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『500 KOBE PRE-ACCELERATOR』 潜入レポート

( 17年03月02日 )

シリコンバレーに拠点を置き、世界的なシード向け投資ファンドとして知られる「500 Startups」。グローバルをめざすスタートアップの方であれば、その名を耳にすることも多いと思います。

その500 Startupsがこの夏、神戸市とパートナーシップを結び、アクセラレーションプログラム(500 KOBE PRE-ACCELERATOR)を実施していたのをご存じでしょうか?一体どのような環境で、どのようなアクセラレーションを展開しているのか…OIHスタッフとしては非常に気になるところ。

ということで、このプログラムが行われている実際の場所にお邪魔し、特別にレポートさせていただきました。記事の後半には、500 Startupsメンバーからの貴重なインタビューも掲載していますよ!

1. プログラムの内容

『500 KOBE PRE-ACCELERATOR』の概要は、以下の通り。

特長
シリコンバレーから500 Startupsのメンター陣が来日。
ドリームチームによるプログラムを、アメリカまで行かなくても「神戸」で受けることができる。

期間
2016/8/1(月)〜9/9(金)の6週間(8/11(木)から8/24(水)の2週間は休止)

費用
無料(移動・滞在中の諸経費は自己負担)

対象
インターネットやデジタル技術を活用した以下の分野で、ベンチャーキャピタルなど外部資金が調達可能な事業。
ビジネスツール/商品やサービスの販売/フィンテック/教育/ヘルスケア/ものづくり(IoT)/クラウドサービス(SaaS:Software as a Service)/メッセージツールなど。
※フィンテック、次世代モビリティ(次世代自動車など)、スポーツ・運動の魅力向上、健康増進、神戸の地域課題をテーマとするスタートアップは、スポンサー企業との連携が可能(参加を推奨)
参加基準 中心となるのは、シード期前後のスタートアップ(チームができている、最小限のプロダクト/モデルが出来上がっている)。
※内容次第ではアイディア段階や参加者の経歴などによっても採用される可能性あり。
※個人・法人の別、資本金額や出資者の構成、創業年数、参加者の年齢は不問。
※内容によっては企業内新規事業も対象。

使用言語
メンターとの会話や外国人スピーカーの講演などは英語(通訳つき)

やはり注目すべきは、500 Startupsからのメンタリングを日本で直接受けることができるという点ですが、受講対象が広く設けられていたり、アイデア段階のチームも参加できるケースがあるなど、より多くのスタートアップがこのチャンスを生かせるよう配慮されているのも魅力です。

2. 全体の雰囲気

さて、実際にスタートアップの皆さんはどのような環境でアクセラレーションを受けているのでしょうか?さっそく内部を見学させていただきましょう。

まずフロアを入ってすぐの場所には、メンバーが自由に飲食できるよう用意されたスペースがあります。お菓子コーナーや中身が充実した冷蔵庫も置かれていて、各自作業をしながら飲食できるようになっています。

部屋の中央部は、ミーティングや作業ができる空間になっていて、各メンバーのコミュニケーションがとりやすいよう、仕切りはなるべく少なくなっています。セミナー等が開始されると、各々が自由に席に座ります。

そして部屋の一番奥にはステージがあり、ここでは講師が登壇したり、ピッチの練習などが行われていました。

部屋に入って感じたのは、まさに、本当に全員が「共同生活をしている」という雰囲気。華美に装飾されているわけではなかったですが、スタートアップの皆さんの生き生きとした空気感や熱気がみなぎっているのを感じました。

3. 実施プログラムの様子


この日は、500 Startupsメンバーによる座学型セミナーやASICS社とのブレインストーミング等が行われていました。その日のスケジュールはホワイトボードで示されていて、決まった時間になると、各々が受講準備に入ります。

ちなみに今回の500 Startupsによるセミナーは、受講者とリアルタイムにやり取りができるよう、WEBのアンケートシステムが用意されていて、講師が質問を投げかけると、その場でWEBフォームから投稿できる形になっていました。また、受講者からの質問タイムでも、匿名でフォームから質問できるようになっており、活発なやりとりが行われていました。

そしてセミナーが終わると、次のプログラムまでの時間中、たっぷりピッチの練習をすることができます。メンターがステージの傍にスタンバイしていて、希望者はピッチを披露し、アドバイスをもらうことができます。

上達具合や次の課題など、細かい指摘を受けながらも、自分のビジネスプランにかける想いやこだわりをメンターにぶつけていて、メンターとメンティーが対等な立場でやりとりしているのが印象的でした。

4. 500 Startupsメンバーにインタビュー

そして最後に、本プログラムのきっかけや日本のスタートアップシーンについて、500 StartupsメンバーであるZafer Younis氏にインタビューをさせていただきました。

プロフィール:
Zafer(ゼイファー)はThe Online Project & Modern Media を設立した勇敢な起業家で、Oasis500、Astrolabs、Flat6Labs のメンターである。

Q:なぜ日本でアクセラレーションプログラムを実施しようと考えたのでしょうか?

