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ABBA LAB小笠原 治氏がOIHに見参! 続・メイカーズ進化論

( 16年05月10日 ) uemachiza

上町座オープンセミナー「続・メイカーズ進化論」 -2016.04.20

2020年には最大500億の機器がインターネットとつながると言われています。そうした時代を見据えて、様々な企業でIoTへの取り組みが活発化しており、イノベーティブな製品も生まれてきています。その主役はスタートアップと呼ばれるベンチャー企業です。

なぜ、ベンチャー企業から革新的な製品が生まれるのでしょうか。その理由の一つとして、クリス・アンダーソンが発表し話題になった「MAKERS」の流れがあります。つまり、ITが情報の民主化を一気に推し進めたように、ITや3Dプリンタによって世界のものづくりコミュニティがつながり、ものづくりが民主化されたという流れです。これにより、優秀な技術者や莫大なコストを自社で抱えることなくモノが作れるようになり、フットワークの軽いベンチャー企業が、この流れに乗ったというわけです。

メイカーズ・ムーブメントは世界的な潮流ですが、日本ではDMM.make AKIBAがそのムーブメントを体現し、元気なハードウェア・スタートアップを数多く生み出しています。

今回は、その立ち上げに関わり、自身の著書「メイカーズ進化論-本当の勝者はIoTで決まる(NHK出版)」でハードウェア・スタートアップに多くの示唆と勇気を与えた小笠原 治 氏(株式会社ABBA LAB代表取締役)による講演をリポートします。

はじめにクラウドファンディングありき

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小笠原氏が登壇したイベントは、株式会社大伸社/mct主催による『上町座オープンセミナー「続・メイカーズ進化論」』です。同社が展開するオープンイノベーションの会員制サロン「上町座」の公開セミナーとして開催されました。

さて、日本では、ハードウェア・スタートアップは、「設備投資がかかる」「実証実験環境が整っていない」「成長速度が遅い」「在庫リスクがある」などの理由から、投資対象から敬遠されるというイメージをもちがちです。しかし、「世界的にみると、ハードウェア・スタートアップへの投資額は急激に増えてきている」と小笠原氏。それを自ら実践すべく、DMM.make AKIBAの立ち上げに参加し、ABBA LABでは、ハードウェア・スタートアップを専門に投資も行っています(同氏曰く、ハードウェア・スタートアップを専門とする日本初のファンド)。

そうした背景からも、おそらく、日本でもっともハードウェア・スタートアップに精通していると言えるのが、小笠原氏です。講演では、同氏が唱えるモノづくりの進化(3段階)に言及しながら、どのようにIoTに取り組むべきかをお話いただきました。

モノづくりの進化の3段階は、小笠原氏によると、「モノが売れる」「モノが作れる」「モノゴトで稼ぐ」の3つ。第1段階の「モノが売れる」は、いままでハードウェア開発を伴うビジネスの最大の障壁だった「売る」ということが、クラウドファンディングによって誰にでも可能になったということです。

また、Hack Osaka2013でも講演いただいたエリック・ミジコフスキー氏が設立したPebbleの事例でも明らかなように、しっかりとファン作りとマーケティングを行ったうえで製品化することで、「売れる」確率を高めることも可能となりました。IoTに取り組むうえで、製品開発の工程にクラウドファンディングを組み込むことは、もっとも効率の良い手法といえるかもしれませんね。

セットアップがイノベーションの分かれ目

続く第2段階は「モノが作れる」フェーズですが、キーワードは、3Dプリンタとモジュール化、セットアップです。3Dプリンタによって、誰もが外装や立体の造形物を作れるようになりました。さらに、センサやマイコンなどのモジュール化により、開発工数とコストがグッと下がりました。ここまでは、皆さんのイメージ通りだと思います。でも、本当に重要なのは、小笠原氏曰く「セットアップ」です。既存のモジュールを簡単に組み合わせられるようになったことで、いかに「セットアップ」によって新しい価値を生み出せるかが、イノベーションを生み出す分かれ目になったのです。

よく言われる事例ですが、iPhoneは部品や技術それぞれには特に革新性はなく、まさにセットアップによって価値を生み出しています。「モノづくり」から「価値づくり」へとマーケティングの力点が移っているいま、非常に大切な視点ではないでしょうか。「大企業が製品開発で苦戦しているのも、まさにこのセットアップに失敗しているから」(小笠原氏)というのも、うなずけます。

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「モノゴト」のインターネット

最後に、第3段階の「モノゴトで稼ぐ」ですが、個人的には、もっともインパクトが大きかったのがこのフェーズでした。

IoTは、いうまでもなく「Internet of Things」の略で、「モノのインターネット」と訳されます。私たちもふだん「モノの」というイメージでIoTをとらえがちで、冒頭に挙げたように「インターネットにつながる機器」をイメージしてしまいます。でも、小笠原氏によると、それは誤訳で「コト」も含む「モノゴト」が正しいということです。

機器がインターネットにつながるということは、その先にサービスがあるわけで、「モノ」だけではなく、無形の「コト」も含むというのは当然です。しかし、私も含めて、どれくらいの人が「モノゴト」をイメージしてアイデアを発想しているでしょうか。

日本でロボット市場が立ち上がりきらないことの1つとして、シーズ視点での開発が中心となっているということが巷間されています。ユーザーの視点が置き去りになっているわけですね。ロボットもIoTですが、「モノ」発想に縛られていると言えるのではないでしょうか。これを「モノ」から「モノゴト」に切り口を変えるだけで、一気にニーズ・オリエンティッドな開発にシフトしそうですね。

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以上が、ほんの一部ですが、講演のポイントとなります。第2部のワークショップでは、講演を踏まえて、同氏が考案した「IoTマトリクス」を使ったワークショップを行いました。

目からウロコのレクチャーと、同氏のファシリテーションによるワークショップ。参加された方は、非常に濃い時間を過ごされたのではないでしょうか。
この上町座オープンセミナーは、OIHでも定期的に開催します。次回は6月に開催予定です。詳細を公開しましたら、改めてご案内します。

文・EDA MAMI、手嶋 耕平

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