Event Reports

Hack Osaka2015をリポート!〜その2

( 15年04月01日 )

 

大阪市・大阪イノベーションハブ主催の第3回国際イノベーション会議、”Hack Osaka 2015”が、2015年2月10日に開催されました。2014年の2月にグランフロント大阪のナレッジシアターで開催された第2回Hack Osaka会議に引き続き、今年はコングレコンベンションホールAを会場とし、起業家、支援者、大企業社員など様々な参加者500名以上が日本国内のみならず海外からも来場。国際会議は主に英語により行われ、その様子はインターネットを通じて世界へ発信されました。会議はイギリス・リヴァプール出身でありながら日本で落語家として活躍するダイアン吉日さんの司会進行のもと進行。

パネルディスカッション

参加して、アイデアを共有して、とにかくやってみよう

パネルディスカッションには、基調講演に登壇したドン バートン氏、Sportify日本代表のハネス グレー氏、Women’s Startup Labの創設者兼CEOの堀江愛利氏、そしてEngine Yard元日本代表のティム ロメロ氏を迎え、ロメロ氏のモデレーターにより議論を進めた。

C+
パネルディスカッションの模様

ディスカッションを始めるにあたり、ロメロ氏が日本における起業の重要性とリスクやイノベーションに対する意識の変化について語った。日本では物事の変化が遅いと長年言われているが、これはまったくあてはまらない。明治維新での日本の変化を見れば、日本がその後40年足らずのうちに日露戦争でロシアを破るほど大きな力を持つようになったことが分かる。第二次世界大戦後は、あらゆる専門家の予想に反して、日本は再び変貌を遂げ、40年間で経済大国となった。つまり、変化が遅いという日本のイメージは、歴史が証明しているように、実は真逆であるという認識に取って代わられるべきである。日本の変化は早い。

ロメロ氏がパネリストに向け、スタートアップコミュニティを定義する主要な要素とは何かと直接問いかけ、バートン氏に向けて世界中のスタートアップエコシステムにおけるその共通点を尋ねた。バートン氏は、講演の中で自身が述べた4つの特徴に加え、最初の道筋として、具体的な場所にスタートアップをつなぎとめるために小さな投資を行い、多くのステークホルダーをその構築に巻き込むことであると答えた。1つのスタートアップがより多くのスタートアップを惹きつけるのだ。

次にロメロ氏はグレー氏に、スウェーデンで大きな企業の役割に対して小さなスタートアップの重要性が高まっていることについて尋ねた。グレー氏は、Nokiaのような大きな企業の消滅で放出された才能ある多くの人材が、自分たち自身でスタートアップを始めていると答えた。また、スウェーデンのリベラルな教育システムのおかげで、学生たちに「自分を知る」ための大きな自由裁量が与えられていることがもう一つの要因ではないかと述べた。

ロメロ氏は、他の国と比較した日本の企業年齢や日本企業で働く人が抱く企業への愛着が、日本のイノベーションを損なう役割をしていないかと堀江氏に問いかけた。堀江氏は、日本では能力を認め、活かす方法に対する考え方のシステムが他の国とは異なり、スタートアップの始め方も違うと語った。ロメロ氏が、古くからある企業の安定性が加わることで、異なる種類の能力を生み出しているのではないかと言葉を挟むと、堀江氏は、古くからある企業の安定性という日本人自身も気づいていない日本の能力に、他の国の人々が気づいていると答えた。

起業家を惹きつけるのは資金ではなく
むしろすでにそこに存在している人材プールだ。

スタートアップエコシステムの形成について、ロメロ氏はパネリストに一般的な質問として、スタートアップが魅力を感じる特定の場所をどう考えるか尋ねた。堀江氏が多くの場合、財政的支援はスタートアップにとって魅力だと述べた。ロメロ氏がシリコンバレーのスタートアップにとっていまだに資金が魅力であるなら、グローバルに見ても資金を考慮することが増えているのだろうかと尋ねると、堀江氏は、資金は1つの要因ではあるが、スタートアップがシリコンバレーに惹かれるのは、国際的なゲートウェイであることやそこにある文化のためだと答えた。

