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eWell 訪問看護支援システム開発 カルテ電子化で人手不足を解決

毎月第2、4金曜日の朝7時から、ベンチャー企業と大企業の事業提携や資金調達を目的とした早朝のプレゼンテーションイベント「Morning Meet Up(モーニングミートアップ)」がOIHで開催されている。 毎回テーマを設けて業界外観の説明とベンチャー企業によるプレゼンが行われており、2013年の開始から延べ300社を超える企業が登壇し、大きなニュースや事業につながる可能性を秘めたさまざまな提携事例も生まれている。 今回は2018年2月23日に実施した「ヘルスケア」で登壇した注目ベンチャーを紹介する。

異業種参入で新風

 超高齢社会を背景に、医療・介護・健康からなるヘルスケア市場は右肩上がりに成長している。その規模は国内だけで50兆円と言われ、大小さまざまな企業が参入。16年には、この分野で社会的課題の解決に挑戦する優れた団体・企業等を表彰するビジネスコンテストを経済産業省が主催するなど、市場の盛り上がりは勢いを増している。

 近年のトレンドは、「臨床とテクノロジーの融合」「異業種・異分野のコラボ」の2点だ。

 例えば、研究機関や大学、医療機関がテクノロジーを取り入れることで、エビデンスの獲得や実証実験、治療の効率化などの取り組みが活発化している。

 また、ヘルスケア領域の企業が弁護士法人、医療情報サイト、フィンテックベンチャーなど異業種・異分野のプレイヤーとコラボレーションすることで、新サービスを生み出している。一見、全く関係がなさそうな企業が、市場に新たな風を吹き込んでいる。

初期投資は不要

 訪問看護の記録管理システムを手掛けるeWeLL(イーウェル=大阪市中央区、中野剛人代表)は、業界に一石を投じるベンチャーの一つだ。

 政府は増大する社会保障費を抑制するため、高齢者医療の中心を病院から在宅にする方針で、受け皿となる「地域包括ケアシステムの構築」をめざしている。訪問看護師は、その担い手として期待されている。

 ただ12年からの5年間で訪問看護ステーションの数は1.6倍に増えたが、慢性的な人手不足に加えて、小規模ステーションは財政基盤が弱く経営が立ち行かないなど、現状では課題も多い。

 そんな訪問看護師を支援するために同社が開発したシステムが「iBow(アイボウ)」だ。これまで紙で共有していた患者のカルテを電子化し、タブレット端末でどこからでも安全にアクセスできる機能を備え、手書きだった看護記録をタブレットで簡単に登録できるようにした。これにより看護師1人が患者1人を訪問する時間を約28%短縮することに成功した。

 この時短効果で、訪問できる患者数が増加。慢性的な人手不足の解決に一役買っている。

 また、看護記録を入力すれば保険請求データまで自動生成され、煩わしい事務作業も軽減できる。初期投資は不要。月額基本料1万8000円に加え、訪問1件あたり100円が課金される。小規模事業者でも取り入れやすく、既に全国約390事業所で3600人の訪問看護師に利用されている。
 
 3月からは、これまで蓄積した約170万件の医療データを人工知能(AI)が学習し、看護師が在宅患者を訪問する際に作成する「訪問看護計画書」を自動生成できるシステムの稼働が始まった。通常は早くても30分前後を要する作成時間が、数秒で済むという。さらなる時短で、超高齢社会の日本を支えようとしている。


 ヘルスケア分野のテック系ベンチャーのプレゼンでは他に、クラウド上で安全に医療画像を共有して医師の経験や知識の共有ができるサービス「e-casebook」を運営するハート・オーガナイゼーション(大阪市西淀川区、菅原俊子代表)、腰痛対策アプリ「ポケットセラピスト」を運営するバックテック(京都市下京区、福谷直人代表)難聴者をサポートする対話支援機器「comuoon(コミューン)」を開発・販売するユニバーサル・サウンドデザイン(東京都港区、中石真一路代表)の3社が登壇した。

文:デロイトトーマツベンチャーサポート 井村仁香
※本文は2018年3月12日付け フジサンケイビジネスアイ「ニュースの卵」に掲載された内容です。記事の無断使用・転載を禁止します。

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