第21期OSAP デモデイレポート

第21期OSAPデモデイの集合写真

2026年10月6日(火)、大阪イノベーションハブで「第21期OSAP デモデイ(成果発表会)」を開催しました。6月の合宿を経て事業の検証や顧客開拓を進めてきた採択企業6社が、サービスの内容、プログラム期間中の変化、今後の展開を発表しました。

Global Startup EXPO 2026の公式サイドイベントとして、会場とオンラインで開催。大企業とスタートアップの協業を取り上げる特別セッション、採択企業6社によるピッチと質疑応答、ネットワーキングを行いました。

開催日時
2026年10月6日(火)14:00〜17:00(交流会含む)
開催場所
大阪イノベーションハブ(グランフロント大阪)/オンライン
プログラム
  • 開会・OSAPの紹介
  • 特別セッション「出会いを事業に変える——大企業とスタートアップの協業設計と意思決定」
  • 第21期採択企業6社によるピッチ
  • 大阪イノベーションハブの取り組み紹介
  • 閉会挨拶・集合写真撮影
  • ネットワーキング

特別セッション「出会いを事業に変える——大企業とスタートアップの協業設計と意思決定」

特別セッションには、株式会社unerryの内山英俊さんと、セイノーホールディングス株式会社の髙橋一馬さんが登壇。モデレーターの加藤秀麻が、成長戦略の中でなぜ外部と組むのか、そして提携した後に事業をどう動かすのかを問いかけました。出資を受けて事業を育ててきた内山さんと、事業会社のCVCを担う髙橋さん。それぞれの立場から、協業の利点だけでなく、実際にぶつかってきた難しさにも話が及びました。

第21期OSAPデモデイのトークセッション

協業は目的ではなく、成長戦略を実現する手段

髙橋さんが出発点に置いたのは、物流を一社だけで維持することの難しさです。ECなどで配送需要が増える一方、担い手や運べる時間は限られていく。セイノーでは、競合企業との共同輸送にも取り組んでいます。スタートアップに限らず外部と組み、その中でも自社だけでは対応しきれない課題や新しい技術を担う相手として、スタートアップとの協業を位置づけています。

一方、人流データを扱うunerryの顧客は、小売・外食、まちづくり、公共交通など。内山さんにとって、大企業との提携は、こうした領域の顧客に接点をつくるための力になってきました。三菱商事との資本業務提携を例に挙げ、スタートアップ単独では話を聞いてもらいにくい相手にも、提携先の信用を通じて提案できると振り返りました。

いきなり出資ではなく、受発注や共同開発から考える

受発注を友達、業務提携を恋人、出資を結婚にたとえ、取引を重ねて関係を深める順序の大切さを指摘しました。出資を受けると、出資元の競合企業から取引を敬遠される、という事業上の制約が生じ得ることがあります。これに対して髙橋さんは、セイノーが関わるファンドでは、自社との直接的な相乗効果だけでなく、物流全体への貢献を投資の判断軸に置いているため、業界で広く使える形をつくる考えを示しました。上流の物流が滞れば、その影響は自社にも及ぶ。自社に閉じず、サプライチェーン全体を整えることにも意味があるという考え方でした。

その上で、内山さんからは、株式への出資ではなく、共同でつくるプロダクトやプロジェクトに資金を投じ、売上を分け合う方法も提案されました。髙橋さんが重視したのは、その企画が顧客や社会のために何を変えるのかという点。相手企業と組みたいという理由だけでなく、実現したい姿から、必要な事業や資金の使い方を組み立てることが社内の判断につながります。

提携を結んでから、顧客に届く仕組みをつくる

unerryでは、提携する飲料メーカーが小売・外食企業に商品を提案する際、同社が人流データを活用した販促を提案。初回は飲料メーカーの販促費で導入を支え、効果を感じてもらえれば、次からは顧客自身の費用で利用してもらう仕組みをつくりました。営業先を紹介してもらうだけでなく、商品提案とサービスの導入費用を組み合わせたことが、初期の顧客基盤の形成につながりました。

ただし、提携が決まれば自然に進むわけではありません。内山さんが苦労したのは、出資元の担当者や上司の異動によって、それまでの話が振り出しに戻ることでした。提携先の組織や意思決定の流れを把握し、社内で協業を動かしてもらうための調整にも力を注いできたといいます。髙橋さんは、セイノーでは社長直属の推進部署への権限委譲と、会社として同じ方向を向くことが、個々の案件に取り組む支えになっていると応じました。

現場の「当たり前」を見つけ、動ける仕事に落とし込む

髙橋さんが挙げたのは、社内の人が強みだと認識していない仕事や信用です。トラックや設備だけでなく、毎日の配送で顧客と築いた関係、制服を着ているからこそ入れる場所、現場で個別に引き受けてきた作業も、外部から見れば価値になる。無償で行っていた対応を整理し、ルールや対価を設けることが、新たなサービスにつながる可能性があります。

一方、協業の構想をそのまま事業部へ持ち込んでも、担当者には自分の仕事として判断しにくいことがあります。相手が判断できる単位へ仕事を分け、必要な材料を渡すことが重要だと説明しました。

