osaka 2014”は、前回の会場である中之島中央公会堂から昨年4月についにオープンしたグランフロント大阪のナレッジシアターへと会場を移し、起業家、支援者、大企業社員など様々な参加者およそ300名が日本国内のみならず海外からも集まる熱気溢れる場となった。当日はインターネットによるオンライン中継も行われ、基本、英語による国際会議の様子はインターネットを通じて世界へ発信された。
Hack Osaka 2014のオープニングは勇壮な和太鼓の演奏から始まり、イギリス・リヴァプール出身でありながら日本で落語家として活躍するダイアン吉日さんの司会進行のもと、大阪市副市長 田中清剛が開会宣言を行った。

  • 司会のダイアン吉日氏
  • 開会宣言をする田中 清剛副市長

基調講演—–ロンドンはどのようにベンチャー企業の生態系を創り出したか

マット・ウェブ氏基調講演の1人目は、イギリスBERG社CEOのマット・ウェブ氏。マット氏は、自身の製品”Little Printer”を題材にしてモノとインターネットの融合について語るとともに、ロンドンという都市がいかにベンチャー企業を生み出す生態系を作っていったかのストーリーを語った。
「私たちBERGがやっていることは、”テクノロジーを使って人をつなぎ、体験をともにする”ということ。そうした中で生まれたのがLittle Printerだった。」と述べ、Little Printerが生まれた過程について「Little Printerを作った当時は商品化を考えていなかったが、周囲からの反響が大きかったので商品化した。ユーザーはLittle Printerに自由に機能を追加することが出来る。私達が市場に出したときに提供していたのはニュースや天気や交通網といった情報だったが、予想を上回る面白い機能やアプリをユーザー自身が作ってくれた。あと5~10年もすれば、全ての製品がそうなっていくだろう。」と語った。

また、ロンドンのベンチャー集積拠点であるテックシティについてマット氏はこう語った。今ではテックシティと呼ばれベンチャー企業の集積に注目されているロンドンだが、マット氏によればロンドンには元々そういったベンチャー企業の集積やそのための支援といったものはほとんどなかったそうだ。
「元々ロンドンにテクノロジー・スタートアップ企業(創業初期のベンチャー企業)はなく、たとえ生まれてもみんなアメリカに出て行ってしまっていた。その中で、ロンドンからテクノロジー・スタートアップを増やそうということで、場所として”シリコンラウンドアバウト”という名前をつけた。当時は10社しかテクノロジー・スタートアップはなくベンチャーキャピタルもなかったが、シリコンラウンドアバウトの噂を聞いて少しずつ雑誌に載ったり特集が組まれたりして広がっていった。その後に一番大きかったのは、イギリス政府が関与を始めたことだ。彼らはシリコンラウンドアバウトに新しく”テックシティ”という名前をつけて、『テックシティで今、色々なことが起きている!』と、どんどん情報発信を行った。そうすることで人はますます増えていき、2012年には1,300社ものテックスタートアップが立ち上がった。現在も増加を続けており、毎日なんらかのイベントが実施されている。今ではテクノロジー・スタートアップがロンドンの多くの雇用を担うようになった。」

マット氏は講演の最後に、「今までの取り組みの中で2つの教訓が得られた。」と切り出し、「1つはハードウェアの新しい世界が生まれて来ているということ。製造が簡単になっただけでなく、お金集めも簡単になっていて、オンラインでお金が集められる。メディア、インターネットを活用することで、小さなグループや企業が前面に出て活躍するようになっている。もう1つは、楽観主義、起業家精神が大切だということ。起業家精神というのは火花のようなもので、火花を混ぜあわせれば実際の火を起こすことが出来る。これらをバラバラにやるのでなく一緒になれば、ワクワクすることが実現出来る。」と述べ、「是非大阪もうまくいってほしい」とエールを贈って講演を終えた。

