WEB上で一般公開されているデータを収集・構造化する技術で特許を取得する株式会社XAION DATA(以下、XAION DATA)。代表の佐藤泰秀氏は、自らのミッションについて、技術の力で人の持つ価値を最大化できる環境をつくることだと語る。2020年の創業から急成長する同社の信念と、そこに行き着いた佐藤氏のこれまでの歩み、これからの展望を伺った。
2つのプロダクトを軸に企業の人事・営業領域の課題にアプローチ
データの収集・構造化とは、分かりやすく言うと「散らばって存在するデータを集め、使いやすい形に整えること」です。私たちは、この技術で特許を取得し、人事・営業領域におけるさまざまな課題解決を支援しています。
軸として持っているのが、2つのプロダクト事業。1つはSNSやオープンメディアから人材・企業情報を集め、企業の採用課題を支援する次世代型AI採用プラットフォーム『AUTOHUNT(オートハント)』、もう1つは企業が出すニュースなど、オープンメディアに掲載された情報を集めて営業活動に活かすクラウドソフトウェアサービス『AUTOBOOST(オートブースト)』です。
労働人口が減少し続ける今、多くの企業が採用に関する課題を抱えています。一方で、採用手法は従来のまま変わらないという企業がほとんど。その課題にアプローチするのが『AUTOHUNT』です。WEB上の人材情報や企業情報を独自の技術で構造化し、その膨大な情報から理想的な人材を検索できるプラットフォームで、約800万人の人物データベースから採用候補者を探すことができます。
営業支援サービス『AUTOBOOST』も、基本的な仕組みは同じで、企業が公開しているオープンデータを収集して統合することで、ターゲット顧客のキーパーソンにアプローチするというサービスです。営業活動をより効率化し、優良な商談へと導きます。他にも、ニーズに沿ったデータの供給、個別のAIモデルの開発など、顧客に合わせたソリューションを提供しています。
「あなたには素晴らしい価値がある」フィンランドで出会った言葉が原動力に
私が会社を立ち上げた背景には、2つの国で過ごした経験が大きく影響しています。
学生時代に留学していたフィンランドでは、1人ひとりの自己肯定感を育てることに教育の重点が置かれていました。教員は個々の学生の得手・不得手を理解し、苦手なことを克服させるよりも、その人の好きなこと、得意なことを伸ばそうとしていました。その姿に感銘を受けたのです。
――あなたにはこんな素晴らしい価値がある――そんな救いの声と、その価値が最大限に発揮できる環境があれば、誰もがより幸せに生きられるのではないか。当時の私は漠然とそのように考えました。
その後、大手企業にエンジニアとして就職。技術を通して世の中を良くしたいという想いを持って仕事をしながらも、次第に“自分がつくったものがこの社会にどんな価値を提供できているのだろう?”と、疑問を感じるようになりました。
そんな中で、社内のグローバルリーダー育成プログラムの一員として、アメリカのシリコンバレーに派遣され、そこでまた大きな刺激を受けたのです。ITの最先端と言われる地域で、超優秀なエンジニアたちがGAFAのような大手グローバル企業から独立して会社を立ち上げ、直接マーケットに対して価値提供しようとしている。会社に依存せずに自分の力で戦っている人たちを見て、大いに触発されました。
自分も技術を通して社会に価値を届け、マーケットと直接対峙したいそんな想いが膨らみ、当時一緒に働いていたメンバーたちにも背中を押されて、独立を決意。その後、アメリカのスタートアップで事業開発や資金調達などの業務に携わったり、日本の子会社設立を経験するなど、国内外でビジネスの知見を身に付けた。2020年、アメリカで一緒に働いていた石崎(現・取締役CTO)とともにXAION DATAを立ち上げました。
フィンランドとアメリカ、2つの国で学びや仕事を経験して感じたことは、日本人の自己肯定感の低さです。得意分野やキャリアなど、自分の価値を積極的にアピールする欧米の人たちに対し、日本人は自己アピールが苦手。とてももったいないことだと感じています。
私たちがまず、採用の領域から事業をスタートさせたのは、『技術の力によってマッチングを最適化することで、それぞれの人が持つ価値が認められ、最大限に発揮できる環境をつくりたい』という想いからなのです。
「新しさと実用性」 両方をきちんと備えた事業をつくる
現在、『人の価値の最大化』という文脈の中で、2つのプロダクト事業を軸に、個々の企業のニーズに合わせた形での事業を広げています。
人事領域では採用支援だけでなく、個々の企業に合わせた人材活用支援も行っています。例えば職務経歴書や履歴書など、紙ベースで保管されているものをデータ化し、適性検査や人事評価データなどと統合して使いやすい状態に整えることで、人材配置や採用戦略に役立てることができます。
営業領域では、日々発生する雑務作業をAIによって自動化させることで、顧客とのコミュニケーションなど、人が行ってこそ意味がある業務に注力できる環境をつくります。
苦手なことを無理に強いたり、無駄な雑務を課したりせず、1人ひとりが自分に合った仕事、その人が行うことに意味のある仕事に取り組める環境があれば、誰もがいきいきと働くことができる。AIと人間の境界が曖昧になっている今こそ、人が人であることの意味や価値を技術の力で引き出したいと考えています。
さらには、今後のグローバル展開を見据え、収集データの対象をグローバルデータに広げたり、グローバル規模での競合比較を行ったりもしています。実際にアメリカの企業では、私たちのプロダクトを使っていただき、成果を上げています。
現在、社員数は約60名。企業理念として大切にしているのは“New, but Practical”。『目新しいだけでなく、きちんと実用性のあるものをつくる』という言葉です。他の企業にはできないことでありながら、お客様に喜ばれる価値あるものを提供しようというのが私たちの信念です。
もう1つ大切にしているのが、『人としての誠実性』。お客様にきちんと向き合ってそのニーズを満たすよう努力すること、また自分としっかり向き合って常に成長しようと努力すること。
この理念を軸に据えながら、全ての人がいきいきと輝ける社会をめざして、事業をさらに展開していきたいと考えています。
OIHをこんなふうに活用しました!
京都で行われたスタートアップ国際カンファレンス「IVS 2025」で、OIHのブースを訪れたことをきっかけに「Tech Osaka Summit 2025」に参加。ピッチコンテスト「Tech Osaka Award 2025」にて優秀賞をいただきました。OIHはこれから関西に事業を展開していくための心強い存在になりそうだと期待を寄せています。
「Tech Osaka Award 2025」には、CFOの金谷氏が登壇した
取材日:2025年10月30日(木)
(取材・文 岩村 彩)