D+
スタートアップエコシステムについて語るグレー氏

グレー氏が、人々がある場所に出て行くのには様々な理由があるため、この質問への答えは1つではないと指摘した。文化が人々を特定の地域に引き寄せ、資金は差別化要因ではなくなってきている。そこでロメロ氏がビザの取得や生活向上への支援など「ソフトサポート」は起業家にとって魅力的かと尋ねると、グレー氏はその点に同意を見せた。バートン氏は、起業家を惹きつけるのは資金ではなくむしろすでにそこに存在している人材プールであり、スタートアップが「繋がる」ことのできるクリティカルマス(臨界量)に達していることであると指摘した。しかし、そうしたクリティカルマスの創成は、各場所の人材プールやその場所の傾向により異なる。

そこでロメロ氏は、起業家精神に対して政府が果たすべき役割は何かという別の質問を投げかけた。バートン氏は政府による支援は大歓迎であり、1つの例として、スタートアップが場所を借りるための助成金を出すことをあげたが、支援がリーダーシップの役割にまで広がるべきではないと話した。堀江氏もバートン氏の意見に同意し、特に女性起業家に対するケアシステムを提供する政府の役割について見解を述べた。グレー氏は、都市が人々に対して魅力を与えられるものと中央政府が支援するべき人々を積極的に草の根から探すこと、という2つのポイントを再度繰り返して述べた。

ロメロ氏がバートン氏に、スタートアップが大企業と協力する上で特に難しいことは何かと質問すると、バートン氏はまず、大企業がスタートアップのアクセラレーターを運営したがる理由から探った。大企業にとっては他の企業のビジネス情報にアクセスできるという大きなメリットがあり、M&Aに繋がっていく場合もある。また、スタートアップへのサポートが大企業の優れたPRにもなり、スタートアップが企業の内部構造に良い意味で大きなショックを与えるとも付け加えた。

ロメロ氏が、大企業は通常、大きなショックを嫌がるのではないかと指摘すると、バートン氏はスタートアップをサポートすることで生じる混乱は、企業のマネジメント側の意志に基づくショックであると答えた。

ロメロ氏は大企業のスタートアップへの協力に関する質問を続け、堀江氏にシリコンバレーでの状況を尋ねた。堀江氏はシリコンバレーの大企業は、多くの優秀な人材を抱え込むのではないかという点で、実際小さなスタートアップに脅威を与えていると指摘した。また大企業には基本的にスタートアップのプラットフォームがあり、そこからイノベーションに取り組むことができるという。

起業家のエコシステムを促進するために一番良い方法は、
スタートアップを開始し、既存のエコシステムを使うことだ

ロメロ氏はグレー氏にSportifyでの彼の立場から、小さな企業や政府との協力について見解を求めた。グレー氏は、小さな企業がイノベーションのための技術を重視する一方で、大企業は当然ながらマネジメントの修正による「ソフトイノベーション」を重視する傾向にあると答えた。Sportifyは外部にとても依存した企業で、多くの企業と協力しており、パートナーだった企業を買収することもあると述べた。

E+
ロメロ氏のファシリテーションにより進行

ロメロ氏は、大阪で、スタートアップを立ち上げるには何をしたらよいか、堀江氏に質問を投げかけた。彼女によると、大阪には当然ながらスタートアップエコシステムを築きたいと考える果敢な人々が多い。しかし、堀江氏はアイデアがあれば、声をあげてそれを発展させるために支援を求めるべきだが、日本にはそうした気質がどこか希薄だとも述べた。また、日本には十分なリソースがないという印象があるが、彼女がシリコンバレーで自らのスタートアップを立ち上げたとき、安いリソースや信頼できる人々などいろいろな理由から日本に支援を働きかけた。結果として、スタートアップを立ち上げることができたが、単にローカルなエコシステムを頼りにしたというより、むしろリソースを持つ柔軟なグローバルネットワークのおかげだった。