こうした調整で得た知見は、次の提案にも生かされます。外部の相手に、どこまで企画を具体化してほしいかを伝え、双方で進め方を磨いていく。今後に向けては、投資先への出向や研修などを通じ、現場と企画の間をつなげる人材を社内で育てることにも力を入れる方針とのお話でした。

関係づくりは急がず、協業が始まったら早く成果を出す

内山さんが協業後の時間軸として強調したのは、1年以内に成果を出すことでした。出資を受ける側の経験から、現在は自らが出資する側でも、相手のスタートアップのために早期の成果をつくることを社内に求めています。担当者の熱量があるうちに関係を築き、事業としての結果を出せるかが、その後を左右するという考えです。協業後の成果は急ぐ一方で、出資前の関係づくりはむやみに急がず、1〜2年かけて互いを知ることを提案。資金を出す側が優位に立つのではなく、対等に取り組む姿勢を社内でも共有しておくことが大切だと答えました。

髙橋さんからは、秘密保持契約の締結に2〜3か月かかり、ようやく動ける頃には相手が事業転換していた経験も。こうした時間のずれを減らすことが、CVCを設けた背景の一つでした。失敗できないために一歩を踏み出せなくなるのではなく、挑戦を許容できる環境をどうつくるか。資金や提携先を用意するだけでなく、協業を実際に進められる組織のあり方まで掘り下げるセッションとなりました。

セッション登壇者

  • 内山 英俊|株式会社unerry 代表取締役CEO
  • 髙橋 一馬|セイノーホールディングス株式会社 オープンイノベーション推進室 CVC担当課長
  • 加藤 秀麻|フォースタートアップス株式会社 オープンイノベーション本部 STARTUP DBディビジョン/アクセラレーションディビジョン シニアマネジャー(モデレーター)
第21期OSAPデモデイのセッション登壇者3名

成果発表|採択企業6社によるピッチ

後半は、第21期採択企業6社によるピッチです。事業ピッチに加え、OSAP期間中の変化について発表いただきました。

第21期採択企業6社の事業概要:ドットログ、コトスタイル、ShipMate、TRASS、シー・システム、maemo atomo
コトスタイル株式会社の起業家紹介

コトスタイル株式会社|空き家の店舗活用を支援するAI査定

最初に登壇したのは、コトスタイル株式会社の穴澤陸平さん。京都で物件探しから設計・施工までを手がけ、300店舗以上の店づくりに携わってきました。出店の相談はあるのに貸せる物件が足りない一方、空き家の所有者からは、活用方法や相談先が分からないという声が寄せられたことが、新しい事業の出発点です。

開発したのは、空き家を「店舗として貸す」という選択肢を提案するAI査定の仕組み。住所や貸し出す階、広さを入力すると想定賃料が分かり、同社に登録する出店希望者の情報も確認できます。所有者が、いくらで貸せそうか、借りたい人がいるかを具体的に検討できるようにするサービスです。

合宿での助言を受けてサービス内容を一部変更、開発を進め、約2か月でベータ版を公開。京都で事業モデルを固めた後、関西・首都圏へ広げ、将来は他地域の加盟店を通じた展開も計画しています。空き家に家賃収入を生むだけでなく、お店を通じて人が集まる場所を増やすことをめざしています。

株式会社ドットログの起業家紹介

株式会社ドットログ|建設業の業務に合わせたAI開発

続いて、株式会社ドットログの西田一晴さんが登壇。建設業に特化したAI開発に取り組んでいます。内装・電気・設備などの業種や、元請け・下請け、会社ごとに異なる帳票や見積もりのルールに対応し、過去の情報を探す、転記する、内容を確認するといった手作業を減らします。

当日は、解体工事会社の入札用の積算資料づくりを支援し、開発したシステムを使った案件の落札につながった事例を報告。ほかにも、経営者に集中する見積もりの知識の共有、工務店での下請け見積もりのチェックや発注書作成など、実際の業務に踏み込んだ開発を挙げました。

事業は、個別のオーダーメイド開発で業務を検証し、共通する知見をSaaSの基盤にまとめ、足りない機能をセミオーダーで追加する3段階で展開。OSAP期間中は、顧客へのヒアリングを重ねながらサービスを具体化し、資金調達にも取り組みました。単なる省力化にとどまらず、見積もりや管理の精度を高め、建設会社が利益を残せる仕組みをつくります。

ShipMate株式会社の起業家紹介

ShipMate株式会社|小口の国際配送と越境ECをつなぐサービス

ShipMate株式会社の芦澤望さんが登壇。日本から海外への小口配送を手軽にする仕組みと、海外から日本の商品を購入できる越境ECサービスを展開しています。当日は、訪日中に買った商品を海外へ送り、帰国後も気に入った商品を購入する場面を例に、配送を一度きりの取引で終わらせない構想を示しました。

