Event Reports

NEWS Hack ~知るのでなく、感じるニュース~  2015.10.10~10.11

( 15年12月18日 )

一般社団法人日本新聞協会(以下、新聞協会)との共催により、10月10日(土)・11日(日)に「NEWS Hack〜知るのではなく感じるニュース」を開催しました。ふだんのハッカソンとは違い、新聞・通信社の記者もチームに参加。ITエンジニア、プランナーたちと一緒にワークを行いました。

 「新聞」業界のオープンイノベーション


大阪イノベーションハブ(OIH)では、年間30件程度のアイデアソン・ハッカソンを開催しています。その多くは、「新しい製品・サービスを開発する」というものです。例えば、ハードウェア・ハッカソンと言われるIoTで新しい製品・サービスを開発するもの、オープンデータなど技術テーマを絞ったものなどに大別されます。

いずれも、前提として、最終的に参加者(チーム)が新規事業として、そのアイデアをプロジェクト化してもらうということを出口にしてプログラムが組まれています。

NEWS Hackは、そういう意味で、大阪イノベーションハブにとって、難度の高いプログラムでした。

今回の企画が持ち上がったのが、2014年の11月。新聞協会からの問い合わせからはじまりました。そこから、ハッカソン芸人の羽渕氏(株式会社パソナテック)に入っていただきながら、プログラムを作っていきました。

新聞協会の想いとしては、「若者の新聞無購読の問題を解決したい」「新聞になじみのない人にニュースの価値を伝え、共感してもらいたい」ということでした。一見、OIHの「事業化ポテンシャルの高いプロジェクトを生み出す」というコンセプトとは違うようにみえます。そしてなにより、アウトプットのイメージを持ちにくいということがありました。

ときにはハッカソン論にまで及びながら、なんども議論を重ねました。そして、OIHなりに得た答えは、「新聞業界のオープンイノベーション」である、というところです。つまり、新聞業界の課題を解決し、新聞・通信社とともに新規事業として展開できるプロジェクトを生み出すということです。

OIHでは、「イノベーション・エクスチェンジ」というオープンイノベーション・プログラムを自主企画として展開しています。グローバル企業のノウハウと、中小・ベンチャー企業の技術・ノウハウを“エクスチェンジ”することで、新たな製品・サービスを生み出そうというプログラム。NEWS Hackは、まさに「新聞業界」と「ハッカー」たちによる、イノベーション・エクスチェンジだといえます。

 知るのではなく、感じるニュース

newshack
さて、オープンイノベーションと定義したとき、新聞業界の課題には、どのようなものがあるでしょうか。新聞協会の担当者と企画を詰めていくなかでさまざまな課題が出てきました。

要約すると、「キュレーションアプリやまとめサイト、SNSを通じた情報共有など、いままでとは違った形でニュースと接する機会が増えた。その一方で、新聞業界も記事を届ける工夫が十分でないので、結果、若者に新聞記事が届きにくくなっている」ということです。そして、そこから導き出された仮説は、「キュレーションメディアなどではPV優先の記事が並び、心を揺さぶられるような記事に出会うことが少なくなってきている」です。

以上から、私たちが設定したNEWS Hackのテーマは、「知るのではなく、感じるニュース」です。新聞記事が届きにくくなっているという現状もあり、いくら新聞記者がしっかりと取材を行い、「共感を呼び、人を動かす」情報を提供していたとしても、届かなければ意味がありません。そうした想いから、日本新聞協会と共催で「人の行動が変わるような”感じるニュース”を創って届ける」ということにチャレンジしようというのが、本イベントの趣旨となりました。

—1日目(10月10日)

 伝える人も、感じることが大事

迎えた当日。プランナー、エンジニア、デザイナーの一般参加者50名と、新聞・通信社の記者が集まり、ファシリテータの羽渕氏の進行のもと、イベントがスタートしました。

参加した新聞記者は、全国紙・通信社7社と信濃毎日新聞社、神戸新聞社の記者。自己紹介では、担当分野にはじまり、どのように取材し記事を書いているか、記者として感じる新聞の課題など、自身の口から想いが語られました。ハッカソンでは、こうしたインプットの時間がコンセプト開発に大きく影響します。そういう意味で、「取材をしてデータを積み重ねても、地震を理解したことにならない。伝える人も知るのではなく、感じることが大事」(神戸新聞社)というコメントなど、参加者にとって実感をともなうインプットになったのではないでしょうか。

午後からは、号外新聞型専用フォーマットを用いてアイデアソンを実施。全員のアイデアが出揃ったところで、実現させたいアイデアを記者・参加者全員で投票し、最終的に7つのチームができました。

 中間メンタリングでの驚き

1時間30分のワークの後、朝日新聞社編集委員の稲垣えみ子氏や新聞・通信社の技術者らが新規性や実現可能性などについて、各チームにメンタリングを実施しました。出てきたアイデアは、「川柳による記事への誘導」や「過去にさかのぼり時系列で記事をたどれるサービス」など、どれも提供価値が明確なものばかり。

