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これからのプロダクトは足すことよりも削ることが価値になる

更新日:2021年07月26日(月)

おもてなしの国だからか、日本のサービスは様々な機能が搭載されているイメージが強くあります。
本当にそれらは必要なのでしょうか?

最高の贅沢は何もしないこと

イタリアには “何もしない贅沢” という概念があり、 “Il Dolce Far Niente” (英訳: The sweetness of doing nothing) というフレーズも存在します。
甘美な怠惰をゆったりと楽しむことが、最高の贅沢であるという意味。

シリコンバレー流 何もしない週末

新しいものが生み出されるシリコンバレーに住む人たちはどう過ごしているのでしょうか?
毎日忙しく、分単位でスケジュールが埋まっているのでしょうか?

実は、スタートアップやGAFAなどで働く人々のその多くが、“何もしない”時間を確保しています。

週末、市内にある公園には人々が集まり、一日中“何もしていません”。

芝生の上で、青空を見上げて、ただぼーっとする。そんな週末を過ごすことで、平日から始まる秒速でのプロダクト作りに集中できるのです。

群衆

人間とよりもデバイスと過ごす時間が多い時代

しかし、人々にとって、何もしない時間は意外と少ないのです。また、デジタルデバイスが生まれ、人間の脳は常にフル回転している状況です。

2019 Internet Trends Reportによると、平均的な大人が1日でデジタルメディアに費やす時間は、2009年の3時間から、6.3時間と2倍以上に増えているとのこと。1日の大半がデバイスによって占有され始めています。

機能を追加する = プロダクトの価値低下

こうなると、ユーザー (人間) にとって、機能が増えていくのは迷惑でしかありません。なぜなら、脳が処理しなければならない情報が増えてしまうから。

一昔前なら、アップグレードするほど機能が豊富になるのが当然とされましたが現代では逆効果。

機能が少ない方がユーザーにとって価値が高くなります。自分の時間の最大化をしてくれるサービスが最高、ということです。

リモコン

機能を追加する = プロダクトの価値低下

実際に、多くの商品やサービスが機能を削ったり、制限したりしたことで大きな価値を生み出し、ヒットしています。

  • iPhone – 物理ボタンを極力排除
  • Google – 検索ボックスのみ
  • Twitter – 140文字まで
  • Snapchat – 消える
  • Amazon Go – レジ会計が無い
  • GoPro – カメラから液晶を排除
  • Uber – 降車時の支払いが無い

既存の自動車の機能の多くの削減したTesla

Teslaのヒットの最大の理由は、自動車としての機能の “少なさ” 。
ユーザーがこれまで行ってきた様々な作業が簡略化されています。

何かをし忘れることが少なく、パーツも削減。煩わしさが少なく、これは最終的に心理的安全性にも繋がる。

Teslaにないもの:

  • 鍵・鍵穴
  • エンジン
  • 物理ボタン
  • オイルタンク
  • ガソリンタンク
  • パーキングブレーキ
  • ライトのOn / Offスイッチ
  • 車体の電源のOn / Offスイッチ

クレジットカードの常識が“ないないづくし”のApple Card

スティーブ・ジョブスもAppleのデザイン哲学として掲げている“Less-is-more (少ない方がより多くを得られる) ”は、クレジットカードのApple Cardにも受け継がれている。下記のように様々なことが簡略化されているから。

  • 申請:Walletアプリ内から → 手間が減る
  • 利用開始までの待ち時間:Walletアプリ内からすぐに利用 → 待ち時間なしカ
  • アクティベーション:パッケージとiPhone → 本人以外には不可能規
  • 約書類:Walletアプリ内 → 分厚い書類なし
  • 利用明細:Walletアプリ内 → 常時確認・月末まで待つ必要なし
  • 番号の変更:Walletアプリから → カードの再発行の必要なし

極め付けは年会費も無料。もはやカードを発行しない理由も“ない”ほど。

なぜ日本のプロダクトは機能満載になりがちなのか?

機能を削ったり、シンプルにすることでヒットしたプロダクトが枚挙にいとまがないのに、なぜ日本のサービスには無意味な機能が満載になってしまうのでしょうか?

おそらくそれは「そもそも実在しない課題」= 「解く価値の無い問題」をわざわざ生み出し、解決しようとしているから。

多くの機能と性能を求める従来のアプローチも大きな問題。上司からの司令や、部署間のしがらみ、技術者の自己満足に近いスペック重視、顧客リクエストを鵜呑みにしたことによって、機能ゴテゴテの使いにくい製品が誕生してしまう状況です。

Mazda ロードスターの素晴らしさ

一方、勇気を持ってその流れから抜け出したようなプロダクトもある。Mazdaが世界に誇る名車、ロードスターである。

自動車の定員の概念を覆し、操る喜びだけにフォーカス。それ以外を全て切り捨てたことで世界的なブームになりました。

最新バージョンでは、全バージョンより排気量を減らし、馬力も下げた。それは “操る喜び” を実現するため。ユーザー視点とプロダクトのビジョンを追求した素晴らしい例です。

ロードスター

デジタルサービスで Do less, but better を実現する4つのポイント

では、これをサービスで実現するにはどんなポイントが挙げられるでしょうか?

1. “機能予算” を定める

必ず設定される予算や時間の上限だけではなく、機能数にも制限を作ること。そして、その限られた数の中でTop3の優先順位を定めていきましょう。

2.データを活用する

サービスデザインの世界には20/80という概念があります。ユーザーは80%の頻度で全体の20%の機能しか利用しないというもの。であれば、ユーザーのプロダクト利用データを活用し、利用頻度の低い80%を削ることを考えましょう。

3. “No”を言う勇気を持つ

企画会議やユーザーからのリクエストがあった場合、どうしても機能追加を考えてしまいがち。しかし、あくまで Do less, but better を実現するために、その多くには“No” と言う勇気を持ってみましょう。

4.ユーザーの満足度を保つ

ユーザー体験の改善には、時に機能を削ることも必要になります。その際、ユーザーからの不満が出てくるかもしれません。彼らの不満を軽減し、期待値を維持する方法を考えておくことも重要です。

シンプルにすることにこそ、これから求められるサービスデザイン

機能をシンプルにすることでユーザーの心をとらえるコツやサービスの事例をご紹介しました。ユーザーの嗜好やライフスタイルが変わりゆく中で、サービスが与える価値を改めて定義し、そこにフォーカスをしたサービスデザインがこれから一層求められていくでしょう。

執筆者:btrax Japan

編集・編集責任者:大阪イノベーションハブ 大谷

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