Innovators

僕は、「ロボット」というひとつの生物をつくりたい。

( 13年03月18日 ) img

株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)
知能ロボティクス研究所 ネットワークロボット研究室 | 研究技術員
ディラン・グラース氏

アメリカ生まれ。マサチューセッツ工科大学 宇宙工学の修士課程修了。主な研究対象はネットワーク・ロボット・システム、ソーシャルロボットの遠隔操作、人とマシンのインタラクティブ開発、ユビキタス・センシング、および人工知能など。

人を傷つける仕事より、人をサポートする仕事をしようと思った。

僕はアメリカ生まれ。最終学歴はMITの宇宙工学マスターだ。そのあとは、ITコンサルタントをしたり、日本の公立高校で英語を教えたり、エルサレムに行ってイスラエルとパレスチナの子どもたちにプログラムを教えるプロジェクトに参加したりもした。中東の、まだ若い世代がそれぞれの国に帰ってもプログラムを学び続け、成長したときにお互い助け合うことができれば紛争は少しいい方向に向かうかもしれない。そう願っている。アメリカにもロボット関係の仕事はあるけど、軍の仕事が多いんだ。確かに予算も多く割り当てられるかもしれないけど、それは人を傷つけるための仕事だよ。僕はそんなことはしたくなかった。ところが日本では子どもたちを抱きしめるためのロボットや、高齢者のためのロボット開発が行われていたんだ。感動したね。そんなわけで、僕は今、ここATRにいるんだ。

人のココロは、ロボットをひとりの相手として認めることができるんだ。

僕の研究しているテーマはいろいろあって、それは、人間の位置をトラッキングするシステムや、ひとりで複数ロボットのチームを操れるシステムだったりする。でもそれは今の研究対象であって、もう少し進んで今のロボットをもっと人間らしくできないかと考えたりもしてるんだ。それは、どこまでロボットが学習してその次の行動を自動化できるかということなんだけど、例を挙げて話してみよう。たとえば人は挨拶するにしても、「今日は暖かいですね」「おや、お孫さんですか」「今日はゆっくりですね」とか相手の状況を見て言い方をちょっと変えたりするだろう?でもロボットがこれをするのはとっても難しいことなんだ。森羅万象に対応する動作をロボットに記憶させればできるかな?でもそうじゃないよね。目の前で起こる事象についてロボットが考え、判断して次の行動を起こすことが必要なんだ。別の例だけど、ロボットの体の一部、例えば腕なんかに触れるとヒョイとそこに顔を向けるロボットがあったんだ。会話している最中、そのロボットをあちこち触ればロボットはそのたびに顔をそこに向ける。そういった動作を見ると人のココロは、人間とは違うとわかっていても、ロボットをひとりの相手として認めることができるんだ。さっき言った、自分で考えて挨拶の受け答えをするロボットの例も同じ。人とロボットは違う。僕はそれを認識した上で、気持ちを通わせることができるロボットをつくりたいんだ。ロボットを人間のコピーとして存在させたいのではなく、ロボットを人間とはちがうひとつの種として確立させたいんだ。

Never Stop Learning, Never Stop Teaching. それが僕の信条。

僕がなぜロボットを作るのか?その答えは2つある。ひとつは役に立つロボット、人をサポートするロボットを作りたいと思う気持ちからだよ。そしてもうひとつはロボットが僕にインスピレーションとモチベーションを与えてくれるから。今の世界でいちばん足りないものはインスピレーション。それがなければモチベーションもだんだんなくなってくるよね。でも僕はロボットからそれを得ることができる。だから作る。
ブレインストーミングやクリエイティブは人間の最も楽しい行動のひとつだと思う。Never Stop Learning, Never Stop Teaching. これは僕の信条なんだけど、人から学び、人に影響を与えることはとても大事なことなんだ。日本語の壁、文化の壁はたしかにあるけれど、それを乗り越えてでも僕はここで開発を続けたい。日本には素晴らしい人材や技術がたくさんある。だからそれを知るためにも、人が集い、知識が出会う拠点ができることは素晴らしいことだと思うんだ。

( 13年03月18日 )
  • ※ 最初は大阪イノベーションハブが間に入らせていただきますが、最終的にはプレイヤーの判断によりますので、
    必ず連絡がとれるとは限りません。ご了承ください。
PAGE TOP