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君のプロダクトはビタミン剤か?鎮痛剤か?それとも治療薬か?

更新日:2021年11月22日(月)

プロダクトやサービスのアイディアを考える際に最も重要とされているものが「ユーザーの課題解決に繋がるか」という点です。これは、どの視点から考えても重要だと感じられることです。なぜなら、そもそも課題を解決してくれないサービスは、不要な上に対価を払う気が起こらないからです。

…と思いがちですが、現実は大きく異なります。

意外と課題を解決していないヒットサービスが多い

現在大ヒットしているプロダクトの多くが、実は元々あった課題の解決をしていないのです。では下記のようなサービスは、ユーザーのどんな課題を解決したのでしょうか?

  • -Facebook
  • -YouTube
  • -TikTok

そう、どうしても解決してほしい課題があったわけではないのです。しかし、使い始めたらなぜか使い続けてしまいます。つまり、これらのサービスは、課題を解決していないにも関わらず、新たな習慣を通じ、ユーザーに大きな価値を生み出したと言えます。

これこそがプロダクトやサービスを考える際の大きな盲点なのです。

特にデザイン思考のプロセスでは「まずはユーザーのペイン (課題) を見つけよ」とされるため、ついつい課題解決型一択でサービスを考えようとしてしまいます。でもそうでなくて良いことも多々あります。

スタートアップ界隈ではビタミン剤、鎮痛剤、治療薬と呼ばれることも

この「具体的な課題を解決しないタイプのプロダクト」の種類を「ビタミン剤」と呼ぶことがあります。特にスタートアップ系の人たちには馴染みのある表現です。

それに対し、ユーザーの具体的な課題解決に繋がるサービスを「鎮痛剤」、問題自体をなくしてしまうようなプロダクトの種類を「治療薬」と表現します。

スタートアップサービスの種類

スタートアップサービスの種類

スタートアップサービスの種類

では、それぞれの特徴を見ていきましょう。

・Vitamin – ビタミン剤

これは、特段課題は解決してくれない一方、あれば嬉しいもの。でもなくても困らない(はず)のサービスの種類です。

スマホに代表されるように、電話さえできれば事足りたと思われていた携帯電話に対して、今までになかった習慣を生み出すことで大きな価値が生まれます。

その特性上、利用初期にはあまり大きな対価は払いたくはないと思うものの、長期で使っていると手放せなくなることもしばしばあります。

ビタミン剤型プロダクト例:

  • -YouTube
  • -Facebook
  • -Instagram
  • -TikTok
  • -Netflix
ビタミン剤型プロダクトの特徴

ビタミン剤型プロダクトの特徴

・Painkiller – 鎮痛剤

これは、ユーザーが感じている具体的な課題(ペイン)を解決してくれるプロダクトです。多くの場合、提供側が普段から感じている不都合や不便を解決するために始めることも多いです。

以前から感じていた課題が比較的短期間で解決されやすいため、プロダクトの具体的な価値が伝わりやすく、ユーザーの獲得もしやすいのが特徴です。そして、解決する課題の大きさに比例した対価が見込まれます。

その一方で、同じ課題を解決しようとするサービスが乱立しやすく、競争が激化したり、すでに類似サービスが存在していたりすることもあります。

鎮痛剤型プロダクト例:

  • -Slack
  • -Uber Eats
  • -Zoom
  • -Salesforce
鎮痛剤型プロダクトの特徴

鎮痛剤型プロダクトの特徴

・Cure – 治療薬

問題の存在自体をなくすようなプロダクトは治療薬型と呼ばれます。痛みを和らげたり、感じなくさせるわけではなく、痛みの原因を消し去ってくれるタイプです。

このタイプは、根本的な課題の解決になるため、かなり説得力が高いプロダクトです。その一方、それほどのサービスはなかなか作れないのも現実です。また、特殊なニーズを解決することも多く、ニッチになりがちでもあります。

そして何より、一度課題を解決してしまうと必要がなくなるため、継続的なビジネスモデルとしてスケールしづらいことも特徴として挙げられます。

治療薬型プロダクト例:

  • -レーシック手術
  • -結婚相談所
治療薬型プロダクトの特徴

治療薬型プロダクトの特徴

「鎮痛剤はビタミン剤よりもヒットしやすい」は大きな間違い

冒頭でも触れましたが、感覚的には、鎮痛剤型の方がビタミン剤型よりもわかりやすく、ヒットしやすいと感じます。

健康状態を少し改善してくれそうなビタミン剤やサプリよりも、現在感じている大きな痛みを消し去ってくれる鎮痛剤の方がニーズが大きい、という理論です。

実際に、“Sell painkillers, not vitamins”(ビタミン剤ではなく鎮痛剤を売れ)という表現があるほど、ビジネスにおいては、顧客の課題解決を行うのがセオリーなのです。

しかし、実はこの理論と現実には、大きなギャップがあります。

鎮痛剤からビタミン剤に移行したNetflixの事例

むしろ、鎮痛剤から始まって現在はビタミン剤的な存在になり、ユーザーを夢中にしているようなサービスすら存在するのです。その一例がNetflixです。

Netflixは、創業当初は郵送によるDVDレンタルを提供するサービスでした。既存のレンタル店によるレンタル期間と延滞料に不満(ペイン)を持つユーザーのために、レンタル期間と延滞料なしのサービスを提供していました。一回に借りられるDVDの枚数を制限することで実現したモデルです。

まさにユーザーの課題を和らげるペインキラーでした。

その後ストリーミング型のサービスを追加し、少しずつオリジナルコンテンツを増やし、現在のモデルに進化しました。そして、元々あったビデオレンタル店のほとんどが倒産してしまったため、当初のユーザーの課題自体が消滅したのです。

そして現在のNetflixは、完全にビタミン剤的存在になっています。

ゲーム系は?

では、ヒット作品が多く存在しているゲーム系のサービスはどのタイプなのでしょうか?実は、上記のどれでもなく「キャンディー」と呼ばれることもあります。

つまり、体に良い効果はない一方、甘くて美味しく、ついつい食べちゃうような感じです。

意外と多いアイディア出しの落とし穴

このように、一見ロジカルだと思われる「課題解決型」サービスですが、必ずしもそれだけに固執する必要はありません。例えそれが既存の課題を解決していなかったとしても、ユーザーに新しい習慣を提案し、夢中になる内容であれば、大ヒットも十分に見込めるのです。

また、似たようなサービスであっても、後発で成功している例もあることからもわかる通り、サービス作りにおけるアイディア出しは実に奥が深いものです。

サービスアイディアを発想する際には、どんなユーザーのどんな課題を解決するかはもちろん、そのタイプが、ビタミン剤型なのか、鎮痛剤型なのか、もしくは治療薬型なのかという視点で考えてみることも重要でしょう。

執筆者:btrax Japan

編集・編集責任者:大阪イノベーションハブ 大谷

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