株式会社ミーバイオ(以下、ミーバイオ)は、東京大学発のスタートアップ。光で微生物の代謝経路を制御することによって、バイオマス由来の化学品原料を低価格に生産できる技術を持つ。この技術によって、石油由来の製品をバイオマス由来のものに置き換えることが可能になると語る代表・早水建祥氏に、同社のめざすバイオものづくりとは何か、現在の取り組みと未来への展望について伺った。
今、なぜバイオものづくりが注目されるのか
バイオものづくりとは、「微生物の力を利用したものづくり」のこと。バイオマス由来の糖などの原料と微生物の働きを使うことによって、石油を使わずに石油化学品の代替物質をつくる技術です。バイオものづくりは、現在、世界中の企業や研究者によって注目され、開発が進められていますが、その中でも私たちの持つ技術は、低コストでの生産という点でとても優位性が高いと考えています。
バイオものづくりが注目される理由は大きく二つあります。一つは気候変動の問題です。地球温暖化の大きな原因の一つとされるCO2の一方的な排出を、できるだけ抑えることが求められています。もう一つは、石油資源の問題です。経済産業省によると、石油の可採年数は約50年と試算されています(※1)。
今後の石油代替のものづくりの手段のひとつとして、バイオものづくりは、これからの私たちの暮らしを支えるために、必要不可欠な技術なのです。
※1参考:経済産業省 資源エネルギー庁「エネルギー動向(2025年6月版)」 第2章 国際エネルギー動向 第2節「一次エネルギーの動向」より
光による制御によって微生物の働きをコントロール
バイオものづくりの主要な原料となる糖は、「炭素」を主成分としています。
つまりバイオものづくりとは、光合成によって植物がつくった糖(炭素)を原料に、微生物の発酵の力で素材、燃料、医薬品、食品など、さまざまな炭素が主体となった物質を生み出す技術です。
例えば私たちがターゲットとする化学品原料であれば、その物質からつくられた製品を最終的に廃棄・燃焼すると、製品を構成していた炭素はCO2として大気に戻り、そのCO2は光合成によって再び植物に取り込まれるという循環を果たします。バイオものづくりの本質は、この「地球全体のカーボンマネジメント」にあると考えています。
ただ、バイオ化学品原料の拡大にあたっては、非常に大きな課題があります。答えはシンプルで、大量生産が難しく、コストが高くなってしまうからです。脱炭素の文脈で、バイオ化学品が注目を浴びている一方で、石油化学品と比較してコストが高いために普及が進んでいないのが現状です。
私たちの技術が画期的である点は、東京大学の佐藤守俊教授による「光スイッチタンパク質」という基盤技術を用いることで、バイオものづくりの発酵生産プロセスを光で制御し、バイオ化学品原料の低コストかつ大量生産を可能にする点です。
2030年以降の実用化に向け、パイロットプラント建設の準備中
私は研究者ではなく、あくまでイチ起業家です。ミーバイオのコア技術の発明者であり共同創業者である佐藤教授と出逢ったのは、友人に誘われて参加した大学発スタートアップのプログラムやコミュニティがきっかけでした。
日本の大学や公的研究機関にはユニークで社会的に価値のある研究が多く存在し、その研究成果によって社会課題を解決したい、世界をよくしたいと考える先生が多くいらっしゃいます。その成果を社会実装するためには会社を一緒に立ち上げてくれる人、つまり起業家が必要であるものの、そのような人材を先生方が見つけることが難しいという日本の社会課題があります。国もそのことを認識し、イベントなどで研究者と起業家をつなぐ機会を多く設けています。私と佐藤教授との出逢いも、そのような中の一つでした。
ミーバイオを立ち上げる前に交流をしながら佐藤教授の研究について知っていく中で、その素晴らしい研究内容に将来性を感じ、また社会実装に強い意欲を持つお人柄にも惹かれ、「この技術を使ったスタートアップに挑戦したい」と考えるようになったのです。
世界的な脱炭素の文脈の中で、バイオ化学品という巨大な産業が生まれると予測されています。現在、バイオ化学品の社会実装に向けて、パイロットプラントの設計と建設を準備しており、並行して企業様との共同研究や顧客開発を進めています。
私たちが取り組むバイオ化学品は、日本はもとよりグローバルでチャンスがあると考えているので、すでに海外展開を見据えて積極的に世界のお客様とディスカッションをしています。この独自の光制御型のバイオものづくり生産システムを開発し、お客様にシステム自体をライセンスアウトすること、そしてミーバイオ自体がグリーンケミカルメーカーになり、脱炭素・脱石油社会に貢献することが私たちのめざすところです。
関西のリソースが結集するインキュベーションプログラム「起動」の第1期に採択され、半年間におよぶハンズオン支援や活動資金の提供で事業を成長させた
OIHをこんなふうに活用しました!
2022年関西スタートアップインキュベーションプログラム「起動1期」に採択していただいてから、OIHのいろいろなプログラムを利用しています。2023年には第1回HeCNOS AWARDを受賞し、大阪・関西万博にも出展することができました。さらにTech Osaka Summit 2025の英語ピッチコンテスト「Tech Osaka Award 2025」では優秀賞を受賞。関東に拠点を持つ私たちにとって、OIHは関西の企業やスタートアップとつながる大きなきっかけをつくっていただいています。
「「Tech Osaka Award 2025」には、CSOの蝦名氏が登壇した
取材日:2025年12月8日
(取材・文 岩村 彩)