基調講演—–世界的なハードウェア・ベンチャーの実態とシリコンバレーの文化

エリック・ミジコフスキー氏2人目の講演は、スマートウォッチ”Pebble”を世に出し、クラウドファンディング・サイトの”キックスターター”でおよそ1,000万ドルという巨額の資金調達に成功したことで、世界を賑わせたエリック・ミジコフスキー氏(Pebble Technology CEO)。エリック氏は、自身の取り組みを踏まえて、ハードウェア・ベンチャーへの関心のあり方に対し、とても気さくに、謙虚なスタンスでありながらも、ハードウェア・スタートアップの魅力と具体的なアドバイスを熱く語った。

エリック氏は「私が一貫してやっているのは、人の問題を解決するということだ。」という言葉から講演をスタートし、自身がどのような過程でPebbleを生み出したのかを語った。

「”Make something people want. Don’t let your startup die.” 第一に、人にほしいと思われるものを創るということ。これはYコンビネーターのポール・グレアムの言葉。とにかく人が使いたい、これが大好きだと言ってもらえるものを創って、本当に気に入ってもらっているかどうかをしっかりと測定する。もう1つは、これは6年間一貫していることだが、会社はつぶしてはいけないということ。存続していれば成功と言える。」

Pebbleの製作を始めたのは大学時代からだったというエリック氏は「工学部なので実際のモノを創るプロジェクトをやらなければいけなかった。」と述べ、その過程を語った。
「自分たちでインパルス(Pebbleの前進となった端末)を50台作ってユーザーに売った。この頃は昼夜を問わず、問い合わせや苦情の対応に追われていた。この初期の顧客から学んだことは今の製品の形にもつながっている。その後1,000台を生産。我々はハードウェア専門のチームで人数も3~4人という少人数でありながらうまく進められたのは、ソフトウェアのSDK(ソフトウェア開発キット)を作って人々を巻き込んだからだ。」

エリック氏は聴衆に対して、「あなたもハードウェアの会社を始めてみませんか?世界にソフトウェアの会社はたくさんある。しかしハードウェアの会社は少ない。もっともっとハードウェアにチャレンジしてほしい。」と述べ、ハードウェア・スタートアップの魅力について「自分で作ったものを身につけるというのは本当に素敵なこと。ハードウェア・スタートアップを創るときに重要なのは、ソフトウェア・スタートアップから学んだことを活かすこと。MVP(Minimum Viable Product:必要最低限の機能を持つ製品)を創ること。インパルスを初めて作った際のことを振り返ると、あれはMVPを満たしたものだった。資材のコストもそれほど高くない。重要なのは、売れるところまでモノを作りこむこと。もう一つ重要なのは、色々なことを過度に心配しすぎないことだ。」と語った。

カナダを中心に活動していた彼が後に拠点を移したシリコンバレーについて、エリック氏はこのように語った。
「カナダからシリコンバレーに行ってわかったのは、人々がいろんなアイデアを交換しているということ。競合と思われる会社の相手とでも、コーヒーを飲みながらいろんなアイデアの交流をする。同じ問題に直面する会社同士で情報を交換していて、特にハードウェアはそうしており、別の会社の人たちと一緒に解決策を考えていった。」
また、世界的に話題になったPebbleのクラウドファンディングでの調達について、「2012年の当時はハードウェアへの投資がなく、資金調達が難しかった。何度も試みたがうまくいかず、キックスターターに出したところ初めてうまくいった。大切なのは、とにかくアイデアを人に話していくことだと思う。聞いてくれる方に敬意を持って話す。その中でも一番いい方法は、実際にモノを提供してフィードバックを得ることだ。」

講演の最後にエリック氏は、「ハードウェア・スタートアップで一番楽しい瞬間は、実際に自分が作ったものに触れられるとき。作ったモノが目の前にあるというのは本当に感動的だ。」と述べ、「今現在、何十万というユーザーがいて様々なイベントを実施してもらっている。何百人というユーザーを招いてアプリを創るというイベントも行った。」「ハードウェアやモノのインターネットに興味がある方と是非ディスカッションしたい。何かためになる知識があればどんなことでもシェアしていきたい。」とメッセージを投げかけて講演を終えた。

パネルディスカッション—–Internet of thingsの 潮流に見る日本の産業の可能性


1つ目のパネルディスカッションでは”Internet of thingsの潮流に見る日本の産業の可能性”と題して、基調講演に登壇したマット氏 とエリック氏に加え、さらに日本の起業家として株式会社カブク代表取締役兼CEOの稲田雅彦氏を迎え、モデレーターにはITジャーナリストとして著名なThe Wave湯川塾塾長の湯川鶴章氏を交えて進められた。

