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イベントレポート

【2019年2月28開催】『GET IN THE RING OSAKA』レポート

ベルリンでの世界大会出場を賭け、 スタートアップがリング上で繰り広げたピッチバトル

歓声が会場に響く中、日本から世界に飛躍する企業を選ぶ、熱い戦いの幕が上がる。

2012年、オランダで始まり、今や世界中に広がった、スタートアップ企業を出場対象とするピッチコンテスト『GET IN THE RING』。 2019年2月28日、今回OIHの主催として3回目となる日本大会には、午前から数時間かけて18組のスタートアップ企業が英語によるプレゼンの予選を実施。審査を経て6社のファイナリストが選定された。
ファイナリスト6社は、18時30分からの本選で、ライト級のセミファイナルバトル・ファイナルバトル、ミドル級のファイナルバトルに登壇。ボクシングさながらの白熱したピッチバトルは、華やかなショーのような盛り上がりを見せた。 会場となったのはグランフロント大阪北館・4Fのナレッジシアター。 青と赤に彩られたコーナーポスト、背景には巨大スクリーンを設置し、真ん中には円形状のリングが用意された会場には、およそ300名もの観客が集まり、スタートの時を待ちかねていた。
会場が満席になりつつある中、スタートの時刻になると同時にリングをライトが一層明るく照らしたかと思うと、今大会のリングマスターであるネイサン・ブライアン氏が壇上から颯爽と現れリングイン。 ブライアン氏の軽快かつウィットに富んだトークで観客はいっきにGET IN THE RINGの雰囲気に飲み込まれてゆく。 グローバルに活躍する実業家や大学教授など、豪華審査員も登場し、ブライアン氏の「Are you ready?」「Yeah!」というコール&レスポンスで、会場全体のボルテージが一層高まり、観客はこれから始まる世界大会への挑戦を賭けた熱いバトルの世界へ引き込まれている様子だった。

ライト級第一戦「Sagri inc.」 VS 「PLEN Robotics inc.」

会場にはピリッとした緊張感が走る中、第一戦に登場したのは、赤コーナーの「Sagri inc.」と、青コーナーの「PLEN Robotics inc.」
試合開始のゴングと共に、まずはSagri inc.が、農業に関する衛星データや土壌データなど、さまざまなビッグデータを駆使し、スマート農業を支援するシステムを使った事業モデルをアピール。 対するPLEN Robotics inc.は、サービス業界などの人材不足にも貢献する、自由にカスタマイズ可能な新機軸のコミュニケーションロボット「PLEN CUBE」について、熱く語った。 審査員からは、「どちらも、すばらしいシステム、事業モデルを持っている」との評価がある中で、次のテーマであるチーム構成について語るラウンドでは、どちらの企業も、世界各地のエンジニアと連携したグローバルチームを形成していることを熱弁。
その後も、これまでの実績や受賞歴の紹介、もうすでにビジネス提携がある等、ファイナルラウンドまで、両社一歩も譲らない。 農業を支援するスタートアップ「Sagri inc.」と、サービス業界を変えるスタートアップ「PLEN Robotics inc.」。 これからの日本が抱える人口減少問題や、世界的の高齢化社会問題の解決につながるバトルを受け、審査員の下したジャッジは…… 赤コーナー「Sagri inc.」がWinner! お互いのナイスファイトをたたえ合い、第一戦が終了した。

ライト級第二戦「Pegara inc.」 VS 「Primedge inc.」

続くセカンドバトルは、赤コーナーからは「Pegara inc.」、青コーナーは「Primedge inc.」が登場。教育・学習ジャンルにかかわる対決となった。
ファーストラウンドでは、赤コーナーのPegara inc.がディープラーニングを含む機械学習システムをクラウドで提供するサービス「GPU EATER」のコスト削減性の高さや簡易さを熱く語った。 一方、青コーナーのPrimedge inc.が猛アピールしたのは、PCや各種デバイス用のデジタル教材によってプログラミングやロボティクスなどのテクノロジーを学ぶコンテンツサービス「mahogo」。 ラウンドが進む中で、審査員が注目したのは、事業で実現し得る企業のビジョンだ。
“GPUのサービスで、世界を早く変えていく”というPegara inc.と“世界を変えていくには、未来を担う子ども達の教育から変えていく”というPrimedge inc.。 どちらにもあるのは、世の中にある問題を解決したい、世界を変えたいという熱い思いだ。 審査員も甲乙つけがたいピッチ内容に苦悩する様子も見られたが、リングマスターが読み上げたセカンドバトルの勝者は、青コーナーPrimedge inc.。 Primedge inc.は一戦目で勝者となったSagri inc.との決勝バトルにコマを進めることとなった。

