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起業家ライブラリ

鳥居本 敦士 氏

“感謝の気持ち”を可視化し、キャリアにつなげる

働く人の努力やホスピタリティ精神を、AI技術で評価。

鳥居本 敦士 氏

株式会社OTENTO(オテント)
代表取締役 / CEO
ウェブサイトhttps://otento.jp/
事業内容サービス業向けのHR Techサービス

電車で人に席を譲ったり、落ちているゴミを拾ったり…。私たちが行うちょっとした“いいこと”はお天道さまがちゃんと見ている。
そんな気持ちを社名に込めたという株式会社OTENTO(以下、OTENTO)は、主にサービス業で働く人たちの日々の努力を見える形にし、適正に評価される環境をつくっている会社だ。その方法とは?その先のめざす社会とは?代表の鳥居本敦士氏が熱く語った。

働く人、雇う人、お客様、みんなが幸せになる

例えば飲食店で気持ちのよい接客や行き届いたサービスに出会ったとき、「ありがとう」の気持ちを伝え足りていないと感じることはないでしょうか。私たちの事業は、そんな『感謝の気持ちを相手に贈り、それをデジタル技術で見える形にする』というものです。

従業員は、お客様から直接感謝の気持ちが届くことによってモチベーションを向上させ、賃金アップにもつながります。雇用主は人事評価を適正に行うことができ、従業員の定着率が上がることで、生産性や売上を上げることができます。お客様側もサービスのいい店舗を見つけやすくなります。このように見えにくかった感謝の気持ちを可視化することで、働く人も雇う人も、そしてサービスを受ける人も幸せにするのがOTENTOの事業です。

株式会社OTENTO

お客様は店頭POPに記載された二次元コードを読み取り、従業員に向けて感謝や賞賛、「スマートチップ」と呼ばれるチップを贈ります。従業員はそれをスマホの専用アプリで受け取ります。その情報はAIによる独自アルゴリズムによって解析され、その人の評価としてレポートにまとまります。雇用主は管理画面でその情報を日々確認し、人事評価やサービス改善につなげることができます。従業員にとってその情報は、日々の仕事の中で蓄積していく第三者からの評価であり、“自分の強み”を知るきっかけにもなります。

2023年2月よりマーケティング期間を終え有償化して本格始動。現在(2023年8月)は、サービス業を中心にトライアル加盟店1500店舗/有料加盟店75店舗に加盟いただいています。

積み重ねてきた努力が未来につながる社会をつくりたい

近年は日本でも、転職時にリファレンスチェックシート(推薦状)の提出を求める企業が増えてきました。私たちはOTENTOによってお客様から受け取った感謝や賞賛のレポートを、第三者による客観的なリファレンスとして活用し、キャリアアップに活かすことを考えています。

株式会社OTENTO

例えば居酒屋チェーンでアルバイトをしていたAさんが、OTENTOでお客様から全国一位の評価を得る。Aさんはそのレポートを活かして、希望していた企業に転職できるというような方法です。

大学生にアンケートを取ると、約80%の人が「自分には誇らしいキャリアが何もない」と答え、さらに「学生時代に力を入れていたことは何か」という質問には、ほとんどの人が「アルバイト」と答えるそうです。しかしアルバイトでの努力を証明するものは何もありません。

OTENTOでは履歴書や資格、学歴などでは測れないその人の努力、ホスピタリティ精神などを可視化します。今、目の前にいるお客様に喜んでいただくために積み重ねてきた努力が未来を切り拓く、その人の輝いている部分を見える形にして次のステップに活かすことができる、そんな社会をめざしています。

OTENTOのリファレンスが社会的効力を発揮するためには、私たちの事業に対する信用が必要です。そのための一つの手段が株式上場です。私たちは2027年の12月までの上場をめざして活動しています。またチップ文化の定着している海外にこそ、この事業を拡げていきたいと考えています。

「正義」や「モラル」という普遍的なものを最新の技術で可視化する

私は大学に進学せず、高校を卒業して工場に勤めました。その後、人材サービス会社に転職をしたのですが、その時の集団面接で、他の人が学歴やスポーツ実績、前職での営業成績などの輝かしい経歴を語る中、私には語れる実績がありませんでした。

けれど私は、例えば電車で座席が必要な方を見かけると必ず席を譲りますし、ゴミ拾いも進んでします。前職の仲間からはとても信頼されていたという自信もありました。ただそれを証明できるものは何もない。その時から、社会生活において大切な正義やモラル、人間性というものをキャリアに結びつけることができないかと考え始めたのです。

人は学歴やスポーツ実績、営業成績だけで測れるものではません。例えば目の前の人に優しく接したこと、相手に素直にありがとうと言えたことなど、日々の小さな“いいこと”だって確実にその人の人間性を表しているはず。なのにそれを評価できるものが何もない。それならつくろうというのが、OTENTOの始まりです。

株式会社OTENTO

2023年開催「第10回京信・地域の起業家アワード」では優秀賞を受賞した

OTENTOの事業やめざす社会を人に説明することが難しいと感じることもあります。しかしここまでに至った理由は、私たちの語る夢に「それ、いいじゃない」と賛同してくださる方がいて、応援してくださったからというほかなりません。いつの時代も変わらない「人として大切なこと」が正しく評価される社会をめざし、最新の技術を使って現代に合わせた形で社会実装していく。OTENTOはこれからも前を向いて歩んでいきます。

OIHをこんなふうに活用しました!

2022年、OIHアクセラレーションプログラム「OSAP」の第14期採択企業としてプログラムに参加しました。情熱的で頼れる二人のメンターと出会い、アイデアを整理し、ピッチ資料の作成を支援いただきました。いよいよ完成に差し掛かった時、「鳥居本さんらしさが資料に出しきれていない」と正直に言ってくれたことで、もう一度資料を練り直し、最終的に納得がいくものをつくることができました。悩んだ時に支えていただいたり、自分の強みに気づかせていただいたりと、本当に充実した4ヶ月でした!

株式会社OTENTO

取材日:2023年8月30日
(取材・文 岩村 彩)

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