Innovators

「こんな楽しいことを終わらせるわけにはいかない」という気持ちをもてるか

( 13年03月14日 ) img

株式会社エンジンズ | 取締役/プロデューサー 足立 靖 氏
http://engines.co.jp/ http://www.vegesta.jp/
ゲームのソフトウェアの企画・開発・運営を手がける。キャラクターやコンテンツの力で、製品やサービスに独自の世界観をもたらすのを得意とする。また、地域の食文化をテーマに、 地域×食のプロ×クリエイターのコラボレーションによる食育コンテンツ「ベジスタ」を展開中。

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イノベーションを「従来にないものを創り出すこと」と限定定義するなら、キャラクターや物語創りに、それら満たす手法は確立されていません。私たちエンタメ業界の人間もイノベーションを求めて様々な努力を重ねてきましたが、新しいものを世に送り出す手法が掴めず、事業の安定のためにリスクの少ない知的財産(キャラクター)を採用していますし、これからも大きくは変わらないと思います。事業を安定させることとイノベーションへの挑戦は相反する側面もあって悩ましいところです。世界全体の市場が刻々と変化する中、新しいヒットコンテンツの創出は必須でありながら簡単なことではありません。大手企業でさえ苦労をしている中、エンジンズのような30人余りの小さなチームが投資できる資金もマンパワーもわずか。ハリウッド的資金調達、大規模開発、広域マーケティングでリードされる世界市場で、小さなチームでイノベーションを起こすのは目眩がする難しさです(笑)。

エンジンズは新しい可能性のため、『 地域文化の発進 』『 異業種連携 』『 ソーシャルビジネス 』の三つのコンセプトを持ってチャレンジ中です。日本人は古事記の昔から、土地文化に根ざす素晴らしい創造力を持っているので、改めてその土地の地域文化をベースとして『 地域文化の発信 』を強く意識したエンタメコンテンツ創りを試みています。二つ目の『 異業種連携 』は成功事例が多くあります。判りやすいものが食玩(しょくがん)、いわゆるおまけです。それまでマニア層のものだった動物などの精緻な模型をチョコレート菓子につけて販売するというもの。訴求力の強いもの(コンテンツ)と流通力の強いもの(異業種)のコラボによりコンテンツや食品販売でイノベーションを巻き起こしたことは、私たちコンテンツ業はもちろん、菓子業界にも勇気を与えてくれました。いまの私たち大人には勇気がとても大切でしよ(笑)? 最後に三つ目の『 ソーシャルビジネス 』です。私たちはこれまで高度成長の追い風の中、「コンテンツの成功ありき、売上げありき」で業界や市場を成長させてきましたが、業界を取り巻く環境が激変する中、他者との連携をせず、自分たちだけを優先するというような思考では逆風に立ち向かえない時代になりました。自分たちの活動が世の中になにか貢献し、その結果利益がもたらされるという、いわゆるソーシャルビジネスと事業性を併せもって活動すると、その社会正義がなんとも気持ち良く止められなくなります。攻撃的に創作していた20代には無かった感覚です。歳をとったのかも知れません(笑)。

img_02これらのコンセプトで進めている事業をいくつかご紹介しますと、ひとつがアジア新興国の大手企業とのプロジェクトです。その国は超高度成長期に入り、いよいよコンテンツ産業も振興しようといったタイミング。ある食品メーカーが新規事業のために日本のクリエイターを探していたんですが、オーナーが語った『 私の国の子ども達は未来に夢を持っているので、そんなテーマのSFストーリーが欲しい 』というメッセージに感動してしまい(笑)、条件も聞かず(笑)即手を挙げました。というのも、成長が止まった国では、実はユートピア型のストーリーはニーズが少なくて、創る機会がなかったんです。常々『大人がつまらん顔をしてるから子どもらが夢を見なくなる』と思っていたので、未来のユートピアを子どもたちに楽しんでもらえるなら、と気合満タンでスタートしました。実際は契約や意思疎通など苦労いっぱいですが(笑)、明るい未来のため、子供たちの笑顔のためなら苦労も乗り越えられます。

このほかにも、各地の食と食文化をコンテンツ化して子どもたちに食育プログラムを提供する「ベジスタ」というプロジェクトを手がけています。開始して1年半、日本中の地域がつながるコンテンツプラットフォームに育ちつつあり、ベジスタの活動を通して様々なマッチングや情報集積が実現し始めています。
経営者としてもプロデューサーとしても失格かも知れませんが、ふたつのプロジェクト共にビジネスモデルは考えずにスタートしています。既存のビジネスモデルは普段の仕事の中で否応無しに実施していきます。だから意識して既存のパターンを外さないと、自分自身と周囲の常識から既存のモデルになってしまう。それではダメだと思って腹をくくって気合一発、がんばって非常識を選択して、イノベーションが現れるのを待つ日々です。日々、流動する環境の中で、私たちチームにとって揺らがない土台は『子どもたちのためにガンバルぞ!』というパッション。その気持ちに、これまでずっと関心を持っていた各地域(日本&海外)が持つ世界観を組み合わせてさまざまなプロジェクトを展開しているというわけです。

スタートしてから軌道に乗り始めた今でも、「こんな素敵で楽しいことを終わらせるわけにはいかない」という気持ちのほうが強いんです。私たち経営者はパッションにビジネスを伴わせようとしてしまいがちなので、もっと多くの人たちが世の中のために個々のパッションをぶちまけてほしいなと本気と願っています。もちろん雇用を守るために安定した事業も当然大事。企業はバリバリ儲けて、厳しいビジネスの最前線で鍛えた腕前をベースに、社会正義と事業性を兼ね備えたプロジェクトを創り出す。世の中のためになる事業でお互いが支え合う日が楽しみですし、そんな時代はきっと来ます。

( 13年03月14日 )
  • ※ 最初は大阪イノベーションハブが間に入らせていただきますが、最終的にはプレイヤーの判断によりますので、
    必ず連絡がとれるとは限りません。ご了承ください。
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