湯川 鶴章氏最初のお題である「世界のモノのインターネット化の領域では何が起きているのか?」という投げかけについて、エリック氏は「全員が取り組んでいるとは言えないが、ハードウェア・スタートアップの数は増えてきている。3年前にカナダからシリコンバレーに移ったが、当時はまだハードウェア・スタートアップのブームは始まったばかりだった。今では製品を創ることも、プロトタイプを作ることも簡単になってきた。例えば、3Dプリンターが使えるし、キックスターターもすごいサービスだ。キックスターターがあることで世界中のサポートを得られる。また、モノのインターネット化に関して言うと、たくさんの人々がスマートフォンを使っているということ。3Gや4Gといったインターネット回線がポケットの中に入っているので、自分の製品にSIMカードが搭載されていなくてもインターネットにつながることが出来る。」と述べた。マット氏は「ロンドンのハードウェア・スタートアップはまだ10~20くらい。」とし、稲田氏は「東京のハードウェア・スタートアップは全体の5%未満というのが現状。クラウドファンディングの規模がかなり小さい。ハードウェアについてはお金集まりにくく、またハードウェアのエンジニアがスタートアップに流れて来づらいし、ハードウェアとソフトウェアのコミュニケーションのズレという問題もある。」と述べた。

「日本のハードウェアの人材は大企業に留まってしまっている」という湯川氏のコメントに対してマット氏は、「小さく事業を経験してみることが大切だ。小さい会社で働くことを味わうと、人は考え方が変わる。例えばロンドンではStartup Weekendといった短期間の起業経験イベントというのがある。」と紹介し、エリック氏は「ハードウェア・スタートアップはいちから自分たちでエコシステムを作らないといけないということは決してなく、他のサービスと連携すればいい。成功するには様々なサービスとどんどん連携していくのが重要だ。」述べ、「日本が特殊なのは社会におけるテクノロジーの浸透率が高いこと。街なかにテクノロジーがあふれている。その中で、自分はどんな問題を解決するかから始めるといい。これを解決したら面白い、素晴らしいと思える問題を日々の生活の中から見つけることだ。」と提言した。

稲田 雅彦氏2つ目のお題は「モノのインターネット領域で今注目している分野はどこか?」について。エリック氏は「センサーを使ったウェアラブルなデバイス。低消費電力で通信できるBLE(Bluetooth Low Energy)という技術があって、これを使えば自転車やスキー、ランニングなど、人が何か行動するときにセンサーを通してデータを集めるといったことが出来る。個別のデータそのものは重要ではないが、それらのデータを相関させればパターンを見出すことが出来る。」と述べた。
一方マット氏は、「家電製品に興味を持っている。家庭だけでなくオフィスなどでも、常につながっていられるようにすれば、生活がもっと楽になる。たとえば、ボタンを押せば何を買えばいいかわかる冷蔵庫など。」
湯川氏の「スマートフォンは今後どうなるのか?」という投げかけについてエリック氏は、「ますますパーソナライズ(個人化)される。Pebbleではインターフェイス(盤面)をカスタマイズすることが出来る。ユーザーは子どもの写真やスポーツチームの写真、猫の写真などを選択して自分用に設定することができる。色々な人が端末をハッキングできるようになる。」と述べた。この発言に対しマット氏は「エリック氏の言う”ハッカブル”という考え方は面白い。Pebbleというメーカーは、コミュニティだ。顧客は顧客であると同時に開発者でもある。」と述べた。

