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起業家ライブラリ

増田 浩和 氏

睡眠中に翌日の健康状態をAIが推定、介護や医療、健康維持に活用

個別のバイタル情報をAI分析し、その日の運動・認知能力を推定する

増田 浩和 氏

Rehabilitation3.0株式会社(リハビリテーション3.0)
代表取締役
ウェブサイトhttps://rehabilitation3.jp/
事業内容ヘルスケアに特化したAI(人工知能)の研究開発、販売

睡眠中の心臓や肺の動きをモニタリングし、その情報をもとに翌日の健康状態を、AI(人工知能)によって推定。それを医療や介護の現場をはじめとするヘルスケア分野、さらには他の産業分野にも広く活用し、健康維持やパフォーマンスの向上につなげるのがRehabilitation3.0株式会社(以下、Rehabilitation3.0)のサービスだ。『AIの力で健康な未来を世界の人に届けたい』と語る代表の増田浩和氏にお話を伺った。

体調変化を発見・予測し、健康改善につなげる

リハビリテーションという言葉の語源は、「その人が再びその人らしい状態に戻る」ということ。私たちのサービスは、AI技術で一人一人の“その日の状態”を分析し、それを介護や医療、健康増進に活かして「その人らしさを取りもどす、また維持する」ことを目的とするものです。

具体的には、睡眠中のバイタル(心拍数・呼吸数・体動)を測定し、そのデータによって、歩行、食事などの13項目の運動能力と、記憶力、判断力などの5項目の認知能力を各3段階で推定します。それにより、翌朝その人がどんな場面でどんな見守りや介助が必要か、さらには認知症の傾向などを知ることができます。

Rehabilitation3.0株式会社

過去のデータを基にした運動能力・認知能力の推定値の正解率は85%以上です。これは、10年以上の経験を有するセラピストとほぼ同等の評価と言えます。このデータの蓄積によって、一人一人に合わせた120万通りの健康リスクの推定、運動プログラムの提案ができます。

体調変化を発見し、体調不良を予測し、健康改善策を提案するという私たちのサービスは、介護現場だけでなく、様々な場面で必要とされると確信し、2024年4月にサービスの本格的なローンチをめざし、現在準備を進めています。

高齢者の体調の“予測”が、介護職の適切な人員配置にも

例えば85歳以上の高齢者の方々のデータを見てみると、およそ20%の人に、日ごとの体調の“揺れ”があることが分かっています。私たちの技術は、この“揺れ”によって、その日に誰がどんな行動を起こしやすいのかを予測し、事故などを未然に防ぐことができます。

具体的には、介護現場において「今日○○さんはベッド周辺で転倒する可能性がある」、「△△さんは歩行時につまずく可能性がある」などの危険を予測して、見守りや介助を適切に行うことができます。結果的に「今日は誰を特に注意して見守る必要があるのか」が分かり、それは施設利用者の安全だけでなく、介護職者の適切な人員配置や労働環境の向上につながります。

Rehabilitation3.0株式会社

少子高齢化が進む日本では、介護職者やセラピストの人手不足は喫緊の課題です。そんな中で、本人も自覚、また言語化できない体調変化をテクノロジーの力で可視化し、必要なところにきちんと人が寄り添えるようにするのが、私たちのサービスです。これまで開発されてきた介護ロボットや見守りセンサーなどがカバーしきれなかったところを、カバーできる技術だと考えています。

さらにデバイスフリーであることも、私たちのサービスの強みです。既存のセンサーマットやスマートウォッチ、見守りセンサーなど、ほとんどのデバイスに対応しているので、新たに用意する必要がありません。

今後10年以内に、世界30か国以上の国や地域が、各国の人口の21%が65歳以上を占める「超高齢社会」になると予測されており、私たちのサービスは、世界中にニーズがあると考えています。

人々の健康を支えるバックシステムとして

私の作業療法士としてのスタートは、総合病院でした。外来、病棟、そして訪問と、さまざまなリハビリテーションの現場を経験する中で、医療介護現場におけるICT技術の必要性を実感しました。従来の紙のカルテを電子カルテに変えるだけで、書き写しによる手間やエラーが減り、内容を共有しやすくなり、結果として患者さんと関わる時間が増えるという大きなメリットがあるのです。

その後病院を退職し、最初に起業した訪問リハビリテーションの会社では、積極的にDX化を進めました。この実践をさらに発展させ、AIを取り入れた技術を現場に活かしたいと立ち上げたのがRehabilitation3.0です。

この技術は医療介護現場だけでなく、様々な分野の産業データと弊社の持つ健康データを組み合わせて活用できるのではないかと考えています。

タクシーやバスなど交通系の会社のデータと組み合わせれば、事故の防止やドライバーの健康増進につなげることができます。他にも子どもの体調変化の予測、スポーツ選手の体調管理、働き世代の健康維持や運動の提案など、活用できる場面は無限大です。

Rehabilitation3.0株式会社

今後は、あらゆる人たちの健康な暮らしを支えるバックシステムとなるよう、いろいろな企業と連携して社会に広めていきたい。そして「世界中の人たちを健康で幸せにしたい」という初心を忘れずに、歩んでいきたいと考えています。

OIHをこんなふうに活用しました!

2020年、ヘルスケア分野の技術活用に特化したアクセラレーションプログラム「大阪市立大学(現・大阪公立大学)ヘルスケアスタートアップス」の第1期に参加。さらに2021年には「OIHスタートアップアクセラレーションプログラム(OSAP)」では第11期企業に採択いただきました。どちらのプログラムでも人脈が広がり、そこで出会った方々には今でもメンターや顧問としてお世話になっています。

Rehabilitation3.0株式会社

取材日:2023年12月05日
(取材・文 岩村 彩)

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