国際配送の難しさは、言葉だけではありません。送り先の国へ発送できる商品かどうかの確認や、申告書・送り状の作成も必要です。利用者がQRコードから内容を入力し、発送用のQRコードを発行する仕組みや、日本郵便・DHLとのAPI連携によって、発送手続きを簡単にします。ホテルや店舗での運用負担を抑えることも重視しています。

プログラム期間中は導入・利用を重ね、現場での運用や利用者のニーズを検証。すでに提供する越境ECサービスと国際配送サービスをまたいだ利用の検証が、次の段階です。質疑応答では、小売店や配送会社などと商品情報を共有し、書類の不備や返送対応を減らすための連携、運用・開発を支える人材の確保を課題として挙げました。

TRASS株式会社の起業家紹介

TRASS株式会社|インフラ点検の記録と報告書作成を効率化

TRASS株式会社の越智健心さんが登壇。橋やトンネルなどの土木インフラ点検を支援するアプリを開発しています。点検では、前回の記録を紙で持ち歩き、現地で写真や損傷を記録した後、事務所でCADやExcelに転記する作業が発生します。この現場と事務所の二重作業を減らすのが、サービスの狙いです。

アプリでは、図面上で前回の記録や写真を確認しながら撮影し、写真と損傷情報をひもづけて管理。図面への書き込みもアプリで行い、報告書づくりにつなげます。OSAPでは、サービスの価値の伝え方を整理し、営業方法を見直したことで、実証を繰り返す段階から契約へと進展しました。既存顧客が複数の現場で繰り返し利用する事例も挙がりました。

点検実務を担う会社に加え、点検を内製化したい元請け企業にも提案先を拡大。今後は、点検で集まる記録を診断、補修計画、設計に生かし、維持管理の一連の業務を支える構想です。質疑応答でも、事務作業の効率化だけで終わらず、土木インフラの維持管理全体の改善につなげる考えを示しました。

シー・システム株式会社の起業家紹介

シー・システム株式会社|入力作業の自動化から、改善が続く現場づくりへ

シー・システム株式会社の森下亮佑さんが登壇。受発注や納品書などのデータ入力を自動化するツールを提供しています。製造業のエンジニアとして日々の改善に取り組んだ経験から、紙・FAX・PDFの内容を手入力する作業が残るバックオフィスにも、自ら業務を改善する文化を広げたいと考えています。

OCRと生成AIを組み合わせたツールでは、社内のマスターデータと読み取った文字を照合し、注文書に多い商品名などの固有名詞にも対応。化学系商社で、注文書や請求書の入力作業を月160時間以上削減した導入事例も挙げました。一方で、ツールを磨いても解約が起きる経験から、導入だけでは業務改善が定着しないことにも向き合ってきました。

そこで、ツールに加え、プロジェクトの進め方やマニュアルなどのノウハウ、年間を通じた伴走支援を提供する方針に。使う人が育ち、現場で改善を続けられる状態をつくります。OSAP期間中は、顧客への向き合い方や価値の届け方について、メンタリング等を通じてアップデート。営業方法を変えたことによって受注単価が5倍に。事業を見直す過程で、日本のバックオフィスに改善の文化をつくるという志も明確になりました。

株式会社maemo atomoの起業家紹介

株式会社maemo atomo|妊娠・出産・育児期に特化した運動支援

最後に登壇したのは、株式会社maemo atomoの西山夏実さん。助産師としての臨床経験と、産前産後の運動に関する研究をもとに、妊娠・出産・育児期の運動を対面とオンラインで提供しています。助産師や理学療法士が指導し、研究機関とプログラム開発や効果検証に取り組む点が特徴です。

大阪の2拠点のスタジオを運営し、病院や既存会員からの紹介を通じた利用も広げてきました。OSAP期間中は、プログラムの検証に加え、広告費をかけない顧客獲得経路の強化と、会員の継続利用に注力。月あたりの体験者数は10人から15人に増え、既存店舗の成長に手応えを得たと振り返りました。

今後の目標は、2036年までに100店舗へ展開すること。質疑応答では、医療従事者への最新の知識の共有や、全国展開に必要な人材の確保、病院・会員からの紹介経路の強化にも触れました。「出産をリスクにしない社会へ」というビジョンのもと、出産するかどうか、その時期、出産後までを含め、さまざまな選択を支える事業をめざしています。

特別セッションに登壇した内山さん、髙橋さんには、各社のピッチでもコメンテーターとして、質疑応答やコメントをいただきました。ありがとうございました。

Insight Showcase|採択企業のパネルと合宿映像を展示

会場となった大阪イノベーションハブでは、「Insight Showcase」に第21期採択企業6社の紹介パネルとOSAP合宿の映像を展示しました。各社の事業概要とあわせて、合宿でのメンタリングや発表の様子もご覧いただける内容となりました。

Insight Showcaseに展示された採択企業6社の紹介パネルとOSAP合宿映像

デモデイを終えて

OSAPでは、引き続き参加企業の事業や課題に応じた支援を続けてまいります。

ご登壇・ご参加いただいたみなさま、採択企業を支えてくださったメンター・関係者のみなさま、ありがとうございました。

第21期OSAPの起業家と運営メンバーの集合写真

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