この質問をバートン氏に投げかけると、起業家のエコシステムを促進するために一番良い方法は、スタートアップを開始し、既存のエコシステムを使うことだと答え、利用可能なネットワークにアクセスして、誰かのアイデアに関与することが、前に進む唯一の方法であり、良いアイデアも抑えられてしまえば死んでしまうと述べた。

ロメロ氏は観客に向け、大阪のスタートアップエコシステムを改善する必要があると思う人は手を挙げるよう呼びかけた。観客の同意を得ると、ロメロ氏は皆に、名刺交換をして状況を前に進めるために話をしていこうと付け加えた。グレー氏も、大阪でのスタートアップが不足しているというなら、スタートアップを立ち上げたい野心を持つ多くの人材がいるものの、単純にどうしていいか分からないだけという楽観的な解釈もできるのではないかと述べた。

スタートアップアクセラレーターがスタートアップを軌道に乗せる

次にロメロ氏はパネリストに対して、非常に限られた資金でスタートアップ支援の業務にあたらねばならない政府の人間に何ができるかと問いかけた。スタートアップとはお互いどのような話ができるだろうか?バートン氏が、自身が先に述べたポイントを繰り返し、政府はスタートアップに場所を提供するという大切な役割を果たせると述べた。

F+リラックスした雰囲気のなか自然体で議論する4人

堀江氏がスタートアップは何かをやりたいと情熱を持った人々がいて始まるものであり、Hack Osakaのように、都市が人々を一堂に集めて特定の問題に取り組むことで、エネルギーを共有し、繋がる機会を持てると述べた。ハッカソンのような場では、エンジニアのみならずアイデアのある人々、特に女性がアイデアを共有し、さらに大きなことに繋げられると語った。グレー氏は、個人のレベルでは、サポートすることで人はリーダーになれるし、情熱がそこにあるならば、実際スタートアップを立ち上げられると述べた。

ロメロ氏が特定の課題に取り組むために政府がスポンサーとなっているハッカソンとそうしたハッカソンに長期的な価値を見いだせるかについて、堀江氏に尋ねた。堀江氏は、ハッカソンは時間の無駄だと主張する人もいると答えた。48時間も集まった挙げ句にビジネスについては何も追求しないからである。しかし、各セッションの終わりにひとつひとつのドットが何かに繋がる必要はなく、両サイドが可能性を感じるために行うものであり、こうした場により両者がコミュニケーションを図るための道筋が開かれ、あらゆる人の領域に可能性を育むという。

ロメロ氏はバートン氏に、政府主導の短期的なハッカソンの成功について質問した。バートン氏は、大抵こうしたスタートアップの週末にプロトタイプが作られるため、非常に成功していると答え、フォローアップのイベントへと進む勢いがついて、最終的にスタートアップアクセラレーターがスタートアップを軌道に乗せると述べた。

同じ質問に対してグレー氏は、彼の会社では多くのハッカソンを実施し、政府主導のセッションもあると答えた。参加者にとって、ビジネスになろうとなるまいと、新たな気持ちになる経験であり、彼の会社ではこうした構想に対して極めてグローバルに支援しているという。

ディスカッションの締めくくりに、ロメロ氏が各パネリストに、まとめの意見やアドバイスを求めた。グレー氏は観客に対し、イベントの主催者に働きかけメールアドレスを交換し、お互いに結びつくよう強調した。堀江氏は、起業をとんでもなく大変な仕事ではなく、毎日少しずつ進めていくものと考えるよう促した。バートン氏も堀江氏に賛同し、スタートアップのプロセスとは反復的なものであると要点を述べ、大きく考えすぎるべきではないと答えた。バートン氏は、「小さなコミュニティの人々が大きな変化を起こす」という人類学者の言葉を言い換え、小さな歩みのひとつひとつが大きなインパクトを起こすと述べた。ロメロ氏がこうしたポイントを「参加して、アイデアを共有し、皆でアイデアを出し合い、とにかくやってみよう」という言葉にまとめた。

(その3に続く。)
( 15年04月01日 )
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