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海外でビジネスを行う際に必要なアントレプレナーシップ

( 16年04月19日 ) siliconvalley001

シリコンバレーに学ぶ起業家精神~イノベーション噴出の仕組み~ -2016.04.08

次世代のイノベーターを育てることは、大阪イノベーションハブにとって重要なミッションの1つです。

そこで、10~20代の若年層を対象に、「シリコンバレー」をテーマとしたイベントを開催しました。講師を務めたのは、グローバルビジネス関係のセミナーで人気のMark Kato氏。いくつものアメリカの大企業に従事し、日本で12年、シリコンバレーでは25年以上のビジネス経験を持っています。またイベント後半には、今年2月に実施された「シリコンバレーツアー2016」の参加者によるトークセッションも開催しました。

ここではその講義の内容と、トークセッションの模様をレポートします。

※プログラム内容詳細:http://urban-ii.or.jp/events/detail.php?event_id=153

1. Mark Kato氏による講義『シリコンバレーに学ぶ起業家精神~イノベーション噴出の仕組み~』

この講義は、以下の7つのキーワードに沿って進められました。

キーワード
【1】スケーラビリティ
【2】インフラストラクチャー(エコシステム)
【3】分散化
【4】30%
【5】フォーカス
【6】負け組に入らないということ
【7】仮定

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キーワード1:スケーラビリティ

まず、ビジネスは時代や世間のニーズと共に常に変化し続けなければなりません。例えば、あのAppleは1つのデスクトップから始まりましたが、時代の流れを読み取り、最近ではApple Watchを生み出しました。同じものやサービスを提供し続けるのではとうてい生き残れない、つまり、徹頭徹尾ビジネスをスケールさせていくという考え方が必要です。そして、ビジネスをスケールさせるための環境を整えているのが、“シリコンバレー”なのです。

キーワード2:インフラストラクチャー(エコシステム)

ではなぜ、シリコンバレーなのでしょうか?それは、どんな産業やサービスもスケールさせることができる仕組み、つまりインフラストラクチャー(エコシステム)があるから。
ここには多くのテクノロジーや人材が集まり、一流の企業をめざすのに必要な要素がすべて揃っています。確かに日本にも、テクノロジーにおいてはシリコンバレーに匹敵するものがあるのですが、大きな違いは、まだ十分なエコシステムがないことです。

キーワード3:分散化

ビジネスの話に戻しましょう。起業の際、スタートアップはどうしても、1つのビジネスプランを懸命に練り上げることに注力してしまいがちです。しかし実際のところ、起業するときには、ビジネスプランは最低でも2~3つくらい考えておくのが良いでしょう。
そしてその事業を進めていくときは、例えば、5つの事業をするならば、それぞれ15%ずつくらい、また「その他」を25%くらいのバランスで注力することをお勧めします。いくつかの事業にバランスよくエネルギーを分散させることで、1つのビジネスが失敗したり計画通りにいかなかったとき、他のものでリプレイスできるからです。

キーワード4:30%

そして、肝心の事業内容についてですが、シリコンバレーも少し前までは、優れたアイデアさえ持っていれば投資家などは耳を傾けてくれていました。しかし、最近はプロトタイプがないとなかなか投資を受けることができません。
そこで覚えておいて欲しいのが、30%という数字。投資を受けるのが難しくなった最近でも、既存のサービスや産業に割かれている人的・経済的コスト等を30%削減できると、投資家から話を聞いてもらいやすいのです。ぜひ、自分の持っている事業計画について、既に世の中にある何かしらのビジネスの、何かしらのコストを、「30%削減できそうか?」という視点で考えてみて欲しいですね。

キーワード5:フォーカス

先ほど、いくつかの事業を同時に進めるべきだという話をしましたが、だからと言って、あれもこれもと手を出すのが良いというわけではありません。では選択すべき事業をどのようにして決めるかというと、まずは大きな、そして伸びているマーケットを探し、それにフォーカスすること。次に、各種データを収集し、それを踏まえて作った自身の製品について、その長所や特徴を開発担当者やユーザーにヒアリングする。そして、社会の動きを読んだり、多くの人とのコミュニケーションの中で、その製品が本当にマーケットに求められているものなのかを検証していくのです。
このように、成功するビジネスというものは、まず大きいか伸びている市場に焦点を絞ることが大切なのです(残念ながら、日本はまだまだそれが得意ではありません)。

