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スタートアップで働く人

三原 健太郎 氏

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「企業は人が作る。」スタートアップが成長する過程において起業家は多くの仲間と出会い、共に長い道のりを歩みます。スタートアップで働く人は、どのような経緯で企業にジョインしたのでしょうか。

一人一人に焦点を当てるとそこには様々なご縁で繋がった、イキイキと輝きながら働く姿がありました。

日々プロダクトを進化させて、
安全なデータの利活用に貢献する

三原 健太郎 氏 / リサーチエンジニア

EAGLYS株式会社(2016年設立)
在籍年数 3年
https://www.eaglys.co.jp/
秘密計算技術を活用したセキュアコンピューティング・プラットフォームの研究開発、プライバシーデータや機密情報のデータ解析・AI活用技術の研究開発

秘密計算とAIで、安全なデータの利活用を支援する

2016年創業のEAGLYS株式会社(イーグリス)は、秘密計算を中心としたデータセキュリティ技術とAI設計技術によって、誰もが安全にデータを利活用できる社会の実現をめざしている。

自社製品の秘密計算ソフトウェア「DataArmor(データアーマー)シリーズ」は、データを暗号化したまま分析・共有することができるため、ユーザーはセキュリティと秘匿性を担保しながら自由なデータ連携・データ利活用に取り組むことができる。

EAGLYSは、特に秘密計算の領域において業界の先頭を行くプレーヤーであり、国内の大企業の研究部門より先行して製品化を進めてきた。

「当社では『準同型暗号』を中心に用いて秘密計算を行っています。従来の暗号方式では、暗号化されたデータを計算する際にいったん復号する必要がありましたが、準同型暗号なら暗号化したまま計算が可能になるというメリットがあります。
安全性が高く、利便性の高い準同型暗号の社会実装を進めるため、代表の今林は、研究者の方とともに政府に働き掛けも行っています。おそらく数年以内に、準同型暗号が一般的に使われるようになるでしょう。こうした“新しい社会のスタンダード”確立に向けた動きを行っている点も、EAGLYSの魅力だと思います」

そう期待を込めて語るのは、EAGLYSでリサーチエンジニアを務める三原健太郎氏。

現在「DataArmorシリーズ」の1つである「DataArmor Gate AI」の開発をメインで担当している。

これは、データだけでなくAIモデル自体も暗号化したまま、クラウド上での処理を可能にする「AI活用向け秘密計算ソフトウェア」だ。

たとえばクライアントが「AIを用いた画像判定をしたいが、個人情報保護の観点で画像をそのまま共有できない」という状況において、DataArmor Gate AIを活用すれば、画像を暗号化した状態でAI処理を実行、分析結果を暗号状態のまま取得できる。クライアントは、情報漏洩のリスクを抑えたまま目的のAI分析を行うことが可能になる。

すでにリリースはされているが、顧客の要望を聞きながら常にプロダクトは進化を続けている。三原氏も、リサーチエンジニアというポジションでありながら、営業に同行して顧客に導入のメリットや使い方を説明し、導入後のサポートを手掛けるなど、顧客とコミュニケーションを取りながら日々開発に励んでいる。

当初は、“就職するまでの修行”としてインターンでEAGLYSへ

三原氏は高校を卒業後、地元の熊本大学に進学し、物理を専攻した。

「本当は東京の大学に行きたいと考えていました。周りの友達が東京や大阪へ進学していった姿を見ると、羨ましく感じることもありました。いろいろと考える中で、留学という選択肢が浮かんできました」

三原氏は大学2年の時に1年間、イギリスへ留学。帰国後も海外で学ぶことへの強い思いがあり、大学卒業後はアメリカの大学院に進学した。

予定では、5年で物理分野の博士号を取得するつもりだったという三原氏。しかし、3年目を迎えた頃「物理よりも、プログラムを書くことの方が好きかもしれない」と気付く。

当時の心境について三原氏は「同期の中には優秀な人がたくさんいたので、これから彼らと肩を並べて、物理の研究一本でいくのは厳しいと感じました。一方、実験データの解析などもやっていたのですが、その分野では研究室内で結果が出ており、自分に合っているのではないかと考えるようになりました」と振り返る。

このような関心の変化もあり、三原氏は日本に帰国してIT企業への就職活動を開始。大手システム会社の内定を得たが、翌年の4月入社まで9カ月のまとまった時間を持て余すこととなった。

「せっかくなら、スタートアップで修行する期間にしよう」と情報収集をしていたところ、三原氏の友人が「2カ月間インターンを経験して、すごく勉強になったから」と紹介してくれたのがEAGLYSであった。

代表取締役社長の今林氏と

三原氏がインターンとして加わった当時のEAGLYSは、社員2~3名、インターン5名ほどの規模。まだまだ、“会社っぽくない組織”だったという。自ら勉強したり、インターン同士で互いに教え学び合うような大学の研究室のような雰囲気だった。

「まわりのメンバーと仕事をするのが楽しく、また、彼らに引っ張られるような感じで夢中で業務に取り組んでいました。土日もカフェで論文を読んだりプログラムを書いたり、夢中で勉強していました。」

三原氏が初めて取り組んだ案件は、化粧品のECサイトで利用するAIエンジンの開発。携わったのは全体の一部分であったが、時間をかけて作ったプログラムが採用されて組み込まれたとき、自分がプロジェクトに貢献できたと実感し、喜びが込み上げてきたという。