ライト級の決勝は「Sagri inc.」 VS 「Primedge inc.」

いよいよ世界大会への出場権を賭けて、ファーストバトルの勝者「Sagri inc.」と、セカンドバトルの勝者「Primedge inc.」が激突。 農業支援と教育支援という、異なるジャンルの対決に、観覧者も前のめりに見入っていた。 ファイナルバトルでは、これまでのバトルでは伝えきれなかったことを、1分間フリースタイルでアピールするスタイルだ。
わずか1分間のピッチにすべてをかけ、Sagri inc.は「日本では、多くの農家で高齢化が進んでいます。世界に目を向ければ、25億の農家がいます。そして45億ドルもの価値がある市場です」と事業のマーケットの可能性をアピール。 対するPrimedge inc.は、「私はかつては自分のために働いてきました。しかし、今、未来のために働いています。次の世代のために働いています。皆さんはどちらために働きたいですか?」と観覧者や審査員へ問いかけた。 短いながらも、両者の想いも内容も詰まった濃いメッセージを受け、審査員はライト級の優勝者を決めるため協議に入る。
そしていよいよ結果発表の時・・・。 数旬の沈黙の後、リングマスター・ブライアン氏によって、手を高々と挙げられたのは、赤コーナーSagri inc.。 激戦のライト級ファイナルを制したSagri inc.は見事、世界大会への切符を手にした。

ミドル級決勝「Pinmicro inc.」 VS 「Phybbit Ltd.」

ライト級のファイナルバトルの興奮が覚めやらぬ中、ラストバトルとなったミドル級の戦いが始まった。ミドルに選ばれるのは50万ユーロ以上の企業価値があると認められたスタートアップのみ。 リング上に現れたのは、赤コーナー「Pinmicro inc.」と青コーナー「Phybbit Ltd.」。
どちらもこの一戦に勝利すれば、世界大会進出が決まるとあって、第一ラウンドから熱のこもった言葉が繰り出された。 先攻のPinmicro inc.は、建物の中でも活用することができるGPSを使った、さまざまなソリューションが提供できることをアピール。 対するPhybbit Ltd.は、AI技術と悪徳広告企業のブラックリストを活用し、世の中のアドフラウドによる被害を大幅軽減するサービス「SPIDER AF」を丁寧に説明した。
その後、チーム紹介、実績、ビジネスモデルと市場、財務と投資をテーマとした4つのラウンドで、それぞれの優位性を余すことなくぶつけてゆく。 そして最終ラウンドはそれぞれの想いをストレートにぶつけるフリースタイル。 Pinmicro inc.は、「私は2011年の東日本大震災の時、日本にいました。この時、災害を受けた人が今どこに居るか分からなないということにショックを受けました。そこで平和に役立つものをつくりたいとの想いから、このサービスをつくりだしたんです」とサービスにかける想いを熱っぽく語りかけた。
対するPhybbit Ltd.も「みなさんの企業では、毎年どれくらい広告費を使っていますか?その内どれくらいアドフラウドによって損害を受けているでしょう。ですから、社会を救うためにも、アドフラウドを撲滅しなければなりません」と猛追。審査員を悩ませる程の熱戦となった。 そしていよいよジャッジの時・・・ 会場もどちらが勝者か、期待が膨らむなか、リングマスターが高らかに読み上げた勝者の名は・・・ Phybbit Ltd.! 会場は大きな歓声と共に、拍手の音が響き渡った。

この大会は次の挑戦のスタート。 優勝者だけでなく参加したすべてのスタートアップの次のステップに期待。

バトル終了後は、今大会で優勝したライト級「Sagri inc.」と、ミドル級「Phybbit Ltd.」の表彰をはじめ、出場者、審査員、スタッフを含めた全員がリング前に集まり、「GET IN THE RING!」のかけ声と共に、記念撮影も行われた。
最後に、大会の主催者であるOIHを代表して、石飛 恵美が大会成功の挨拶と感謝の言葉を述べた。 「多くの皆さんに来場いただいたいたこと、そしてホストとして、本年で3回目を迎えられたことを光栄に思います。しかし、これはただ一回きりのイベントではありません。これは始まりなんです。これからみなさんの次の挑戦につながる道のりなのです。ありがとうございました」 これからもスタートアップ企業、イノベーター企業がさらに世界へと飛躍するための道筋をつくりたいとの思いを込めたメッセージと共に、イベントは終幕した。

(文:北川学)

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