キーワード6:負け組に入らないということ

しかし、そうしてマーケットを見定め、焦点を絞った事業が成功すれば、当然ながら、他社にもまねされるというリスクが出てきます(例えば最近よくまねされるのが、マッチングサービス系のアプリなどです)。
そこで、近年のシリコンバレーでは、他社に容易に模倣されぬよう、ハードウェアに絡めたソフトウェアなどをリリースしています。そして、そのハードウェアに抜群に強いのが日本です。事実、iPhoneの部品の多くは日本製のもので、スティーブ・ジョブズが日本に頻繁に通っていたことは有名な話ですよね。
つまり、日本のスタートアップが負け組に入らない秘訣は、既にあるマーケットの課題を考え、made in Japanのハードウェアを持って入り込んでいくことなのです。
そしてもう1つ忘れてはいけないのが、今はマーケットインの時代であるということ。日本はそのテクノロジーのすごさから、プロダクトアウト方式で80年代に多大な功績を遺しましたが、現在はそのやり方では通用しないということを覚えておいて欲しいです。

キーワード7:仮定

最後のキーワードは「仮定」。ビジネスを始めるとき、「どんなものがあれば絶対売れるのか?」という仮定からスタートさせることは当然なのですが、悲しいことに、その「仮定」は不確実がゆえに、どんな国や地域でも歓迎されるというわけではありません。しかし、シリコンバレーにはその仮定に乗っかるという風土がきちんとあります。成功への見通しが不確実でも、良いものであれば「やってみよう」という気概がそこにはあるのです。
多くのイノベーターがシリコンバレーをめざし、変わらずイノベーションが起こり続けているのは、そんな風土が根ざしているからに他なりません。

2. 「シリコンバレーツアー2016」の参加者によるトークセッション

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Mark Kato氏の講義の後は、今年の2月に開催された「シリコンバレーツアー2016」の参加者3名による、トークセッションが行われました。ここでは特に印象的だった彼らの言葉を紹介します。

溝口 恵美 氏
“もともと私は日本が大好きだったんですが、シリコンバレーに行くと、日本の産業やビジネスのダメなところが見えるようになったんです。特にマーケティングに弱いと思います。先ほどの講義でもマーケットの重要性についてのお話がありましたが、これからはマーケティングを勉強していきたいと、改めて思いました。”
高瀬 裕介 氏
“日本は、英語力という点でグローバルスタンダードに乗れていないと言われていますよね。でも、ネイティブ並の発音や語彙力だけでなく、いかにシンプルに要点を伝えられるかが大切だと現地で学びました。“
中村 優吾 氏
“僕自身はこれから、アカデミックな分野から生まれた知識や技術を製品化していきたいと思っています。自分が面白そうだと思ったことはなんでもやっていきたいですね。そして、皆さんにも同じように、興味を持ったことにはどんどんチャレンジしていって欲しいと思います!“

 


 

冒頭でも述べましたが、本イベントの対象は10~20代の若年層。しかし、このプログラムの趣旨は、「若者は起業やシリコンバレーをめざせ!」というものではなく、自分達には就職以外の選択肢もあるのだと彼らに知ってもらうことです。普段はつい就職活動や目の前の勉学ばかりに集中してしまうかも知れませんが、ぜひ今日のイベントを、無限に広がる可能性に気付くきっかけにして欲しいですね。

文・EDA MAMI

【関連記事】
・学生のうちに学びたいアントレプレナーシップ〜学生起業家との交流から
http://www.innovation-osaka.jp/ja/magazine/7372

・関西圏の大学におけるビジネスプランコンテストまとめ
http://www.innovation-osaka.jp/ja/news/6769

・「シリコンバレーツアー2016」配信動画
https://www.youtube.com/watch?v=9Ucc2OEF6mY

( 16年04月19日 )
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