去年、神戸市長や神戸市の方々がシリコンバレーの私達のオフィスを訪ねて来てくださったのが始まりです。その時に、「500 Startupsが持つアクセラレーションの知見やノウハウをぜひ神戸にも持ち込んで欲しい」と言っていただいて、その後、正式な招待状を神戸市からもらったんです。神戸市さんは、「強固なパートナーシップ築き、スポンサーの用意もしますし、神戸市自身もプログラムにフルコミットしていきたい」と言ってくれて、私達も「ぜひに」という形でこのプログラムが実現しました。もともと日本の市場開拓にも興味はあったのですが、神戸を選んだのは場所がどうこうというより、むしろどれだけ強いパートナーシップを結べるかということを重視した結果です。街として強いパートナーシップを結べるところで取り組むというのが重要なのです。

Q:日本の起業環境についてどう思われますか?
アントレプレナーは日本も世界も皆同じです。同じように熱意や情熱を持っています。
ただ、日本の起業家の方は、基礎的なところの底上げがもう少し必要なのではと思っています。アメリカの場合は、起業した人は山のようにいるし、大きな成功を収めて最終的に会社を売却したり、上場を果たしている起業家もたくさんいます。そして、今度はそんな起業家達が、そのノウハウや知識を次世代の起業家に継承していくという文化もできあがっているのです。これに対して日本はというと、技術面で言うと非常に興味深いものがいっぱいあって、起業している人も多くいらっしゃるとは聞いていますが、残念ながら成功と言える結果を残したという人はまだまだ少ないようです。つまり、起業環境の継承というものはつい最近始まったばかりなのかなと思いますね。なので、自然にそんな環境ができあがるのを待つのではなく、環境という土台そのものの底上げをしてあげたいと考えています。
ただ土台というものは、何か体系的なものをレクチャーしてできあがるものではなく、基本的に経験や体験に基づいて作られるものなので、起業の成功という体験そのものを個別に提供していきたいですね。
Q:本プログラムの受講者と実際に接してみて、日本のスタートアップのポテンシャルについてどう思われますか?

まず、日本の市場について言うと、それ自体は非常に魅力的です。技術力も高くて、経済力もある。インターネットの技術も進歩していて、モバイルの普及率も高く、ネットを使うことが普通になっていますよね。こういう点においては、ビジネスが成長する機会に溢れていて、世界的に見ても稀有と言ってよいくらい魅力的な場所です。ただこの市場を本当に生かすためには、起業家の皆さんに対して、どういうふうに市場特徴を掴んで、伸ばしていくのかというそのやり方を教えてあげる必要がありますね。やり方さえ習得すれば、それをしっかり活かせるポテンシャルを、日本のアントレプレナーは持っていると思います。

さらに課題を挙げるならば、初期のステージのスタートアップに投資をするという土壌が、まだ日本にはできていないように思います。投資側にその準備ができていない、という意味です。一方で起業家側も、投資を受けることができても、そのお金をどうやって使ったらよいのかというやり方を知らない状況です。ですので、双方に対して、どうやってそれらのチャンスを使うかという教育をしていくことも重要だと考えています。


今回の取材を通して感じたのは、メンターである500 Startupsのメンバーと、プログラム参加者との距離が非常に近いこと。もちろん、馴れ合いの雰囲気が流れているという意味ではありません。メンティーは自分の考えを恐れずに伝え、メンターはその内容がどうであれ、しっかり受け止めながら彼らがめざす方向へ導いていく。そんな、何でもぶつけ合えるという信頼関係が確かにあるように思われたのです。

年々、いろんな組織や団体により実施されることが多くなっているアクセラレーションプログラム。参加を検討している方も多いと思いますが、実際にプログラムを選択する際は、自分がどんなメンターを求め、どう彼らと関わっていきたいのかをイメージしておくことも、重要な要素のひとつなのかも知れません。


レポート作成者:EDA MAMI
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