稲垣氏は「ハッカソン。初耳です。ITの活用?異業種の知恵を集めて2日間でアイデアをまとめる?う〜んいかにもうさんくさい・・・・・・正直そう思っていました」(新聞研究12月号から引用 ※)というイメージだったそうですが、「しかし、ごめんなさい。実はとっても面白かった。開始直後から、とっつきにくい新聞を若い世代に身近に感じてもらうアイデアがぞくぞくと出てきたことに驚きました」(同引用)という思いに変わったそうです。
※「新聞研究」12月号(No.773号)/発行:一般社団法人 日本新聞協会

—2日目(10月11日)

 参加者と記者が一緒に開発

2日目は開始時刻前の午前8時頃から開発を始めるチームもあるなど、参加者の熱量の高さを感じるスタートとなりました。

最初にファシリテータの羽渕氏より、「誰に」「何を」という価値づくりの重要性が指摘されました。オープンイノベーションのメリットは、ひとつの組織では難しい気づきやアイデアが生まれやすくなるというところです。ただし、単にアイデアを掛け算しただけではユーザーに刺さるものは生まれません。前日出たアイデアをいかに絞り込み、価値として形にしていくかが、2日目のポイントになります。

ワーク時間は6時間程度しかありませんが、各チームとも昼食の時間を惜しんで開発を続けました。「取材しているほうがよっぽど楽。ふだんやらないことの連続なので、疲労困憊」という記者の声もあったように、参加者だけでなく、記者も汗をかく姿が印象的でした。

 発表

審査員は、近藤哲司氏(新聞協会メディア開発委員長、産経新聞社取締役デジタル担当)、ギークな女優・池澤あやか氏、インタラクティブコンテンツで知られる田中謙一郎氏(株式会社HAROiD取締役副社長)、コピーライターの日下慶太氏(株式会社電通)、松下光範氏(関西大学総合情報学部 教授)の5人。

発表時間は、各チーム5分。スキットと呼ばれる寸劇や、ハードウェアを使ったデモなど、それぞれ趣向を凝らした演出で審査員にアピールを行いました。「記事に対する責任の所在は?」(近藤氏)、「既存サービスとの差別化は?」(池澤氏)、「個人情報の担保をどうするのか?」(松下)など、専門分野に立脚した厳しい質問も出ましたが、それは、各チームにチャレンジングな姿勢があってこそ。審査員も驚くようなプランがたくさん出てきました。

オープンイノベーションの必要条件は、外部からの技術やアイデアです。そして十分条件は、それを引っ張る主体者の想いや熱量です。今回のハッカソンを通じて印象的だったのは、記者一人ひとりの「何かを変えたい」という想いであり、熱量の高さです。
最終的に、記事のクラウドファンディングを切り口にした「ニュースコネクト」が選ばれましたが、どのプランも「誰に」「何を」という価値が明確で、充実した内容のものばかりでした。
なかには、ユーザーが利用している絵がありありと浮かぶようなプランもありました。今後の展開にも期待がふくらみます。

今回のハッカソンでは、エンジニアの相対数が少なく、参加された方に負担をかけるなど、運営者として反省することころも多々ありました。今後の反省点として、しっかり受け止めたいと思います。

ご参加された皆さま、記者の皆さま、その熱量に驚かされました。本当に、ありがとうございました。

 審査結果

<最優秀賞>
受賞チーム名:ニュースコネクト・クラウドニューズ
<オーディエンス賞>
受賞チーム名:Yomuu!(ヨムー!)・Yomuu!(ヨムー!)


■開催日時
2015年10月10日(土)・11日(日)

■イベント詳細
http://www.innovation-osaka.jp/newshack/

■主催
一般社団法人 日本新聞協会、大阪イノベーションハブ

■協力
朝日新聞社、毎日新聞社、読売新聞社、日本経済新聞社、産経新聞社、
共同通信社、時事通信社、信濃毎日新聞社、神戸新聞社、愛媛新聞社、
GUGEN、株式会社パソナテック

■API提供企業
・株式会社 KDDI ウェブコミュニケーションズ
Twilio https://jp.twilio.com/docs
・株式会社NTTドコモ
docomo Developer support https://dev.smt.docomo.ne.jp/
・シャープ株式会社
ネットワークプリントサービス https://networkprint.ne.jp/sharp_netprint/top.aspx
・さくらインターネット株式会社
さくらのクラウド http://cloud.sakura.ad.jp/
・オリンパスOPC Hack&Make Project
OPC http://opc.olympus-imaging.com/about/
・株式会社エクシング
JOYSOUND言語解析 http://bigdata.joysound.com/
・株式会社リコー
RICOH THETA https://developers.theta360.com/ja/
・ヤフー株式会社
Yahoo! JAPANデベロッパー ネットワーク http://developer.yahoo.co.jp/
・ゲッティ イメージズ ジャパン株式会社
Getty images http://www.gettyimages.co.jp/

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