
開催概要
「第2回 KSAC-GAPファンド」に採択された全44件の研究シーズが一堂に会し、各研究者が社会実装に向けたビジョンや事業化構想を発表する「KSAC DEMODAY 2026」が開催されました。2025年のノーベル賞受賞で世界が注目する関西のアカデミアから傑出したスタートアップを生み出すため、会場には、産官学金の垣根を越えて600名を超える参加者が集結。事業化を加速するパートナーシップが数多く生まれ、エコシステムが広がる一日となりました。
■ 開会挨拶
オープニングでは、まずKSAC主幹機関の京都大学・木村氏が開会挨拶に登壇しました。木村氏は、起業支援人材や支援機関、VCなど、多くの方々との『共創』によって、今日の成果発表につながったとプログラムの意義を強調しました。さらに、関西のスタートアップ・エコシステムの認知を世界に広げていくためには、さらなる関係人口の拡大とネットワークの強化が欠かせないと述べ、来場者に協力を呼びかけました。
■ 趣旨説明(KSAC-GAPファンドのご紹介)
続いて、プログラム代表補佐を務める京都大学の吉田氏が登壇し、KSAC-GAPファンドの概要を説明。事業化までに多くの時間と資金を要する大学の基礎研究に対し、本プログラムでは、創業前のサポートを主眼に置きつつ、創業後の支援にもシームレスにつないでいく仕組みを整えていると説明しました。また、第2回GAPファンドには145件の申請があったことにも触れ、「関西はライフサイエンス分野が強いイメージですが、それ以外の幅広い研究領域でも優れたシーズを有しており、基礎研究をベースにしたスタートアップが育つ素地があります」と関西の可能性を強調しました。
■ トークセッション「研究をビジネスへ転換する共創のダイナミズム」
ピッチに先立って行われたトークセッションには、微細藻類による環境浄化や脱炭素化をめざすノベルジェン代表の小倉氏、近接覚センサーによる次世代ロボットを開発するThinker代表の藤本氏、キャピタリストとして事業会社のCVC設立やディープテック投資に関わるグローバル・ブレインの平井氏が登壇。研究シーズをビジネス化する上でのリアルな課題や、事業成長に必要な視点について議論が交わされました。
研究者としての立場から起業した小倉氏は、研究成果そのものだけでは事業化は進まず、現場に出向いて市場の課題やニーズを把握することの重要性を実感したと語りました。創業当初は微細藻類でマイクロプラスチックを除去する事業を計画していたものの、現在は牡蠣のエサ開発プロジェクトが収益の柱になっていることを明かし、自ら動く事で想定外の市場との接点が見つかると話しました。
藤本氏は、大阪大学でロボット工学を研究する小山教授との出会いがThinker設立の契機となったと振り返り、人手不足によってロボットが不可欠になる未来像を当初から共有していたと述べました。さらに藤本氏は、「商売は仮説検証の繰り返し。ビジョンを発信しながら、成功の可能性があれば事業化し、必要に応じて柔軟に方向転換する。それを今もずっと続けています」と経営者としての理念を語りました。
また、CVCのスタートアップ投資に数多く関わってきた平井氏は、事業会社とディープテック・スタートアップとの連携について、研究開発の一環として組むのか、ビジネス推進のために組むのか、双方が解像度を上げて協業先を見極める必要があると説明。さらに「投資家として成功事例を作り、後に続く起業家が資金調達しやすい環境を築いていきたい」と抱負を語りました。
■ 研究者によるピッチセッション<前半>
続いて、GAPファンドに採択された研究者によるピッチセッションが行われました。前半では、第2回の採択者44名の中から、Step1の18名が登壇し、自身の研究内容と事業化に向けた構想を語りました。
トップバッターを務めたのは、抗がん薬による心筋症などの副作用を抑える治療法を開発する滋賀医科大学の扇田氏。既に特許を取得している研究成果をもとに、起業に向けて基礎研究をさらに進めていきたいと意欲を示しました。
また、目の難病に対して汎用性の高い遺伝子治療法の確立をめざす奈良先端科学技術大学院大学の笹井氏は昨年KSACの支援を受けて特許出願に至ったことを紹介し、この治療法の実用化によって患者のQOL向上と医療費抑制の両立に貢献していきたいと語りました。前半登壇者18名中11名がライフサイエンスヘルスケア領域による研究であり、同分野における関西の層の厚みを感じさせるセッションとなりました。
一方で、ものづくり分野でも、ダイヤモンド膜の形成技術や、超省電力のセンシング技術など、優れた研究成果が披露されました。
木造人工衛星の開発に取り組む京都大学の仲村氏は将来的には、衛星コンステレーションの大半を木造に置き換え、持続可能な宇宙開発に貢献したいと展望を語りました。さらに、製造の最適化AIシステムを開発する京都大学の田辺氏は、ツールが示した通りに製造するだけで最高性能の製品ができるような、“究極の予測ソフト”を生み出すと大きなビジョンを語りました。
■ 研究者によるピッチセッション<後半>
後半では、Step2の採択者9名が登壇しました。こちらのピッチでは研究成果や将来的な展望だけでなく、より具体化されたビジネスモデルが披露され、各ピッチの後には投資家からのコメントが寄せられました。
先進的な創薬プラットフォームや新発想のがん免疫治療、海水から水素を生み出すエネルギー技術など、社会課題の解決につながる多様な研究成果が披露され、来場者は高い関心を寄せ、熱心に耳を傾けていました。
最後に登場した京都大学の近藤氏は、体のレジリエンス(回復能)を低下させる老化細胞に着目し、加齢に伴う疾患を予防・治療する新たなアプローチを紹介。近年、米国では老化防止に取り組むベンチャーが200社ほど誕生しており、市場の注目度が高まっていることにも触れつつ、KSACの支援期間が終了する2027年4月を目処に起業し、市場を広げていきたいと目標を語りました。大きな可能性を持つ研究シーズに対し、京都キャピタルパートナーズの柳氏は、「人類の永遠の夢である不老不死に挑む壮大なビジョンを今後も発信し続けてほしい」とエールを送りました。
■ 閉会挨拶
すべてのセッション終了後には、大阪大学の中南氏が閉会挨拶を行いました。中南氏は、「それぞれの研究に進展が見られ、GAPファンドの効果が感じられるピッチでした。一方で課題も見えたと思いますが、課題はチャレンジしたからこそ見えるもの。私たちは今後も課題を発見するための支援を続けていきます。そして、今日集まった方々とともに協力し、その課題を解決していきましょう」と呼びかけました。
■ ネットワーキング
イベント終了後には展示エリアでネットワーキングが行われ、全44件の採択者と来場者が交流を深めました。世界規模での課題解決やイノベーション創出につながる可能性を秘めた研究成果に、多くの参加者が関心を寄せ、会場は通路に人があふれるほど最後まで大きな熱気に包まれました。
今回のKSAC DEMODAY 2026は、関西の大学発スタートアップのポテンシャルの高さと、それを支えるエコシステムの広がりを改めて印象づける機会となりました。研究成果の社会実装に向け、研究者、支援機関、投資家、事業会社がつながることで、新たな共創が着実に動き始めています。
イベント概要
イベント名:KSAC DEMODAY 2026
開催日 2026年4月14日 (火)