3つ目最後のお題である「大阪がテクノロジーのハブになるために何をしたらいいか」というテーマについては、マット氏が口火を切った。
「大阪の状況は5年前のロンドンと状況が似ている。アイデアがある人がたくさんいて、試作でいいものが出来ると、みんなアメリカに行ってしまった。当時のロンドンには3つのことが足りなかった。1つ目は資本。2つ目は、大企業とスタートアップが協業する場所。大企業がテクノロジーを理解しておらず、同時に起業家精神についても理解していなかった。3つ目は、コミュニティがなかった。スタートアップというのはそれを支援するネットワークがないと立ち上げることが出来ない。」
エリック氏はシリコンバレーを題材にしながら「シリコンバレーのスタートアップに関する文化はクレイジーと言えるレベルだ。シリコンバレーでは普通に考えるとおかしいようなことが当たり前になってしまう。そこに入るといろんなクレイジーなことが普通に見えてしまう。また、批判的になってはいけない。大丈夫かな?と思ったところでも信じてみる。シリコンバレーでよしとされるのは、建設的な批判。ダメだからダメと言うのではなくて ”それはいいね。これを付け加えたら?” とアドバイスする。また、”面白いことをやっているね。私の友達も興味があるかもしれないから会ってみたらどうだい?”というように人を紹介することも大切だ。」と述べ、マット氏も「シリコンバレーではタクシー運転手もスタートアップに詳しい。ロンドンもこの点についてはまだまだ。(自治体や政府は何が出来るかについて質問を受けて)イギリス政府が地域に名前をつけて世界に発信したことが大きかった。テックシティが有名になると、そこの人たちが”自分もテックシティの一員なのだ”という感覚を持つようになる。もう1つは、イベントを開催すること。テックシティではハードウェアに関するものなど、ベンチャーに関するイベントや会合が毎週開かれている。」
エリック氏は「大阪市や大阪イノベーションハブは既に重要なことを出来ている。それは、ベンチャー企業がプレゼンテーションをするピッチコンテストだ。Pebbleのプロトタイプも小切手で資金をもらったことから実現できたが、それも実は今日この後、行われるようなピッチイベントがきっかけだった。」と述べた。
最後にモデレーターの湯川氏は、「大阪は何故、大阪をテクノロジーのハブにしたいのかを考える必要がある。雇用のためか、経済のためか。大阪のことだけを考えていては、大阪以外のところが力を貸してくれない。大阪だからこそ出来ること、大阪がすることで世界に貢献出来ることを考える。そうしないと世界中から手伝ってもらえない。何をすれば大阪は世界に貢献できるのかを考えることだ。」と述べ、パネルディスカッションを終えた。

パネルディスカッション—–大企業の新たな挑戦~ベンチャーとのコラボレーション


Hack Osaka 2014の2つ目のパネルディスカッションのテーマは”大企業の新たな挑戦~ベンチャーとのコラボレーション”。このパネルディスカッションでは昨年、”CoCreation Jam”といったハッカソンイベントを大阪市とのコラボレーションで実施したシャープ株式会社から上田徹氏が、KDDI∞Laboなどのベンチャー支援の事例で知られるKDDI株式会社から江幡智広氏、日本の伝統的ものづくりに関する情報発信や企画で知られる和える株式会社の若手起業家矢島里佳氏が、そして”ひとり家電メーカー”の名で知られデザインからエンジニアリングまで一人でこなすBsize代表の八木啓太氏が登壇した。モデレーターは、Morning Pitchなど多くの”大企業×ベンチャー”のコラボレーションの場をアレンジしてきたトーマツベンチャーサポート株式会社の斎藤祐馬氏が担当し、司会を務めた。

斎藤 祐馬氏1つ目のお題である「なぜ日本の大企業では、新規事業が生まれにくいのか?」という問いかけに対して、シャープの上田氏は大企業ならではの課題を語った。「大企業とベンチャーで文化が違っている。当社だと製品信頼性へのこだわりなど、様々な事柄について内部的な規則が随所にある。また、ベータ版という概念もない。これは、良いか悪いかは別として、文化としてそうなっており、ブレイクスルーしなければいけないところだと思っている。」
KDDIの江幡氏も「ベンチャーと大企業ではスピード感が違う。ベンチャーは小さい人数でまわしながら繰り返し進めていく。それに対して大企業は足並み揃えて進めるというやり方なので、相当違っている。たとえば、プロモーションで来週1億使いたいと言っても通らないように、判断や調整の仕方も変わってくる。」と述べ、「KDDIもベンチャーさんと昔からお付き合いできる関係があったかというとそうではなく、先ずベンチャーさんのネットワークにKDDIがどう関わるかというところから少しずつやった。いくつかのベンチャーファンドにLP(リミテッド・パートナー)として出資させていただいて、そこを通じたネットワークに入らせていただき、どうベンチャーさんと関わらせていただけるかを学んでいった。そうした中、自分たちでファンドを作るということにつながった。」とKDDIのこれまでを語った。