研究と実用化の両方に携われることが大きなやりがいに

やがて、社内で自社プロダクト開発の動きが高まっていく。インターンであった三原氏も「データベースを暗号化できる製品や、暗号化だけでなくデータの分析もできるサービスがあるといいのでは」というアイデア出しの段階から関わっていた。

インターン期間の終わりが迫る中、三原氏は代表の今林氏から「4月から正式に入社を検討してくれないか」とオファーを受ける。

「大企業とベンチャー、どちらを選ぶべきか?そもそも内定を辞退してもいいのか?とかなり悩んで、家族にも相談しました。決め手になったのは、開発を進めていたプロダクトを完成させ、リリースまで見届けたいという思いでした。
ここで辞めたら後悔するだろうし、いつか事業成長を遂げたEAGLYSの姿を見て、『自分も関わっておけばよかった』と思うのは嫌だな、と」

こうして三原氏はEAGLYSに入社し、現在も「DataArmorシリーズ」の開発に従事している。

ときには論文も読みながら研究を進めつつ、顧客のニーズや改善要望を汲み取って市場にフィットする製品に磨き上げていく。この、研究と実用化の両方に携われる点に、リサーチエンジニアとしてのやりがいを感じている。

「準同型暗号がどんなに便利でも、処理が遅ければお客様に使っていただくことはできません。そこで、メンバーと一緒に研究開発に取り組み、数百倍の速度での処理を実現し、特許の取得に励むなど地道に実績を積み上げてきました。
その結果、お客様の反応が変わり『これなら導入できる』と言っていただくことができ、うれしかったです」

これまで市場になかったサービスを作っているからこそ「ニーズの先を行き過ぎているのではないか」と不安になることもゼロではない。しかし「自分たちのプロダクトは、絶対にお客様の役に立つものだ」と信じて、開発を進めている。

三原氏は「研究だけをしていると行き詰ってしまうこともあります。けれど、『お客様のために』という目的があることが、日々のモチベーションになっています」と語る。

「やるべきだ」「やりたい」と思ったことを叶えられる環境

現在、EAGLYSは30名規模の組織になった。三原氏のインターン時代と比べると、組織は大きく成長し、部門の役割も明確に分かれ、企業としての形が整ってきている。

しかし、誰もがフラットに発言でき、いい意味で「サークルのように、同じ目的に向かいつつ、和気あいあいとした雰囲気で仕事ができる空気感」は今でも変わっていないという。

大企業の内定を辞退して、スタートアップで働くことを選んだ三原氏。実際に働いてみて3年が経った今、「スタートアップで働く魅力」をどのように捉えているのだろうか。

「まず、裁量権が大きくて、自分のやりたいことが実現できる環境であるのが大きな魅力だと思います。プロダクトをより良くするため『ここを改善したい』『こうしたことが出来たらいいのに』と思ったとき、「お客様のため、社会のためになるといった基準を満たしていれば、やっていい」という風土があります。

また、資金調達をして会社が大きくなっていく過程を見られるのもうれしいです。資金調達ができるということは、それだけ周りから期待されている証拠ですから」

自身の仕事が、事業成長に大きくインパクトを与えられる。そして、企業の成長過程を楽しみながら、自身のスキルや経験も磨いていくことができる。これらは、スタートアップで働くことで得られる、何にも代えがたいやりがいや喜びかもしれない。

インターン時代、自身に最初に指導をしてくれた、親切な先輩の教え方を真似ながら、現在は後輩を指導している三原氏。最後に、どんなキャリアビジョンを持っているのか尋ねてみた。

「今は、担当製品の『DataArmor Gate AI』を、どこまで良い製品に成長させられるかということにフォーカスして頑張りたいと思っています。まだお客様も少ないので、看板製品として、多くの企業に使っていただけるサービスに育て上げたいです。
個人のキャリアとしては、エンジニアの仕事が大好きなので、体力が続く限りはプログラムを書いていたいですが、いずれは経験を生かしてマネジメントを担う立場になれたらと思っています」

組織もプロダクトも未完成の状態だったEAGLYSに飛び込んだ三原氏は、これからも仲間とともに顧客の課題を解決し、新たな市場を切り開きながら、セキュアなデータの利活用を牽引してくれることだろう。

スタートアップへのイメージ

<Before>

  • ●ギラギラしていて派手なスーツを着ている
  • ●労働時間が長く、仕事がキツい
  • ●長く事業を続けられる安定性や保証が無い

<After>

  • ●技術者が多いこともあり、落ち着いた雰囲気
  • ●忙しい日もあるが、楽しいので苦じゃない
  • ●安定性は自分たちで作っていくもの

自社のイイトコロ

組織がフラットかつ柔らかい雰囲気で、経営層・社員・インターンなどの役職関係なく、自分の意見を伝えやすい環境です。代表の今林さんは、とても打ち解けやすく誰とでも仲良くなれる人なので、その人柄も社風に反映されていると思います。

スタートアップで働こうと考えている人へ

学生の方には、複数のスタートアップのインターンに参加することをおすすめします。僕も複数社のインターンを経験した上で、一番雰囲気が自分に合うEAGLYSを選びました。スタートアップには、大きな裁量権を持って、リスクテイクをしながらどんどん挑戦できる環境があります。ご自身のライフステージも鑑みた上で「今、新しい環境で挑戦したい」と思う方はぜひ一歩を踏み出してみてください。

スタートアップで働こうと考えてる人
スタートアップで働こうと考えてる人

2021年8月26日取材

(文:倉本 祐美加)

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