Event Reports

Hack Osaka2015をリポート!〜その1

( 15年03月27日 ) ho15_repo_top

 

大阪市・大阪イノベーションハブ主催の第3回国際イノベーション会議、”Hack Osaka 2015”が、2015年2月10日に開催されました。2014年の2月にグランフロント大阪のナレッジシアターで開催された第2回Hack Osaka会議に引き続き、今年はコングレコンベンションホールAを会場とし、起業家、支援者、大企業社員など様々な参加者500名以上が日本国内のみならず海外からも来場。国際会議は主に英語により行われ、その様子はインターネットを通じて世界へ発信されました。会議はイギリス・リヴァプール出身でありながら日本で落語家として活躍するダイアン吉日さんの司会進行のもと進行。

基調講演

スタートアップコミュニティへのドン・バートンとTechstarsの貢献

A+基調講演のドン・バートン氏

基調講演に登壇したのは、Techstarのマネージング・ディレクターであるドン バートン氏。バートン氏が初めて日本を訪れてから20年が経つが、日本での経験は自分の職業人生におけるハイライトの1つと語った。ウェブやモバイルテクノロジーの分野で活躍を続ける彼は、TechstarsやEdTechとの関わりの中で培ったテクノロジーをもとにスタートアップコミュニティを立ち上げている。

メインテーマは2つ。都市において、また大都市での多様な分野や大企業において、起業家のエコシステムをどう創成するか、そしてなぜ具体的に教育という分野が最もスタートアップコミュニティを育みやすいのか、である。

米国の都市は活気あふれるスタートアップコミュニティを作りあげた見事な実績を持つ。その一例であるコロラド州ボールダーは、何もない田舎町から小規模で緊密なスタートアップコミュニティとして成長した、世界のなかでも起業家が集まる都市の一つだ。バートン氏はボールダーをすべてが的を射たスタートアップの奇跡と強調した。

バートン氏はTechstarsの創設者、ブラッド フェルト氏の著書”Startup Communities: Building an Entrepreneurial Ecosystem in Your City”で語られているメインテーマを引き合いに出した。「ボールダー論」では、成功するスタートアップコミュニティを作り出すための4つの法則を述べている。第一の法則は、起業家がスタートアップコミュニティをリードすること。多くのステークホルダーが存在するだろうが、原動力の中心として主導するのは常に起業家たちでなくてはならない。第二の法則は、長期的に取り組むこと。どのようなビジネス構想もリスクを含みアップダウンを経ていくものである。それをやり遂げられる持久力があるかどうかが成功の可否を決める。第三の法則は、コミュニティには誰もが入れるようにすること。起業家コミュニティ内では、家父長制のように誰かが支配的になるという問題が起き、主要な投資家がコミュニティのイノベーションにとって障害になることもある。第四の法則は、フルスタックな(一から十まですべてを取り込んだ)取り組み。アクセラレーターやインキュベーターなど、起業家が動き出すことを助けるようなイベントや構想を含む。

バートン氏が所属するTechstarsは世界中の都市でスタートアップコミュニティの創成を支援し、1つの業界に焦点を絞った垂直プログラムも運営している。スタートアップエコシステムの全域でステークホルダーがチャンスを掴めるように取り組んでいるのだ。スタートアップコミュニティには多様なアクター(参加者)がいるが、お互いを引き寄せる必要がある。例えば、より経験豊かな起業家の助言を必要とする新規起業家がいる。また、政府の経済機関からの援助、大学のサポート、弁護士を通じたサービスサポートなど、新規起業家が利用できる様々なサポートシステムやサービスがある。こうした数多くのアクター間を整理、調整することがスタートアップコミュニティを立ち上げる上での第一の課題である。それには協力プログラムに人々を参加させる必要があるが、Techstarsが「アンカー(碇)プログラム」の役目を果たし、コミュニティのアクターが実践的に起業家と関われるようにしている。Techstarsでは企業を募集し、3ヶ月のプログラムで起業家が財政的に次のレベルに上がれるよう支援している。

起業家には変化を切望する教育分野の殻を打ち破るための多くのチャンスがある

バートン氏はニューヨークにスタートアップコミュニティを築いたときの自らの経験を語った。注目したのは教育テクノロジーの分野(EdTech)である。ニューヨークにはEdtechを変革するために使えそうな刺激的で定評のあるインフラストラクチャがたくさんあったが、他の小さな都市で見られるような活気に満ちた起業家活動に欠けていた。Techcstarsは世界に語学学校を展開するKaplanと協力して、資金提供、スペースの確保、そしてアクセラレータープログラムを実施し、ニューヨークの起業家活動を活性化させた。プログラムを立ち上げた最初の年には、Techstarsが募集した10の枠に対して300件の応募があった。プログラムには、経験豊かな起業家(メンター)と会い、30分ほどの短い時間に集中的なフィードバックを受けるだけでなく、スタートアップが外へ出て顧客と話す上での指導も含まれている。

B+
Techcstarsのアクセラレータープログラムについて語るドン・バートン氏

アクセラレータープログラムでは、1ヶ月目にスタートアップに向けた集中的なフィードバックを行う。2ヶ月目は、スタートアップビジネスの牽引力を築くことに重点を置く。つまり、顧客を獲得する、より明確にスタートアップのプロダクトを反復する、投資家に伝えるストーリーを作りあげることである。3ヶ月目は、ストーリーテリングやスタートアップのファンディングピッチに関わることに費やす。この最後のひと月は、スタートアップが自分たちに必要な資金を調達できるように、Techstarsが最も精力的に動くときだ。2014年のアクセラレーターの結果が、ニューヨークでのスタートアップコミュニティであり、大企業、起業家、企業リーダーたちとともにEdTechの分野を活気づけるものとなった。

また、バートン氏は大企業から、社内でスタートアップエコシステムを培うにはどうしたらよいかとの問い合わせも受けている。大企業は小さなスタートアップに比べて動きが遅く、素早いイノベーションが難しい。大企業内でスタートアップエコシステムを築くプロセスは、外部の市場に対するプロセスとかなり似ている。人材の発掘とアイデアの創出が不可欠であり、アイデアをインキュベートし促進するとともに、最も良いアイデアをアクセラレートしスケールアップしていく。

なぜ特定の分野が極めて変化を受け入れやすいのか、例としてバートン氏は自らのEdTechでの経験を語った。教育にはすでに多額の費用が費やされているが、その下で機能している基本モデルは非常に長い間、変わっていない。そのテクノロジーは今や時代おくれであり、変革が必要だ。だが、金融サービス業界が予算の20%をテクノロジーに費やしているのに比べ、教育分野では現在1%である。農業化、そして産業化の時代に変貌を遂げてきた教育システムは、デジタル時代において再び変化する。こうした状況から、教育分野が起業家のエコシステムを構築するための主要な候補となったのである。

バートン氏は教育への投資には3つの領域があるという。1つ目は”Old School”。ここではスマートボードが黒板に取って代わるなど、古いテクノロジーをより効率的なものへと変える。2つ目は”New School”。反転授業(生徒は前もって講義を見ておく)など従来の教育のコアプロセスを設計し直して、既存の学校システムと同じ課題を達成する。3つ目は”Real School”であり、バートン氏はこれが将来最も期待できると見ている。”Real School”のアプローチは、教室の枠を超えた実践的な実験タイプの教育であり、人々に教育を課すような現在の”Push model”を、人々からやる気を引き出す”Pull Model”へと変えるものだ。これが今後20年間に教育の未来が進む道であり、起業家には変化を切望する教育分野の殻を打ち破るための多くのチャンスがある。

(その2に続く。)
( 15年03月27日 )
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