八木 啓太氏2つ目のお題「大企業で新規事業を産みだしていくために何が必要なのか?」について、和えるの矢島氏は自身が大手企業への就職ではなくベンチャーを起業すると考えた経緯などを踏まえ「私が就職せずベンチャーをしたのは、疑問を持ったから。疑問を持つ力が必要ではないか。」と述べた。この話を受けてシャープの上田氏は「仰るとおりで、どうしても大企業では視野が狭くなる。大阪市さんとコラボしてハッカソン形式のイベント”CoCreation Jam”を昨年実施したのもそういった考えから。アクオスとロボット家電のココロボを題材として提供したところ、”ツンデレロボ”といった社内では出てこないようなプロダクトが出てきた。シャープ社内だと誰もこんなことをやっていいなんて思わないが、一方でハッカソンのような場だと1日半で通信も含めて動くものが実現してしまう。」と自身の驚きの体験を振り返った。
八木氏は自身が大手企業に勤めていた頃の経験を踏まえながら、「(新しいストーリーをどう創るかについて)大切なのは顧客のことをどれだけ考えられるか。また、社会や文化までも考えられるか。大手企業の技術者の方も、ハッカソンの場では顧客を考えられるが、社内だと上司などに意識が向いてしまう。そうなると真の顧客に届けるというのがとてもむずかしい。一方でハッカソンやベンチャーではそういったことが実現出来る。」と述べた。

江幡 智広氏3つ目のお題である「大企業とベンチャー企業は、どのようにコラボレーションを行っていくべきか?」について、江幡氏は「GREEやGoogleとの共同は、今でこそ事例として取り上げられるようになったが、やっている最中は正直成功するとは思っていなかった。コツがあるとすれば、ある程度ベンチャーさんに迎合するというか、彼らの目線に合わせて、”その仕事をするならKDDIの論理を捨てなさい”と考えること。ベンチャーの事業が大きくなるために必要なことで、自分たちに出来ることがあれば全てやる。とはいえ会社の中での反発は当然ある。」と述べた。
一方、実際にベンチャーの立場で大手企業と連携することのある八木氏は、「ベンチャーとして大手と提携するときは、向こうに提供するメリットを明確に定義することが大事。下請けとして受けるという構造ではメリットが発揮出来ないと思うので、メンバーの一員として一緒に取り組むといい。」と述べ、同じくベンチャーの立場で連携する場面のある矢島氏は「文化交流から始めることが大事だと思っている。新しいプロジェクトを実行するのは文化交流が出来てから。一つずつ小さなところからコラボレーションさせていただいている。」と述べた。

矢島 里佳氏大企業とベンチャーのコラボレーションにおける一つの論点である”メディアへの露出”について、八木氏は「ひとり家電メーカーという名前をいただいたが、元々自分としては一人でやるのは弱みだと思っていて隠してやっていた。しかし、むしろそれを公開してお話をさせていただくと、興味を持っていただけて売上も上がっていった。わかりやすさはすごく大事。また、メイカーズ・ムーブメントに支えられた。メディアからの取材に一つ一つ、真摯に対応していきました。」と語った。

上田 徹氏パネルディスカッションの最後には、シャープの上田氏が「新しいユーザー体験を提供するのは、シャープだけでは難しい。今回のような機会を活用し、連携させていただきたい。日本、大阪を活性化させるには、スピードが大事だと思っている。」と述べ、KDDIの江幡氏は「ベンチャーとイノベーションを生むために何かするというのももちろんだが、私のミッションとしてはKDDIだけでなく異業種の大企業の方とも組んで、そしてベンチャーと組むというのをいくつか実現したいと思っている。三方良しというのを作れたらうれしい。」と、それぞれの今後の方向性について語った。

 

