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起業家ライブラリ

治田 颯希 氏

アフリカ・ウガンダで生ゴミをリサイクル

ビジネスの力で生活環境の改善と貧困問題の解決に挑む

治田 颯希 氏

神戸大学
- Feeds -(フィーズ) 神戸大学 国際人間科学部 4年(2026年6月取材当時)
事業内容ウガンダの生ごみから生まれる循環社会

革新的な技術やアイデアの社会実装、既存組織では取り組むことができないビジネスへの挑戦、あるいは手つかずの広大な市場への参入など、起業にチャレンジする動機は多種多様であり、ときには複合的なこともある。それらのなかにしばしば含まれるのが、ビジネスを通して社会課題を解決したいという、ソーシャルアントレプレナーシップ(社会起業家精神)だ。アフリカ・ウガンダでのゴミ問題に取り組む神戸大学4年生の治田颯希さんもその1人。令和7年度スタートアップチャレンジ甲子園【シニア部門】で最優秀賞を受賞したプラン『ウガンダの生ゴミから生まれる循環社会』について話を聞いた。

放置される生ゴミの山。そこから生活の糧を得る人もいる

私が取り組んでいるのは、東アフリカウガンダでの生ゴミリサイクル事業です。首都・カンパラには大きな野菜市場があるのですが、ここからは毎日、大量の野菜が廃棄されて山積みになっています。廃棄された生ゴミは回収され、最終処分場(ダンプサイト)へ運ばれます。最終処分といっても実際は分別することもなく、あらゆるゴミを一か所に集めて捨てるだけ。ここで巨大なゴミの山ができています。衛生環境という面からは、非常に問題がある状態です。

神戸大学 治田さん

野菜市場のゴミ山

一方で、ゴミの山は現地のひとびとにとって生計を立てる1つの場所になっています。ゴミの中からお金になるものを拾い集め、それを売って生計を立てているひとがいます。ということは、仮に衛生環境の向上のためにゴミ山をなくしてしまったとしたら、彼らの生活が立ち行かなくなることになります。ゴミ処理が貧困問題と絡み合うという、非常に複雑な状況がウガンダをはじめとした開発途上国にはあるのです。

私が取り組む生ゴミのリサイクル事業というのは、具体的には生ゴミをたい肥化し、新たな価値を与える事業です。また、バイオブリケットというバイオ燃料を生み出す事業も計画中です。これらの事業をスラムなどで暮らすひとびととともに進めることで、彼らの収入源となって経済的自立を支えます。たい肥化に向けては生ゴミの分別回収を行いますので、廃棄されるゴミの量自体を減らせるという効果もあります。

神戸大学 治田さん

現地の人と一緒に問題解決を。既存組織ではなく起業の道を選ぶ

現在のような国際協力や海外での活動に興味を持ったのは、中学生のときです。赤十字の国際的な活動を紹介するパネル展のお手伝いをする機会があり、医師が途上国の子どもに注射を打っている写真を見て、「かっこいい。自分もこんな活動がしたい」と思いました。

とはいえ、根っからの文系人間だった私に医者の道は難しい。そこで国連や独立行政法人国際協力機構(JICA)をめざそうと考えました。大学は、「国際協力の仕事に就くならば」と、国際関係を学ぶことができる神戸市立外国語大学に進学。2024年、1年生の春休みに、海外でのボランティア活動を運営する学生団体のプログラムに参加し、初めてウガンダを訪れました。現地のゴミ問題や貧困問題を目の当たりにしたのもこのときです。

ウガンダに滞在し、現地の人と意見を交換し、共に活動するにつれて、自分なりの国際協力のスタンスが見えてきました。国連やJICAは、支援の仕組み作りなど、大局的な視点からの活動がメインなように思います。

それに対して私は、“現地社会に入り込み、現地の人と一緒に目の前の問題解決に取り組むことに興味がある”と気がつきました。そこで将来の方向性を変更し、『ウガンダの人と一緒に、ウガンダの社会課題を解決しよう』と決めました。

とはいえこの頃はまだ、起業は考えていませんでした。ゴミ問題、環境問題、リサイクル、貧困などといったテーマに取り組むNPOやNGO、あるいは企業に所属して活動するつもりでした。ところが、そういった団体は探しても見当たりませんでした。 そこで、「ないなら、自分で作るしかない」と考え、起業をめざすことにしました。

同時に、ごみ問題についてもその現場を見たいと考えた私は、市内唯一の廃棄物処理場を視察しました。東京ドーム3つ分の広さに、高さ5m近くまでごみが積みあがっている光景が強烈に印象に残っています。

視察から半年後、そのごみ山が崩落しました。自分が行った場所で価値がないとされる廃棄物が原因で人の生命が奪われる状況に強い憤りを覚えました。そこでごみ問題の解決に人生をかけることを決意しました。

神戸大学 治田さん

2025年4月には神戸大学国際人間科学部環境共生学科に編入しました。ゴミ問題の解決や起業に取り組もうにも、私には専門的な知識はまったくありません。そこで、環境問題とアフリカ地域について専門的に、神戸大学で学ぼうと考えました。

経営についてはビジネスプランコンテストに積極的に参加し、参加者のプランや審査員の批評などを参考にして自分のプランをブラッシュアップしていきました。大学では経営学部の先生にも相談にのっていただき、アドバイスをもらっています。

神戸大学 治田さん

行動力と情熱を強みにして、現地で賛同者を得る

1年生の春に加えて、昨年、3年生の秋にも6週間にわたってウガンダを訪問しました。このときは現地の行政や現地最大のごみ回収業者、さらに住民などのもとにとにかく足を運び、私の思いと計画を伝えて回りました。

「日本から来た学生が、なぜウガンダのゴミ問題を?」と驚かれることがほとんどでしたが、私が持っている強みと言えば行動力と情熱ぐらいです。「この問題を解決したいんだ」と繰り返し伝えることで、賛同してくれる人、協力してくれる人が徐々に増えていき、たい肥化事業を実施するところまでこぎ着けることができました。

現在は実施中のたい肥化事業について、技術の有効性などの検証を行っているところです。今年9月からは1年間の予定でウガンダに滞在します。3度目となるこの滞在では、分別回収からたい肥化までのオペレーションを確立することが目標です。

資金や現地パートナーなど、課題は山積しています。
事業が思うように進まないときなどには、どうして自分がウガンダでゴミ処理や貧困という課題に取り組んでいるのかを見失いそうになってしまうことがあります。「なぜ?」と自問自答することが多いのですが、いつも、「初めて訪れたのがウガンダで、価値がないとされる廃棄物で人の命が奪われたという原体験をしたから」という答えにたどり尽きます。ウガンダは私にとって、原体験とも言える場所です。そこで見た景色や心に浮かんだ感情に立ち返ることで、前に向かって進むエネルギーを得ています。

神戸大学 治田さん

2026年3月8日に開催された、令和7年度スタートアップチャレンジ甲子園では、シニア部門にて最優秀賞“Best Innovation Award”を受賞した

神戸大学 治田さん

取材日:2026年6月22日
(取材・文 松本 守永)

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