fbpx
JP | EN

起業家ライブラリ

大西 洋 氏

AI(人工知能)の力で製造現場の労働力不足を解消

「はやい・やすい・巧い」を実現。検品・検査に特化したAIソリューション

大西 洋 氏

株式会社フツパー
代表取締役兼CEO
ウェブサイトhttps://hutzper.com
事業内容製造業向けAIサービスの提供

『最新テクノロジーを確かな労働力に』をミッションに掲げ、主に中小企業の製造現場に向けたAIソリューションを提供する株式会社フツパー(以下、フツパー)。社名の由来となった言葉“Hutzpah(読み:フツパー)”はヘブライ語で“大胆にかつ慎重に物事をやり抜くこと”を表すという。起業を夢見て、滞在したイスラエルで出会ったその言葉の精神をいつまでも忘れずにいたい、と語る代表取締役兼CEOの大西洋氏にお話を伺った。

AIが画像や振動を認識し、製品の不良や機械の異常を見つける

人手不足に悩む製造現場のなかでも、特に検品・検査の工程は目視だけでなく、音や振動など、職人の経験や感覚に頼るしかなく、中小企業は人材の確保に苦労しています。私たちのサービスは、これまで人が行っていたその工程を、AIに画像や振動を認識・学習させることによって自動化するというものです。

クライアントのニーズに早急に対応し、導入費用を抑えながらも、現場で即戦力となる機器を提供するという、「はやい・やすい・巧い」の3拍子が揃ったAIを開発しています。

株式会社フツパー

メインのサービスは二つ。一つは、カメラで撮影した画像をAIが自動で判別し、不良品を検出する『メキキバイト』というもの。これまで人が目視で行ってきた外観検査をAIが行うことで、見落としや基準のばらつきのない安定的で高精度な検品が可能です。

もう一つの『振動大臣』は、センサーを使って主に切削加工の工作機械の振動を感知し、異常を検出するものです。刃物の摩耗や破損、機械の不具合をAIが検出し、異常時に機械に停止信号を送ります。これまで職人の「勘」に頼っていたものを可視化することで、工員の負担軽減だけでなく、品質向上、夜間の無人運転、また蓄積データの活用につなげます。

さらに応用したものとして、現場の作業員をカメラで撮影して行動分析し、人員配置の見直しや省人化、動線の最適化につなげるという実証実験も行っています。現在、本格的なサービス開始に向けて、さらなる開発を進めているところです。

月額制サービスで初期費用を抑え、中小企業にも導入しやすく

今後、日本ではますます少子高齢化が進み、労働人口はさらに減少します。一方で日本はGDPの2割が製造業という世界に誇るものづくりの国で、そのほとんどが中小企業。慢性的な人手不足という現状があります。

日本の産業を支える中小製造業の技術力が労働力の問題によって失われていくのはもったいない。そこをAI技術で解決しようというのが私たちの使命です。

中小製造業にとってAIの導入は大きな投資です。そのハードルが少しでも低くなるように、商品はすべて月額制。そうすることで初期費用が抑えられ、安心して使い始めることができます。実際に私たちのサービスを取り入れていただいた企業様のほとんどから、検査精度が高く、費用対効果も高いと高評価をいただいています。

現在、海外市場においてもニーズ調査を行っています。2023年には、タイでの展示会に2回出展し、手応えを感じました。今後はさらに積極的に展開していきたいです。

株式会社フツパー

一つひとつの現場に合わせてチームを組み、独自のシステムを構築

フツパーは、私と黒瀬康太(取締役兼COO)、弓場一輝(取締役兼CTO)と、3人の仲間で創業したスタートアップです。同じ大学で工学を学び、特に黒瀬とは学生時代から、ビジネスのアイデアを出し合っては起業の夢を語り合っていました。卒業後はそれぞれが就職や研究の道に進んだものの、定期的に情報交換をしたり、ビジネスの可能性を探ったりすることを続けていました。

私は半導体や回路部材などをつくるメーカーに就職し、視察や研修で国内外の製造現場を訪ねることが多くありました。そこで現場の労働力不足やシステム化の難しさを肌で感じたことが、フツパーの原点とも言えます。

その後、転職をしたり、起業大国であるイスラエルに滞在しながら現地のスタートアップを訪ねたり、VCの集まるイベントに参加したりと模索を続けながら、起業への思いはより強くなっていきました。

そんな時に見えてきたのが、『地方の中小製造業の現場に、AIソリューションを届ける』というビジョン。中小製造業にAI技術を浸透させることによって、日本のものづくりの現場を支えたいという思いでした。

現在の社員は45名。一人一人がミッションを持ち、それぞれのスキルを活かして働いています。AI系スタートアップのほとんどが首都圏に拠点を持つ中で、私たちの会社はものづくりの街・大阪を拠点に活動しており、その中でも製造現場の検品・検査に特化したAIの開発を行っています。

チームを組み、現場の声を聞きながら独自のシステムを構築し、設置まで行います。これがフツパーの強みであり、私たちは唯一無二の会社だと自負しています。これからも社名の通り「大胆にかつ慎重に」、お客様の困りごとの本当の力となるようなソリューションを生み出してしていきたいと考えています。

OIHをこんなふうに活用しました!

OIHには起業前から通い、ピッチイベントやVCの情報を集めていました。2021年には大阪府主催の“第14回ビジネスプランコンテスト「ドリーム DASH !」”で優勝したことがきっかけで、「うめきたピッチ」に登壇。2023年にはシンガポールでの東南アジア最大級のイノベーションに関する展示会「SWITCH 2023」に大阪の注目のスタートアップとしてパネル出展するなど、本当に多くの機会をいただいています。

株式会社フツパー

2023年10月末に開催された「SWITCH 2023」のパネル出展の様子

取材日:2023年12月15日
(取材・文 岩村 彩)

一覧ページへ戻る

BACK