大阪市都市計画局理事 吉川正晃によるメッセージ

カンファレンスの最後に大阪市理事 吉川正晃は、この1年間の大阪イノベーションハブでの様々な取り組みの成果を振り返りながら「エコシステムを作って、継続的なイノベーションを生む。情報、資金、人材などを惹きつける。それによって関西と世界のゲートウェイになっていきたい。」と大阪イノベーションハブのビジョンを語り、国際会議を締めくくった。

 

参考)都市活力研究所主催 インターナショナル・ピッチコンテスト

公益財団法人都市活力研究所が主催事業として初めて取り組む”インターナショナル・ピッチコンテスト”では、国内外から応募のあった中から、一次審査をくぐり抜けた総勢10名のスタートアップがプレゼンテーションを行った。大阪市は、本プログラムが国際イノベーション会議との親和性が高く、相互連携することでより有意義な効果を生み出すと判断し、共催することとした。
登壇した各チームとプロダクト概要については以下の通り。

1:ShareWis
EdTech(教育×IT)領域に取り組む、大阪のスタートアップ。CEOは辻川友紀氏。学びたい学習者と、様々な学習コンテンツとのマッチングをする無料のオンライン学習サイトを提供。
http://share-wis.com/
2:8villages
モバイルを活用して農家向けサービスを展開する、インドネシアのスタートアップ。FounderはSanny Gaddafi氏。農家や農業関係者の情報流通を改善することで、農業におけるバリューチェーンを変えていくことを目指す。
http://www.8villages.com/
3:Warrantee
スマートフォンアプリによる保証書の電子化サービスを提供する、大阪のスタートアップ。CEOは庄野裕介氏。現状のWebでの製品情報や個人情報の入力はとても煩雑で手間がかかるため、この課題をバーコードのスキャンシステムやカメラでのテキストマイニングにて解決する。
http://www.warrantee.jp/
4:StudyPact
”勉強することでお金がもらえる”という形式を取る学習動機の促進サービスを提供する、東京のスタートアップ。CEOはTobias Hoenisch氏。
https://www.studypact.com/
5:AnSing Technology Pte
睡眠時の情報をセンサーで取得するマットを提供する、シンガポールのスタートアップ。CEOはDr Hu Junhao氏。寝相やいびき、温度などの情報をマット内のセンサーで取得することで、人々の睡眠に関する課題を解決することを目指す。
http://slumbor.com/
6:ONTROX
交通情報のデータを解析し交通状況を改善するシステムを提供する、大阪の企業。CEOは有田和樹氏。人間の行動をWeb上で理解することをソリューションとする。
http://www.ontrox.com/
7:TransferGo
国際送金サービスを提供する、イギリスのスタートアップ。CEOはDaumantas Dvilinskas氏。通常の国際送金でかかってしまう多くの時間と手数料を、国内送金の仕組みを提供することで削減する。
https://transfergo.com/
8:Moff
子ども向けのウェアラブルおもちゃを提供する、東京のスタートアップ。CEOは高萩昭範氏。ウェアラブルなおもちゃがスマートフォン・アプリと連携することで、様々な音を出し様々な遊びを実現出来るようにする。
http://www.moff.mobi/
9:Waygo
視覚的に翻訳情報を表示するアプリを提供する、台湾のスタートアップ。CEOはRyan Rogowski氏。海外でインターネット回線が十分でないレストランでのメニューに使用できる、スマートフォンのアプリケーション。
http://www.waygoapp.com/
10:Quadcept 
電子回路の設計サービスをオンラインで提供する、大阪の企業。同社シニアコンサルタントの森本泰久氏が登壇。オンラインで提供することで、イニシャルコスト、ランニングコスト、インストールやアップロードにかかる時間の大幅な削減を実現する。
http://www.quadcept.com/

審査の結果、協賛企業であるソーシャルワイヤーによるCross Corp賞は、AnSing Technologyが、銅賞はStudyPact、銀賞はTransferGo、金賞はWaygoがそれぞれ受賞し、銅賞、銀賞受賞者にはトロフィーと賞金が、金賞を受賞したWaygoにはトロフィーと賞金に加えて協賛企業であるブリティッシュエアウェイズよりロンドンへの往復航空券が授与された。

(開催レポート、以上)

( 14年03月13日 )
PAGE TOP