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起業家ライブラリ

和田 貴充 氏

新たなビジネスモデルで空き家問題の解決に挑戦!存在価値を発揮するパブリックカンパニーへ

和田 貴充 氏

代表取締役 CEO
会社名空き家活用株式会社
ウェブサイトhttps://aki-katsu.co.jp
事業内容日本全国の空き家・空き地活用に関わる 情報発信・調査・提案をはじめ総合プロデュース

深刻化する空き家増加に正面から向き合い、より深く問題解決に切り込んでいくために

少子高齢化、人口減少とならび、深刻な社会問題となっている「空き家問題」。総務省「住宅・土地統計調査」によれば、2018年の全国の空き家数は849万戸。30年前の394万戸から倍以上も増えており、空き家率も年々上昇を続けている。

この大きな社会問題を解決すべく、2018年、空き家活用データシステム「AKIDAS(アキダス)」をスタートさせた、空き家活用株式会社。全国に眠っている空き家・空き地すべてをデータベース化し、「AKIDAS」を通して不動産事業者に情報提供を行う画期的な取り組みとして注目を集め、現在16万件を超えるデータを蓄積している。

さらに、2021年10月にはCI(コーポレート・アイデンティティ)をリニューアルし、企業イメージを一新。事業内容も空き家のデータベース化に加え、空き家所有者へのコンサルティングや地方自治体との連携などサービス内容を発展させ、空き家の掘り起こしから流通、活用まで一気通貫のプラットフォームを立ち上げ、問題解決に向けてより深く、大きく切り込もうとしている。

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「空き家問題を解決するプロセスにおいて、実態を掘り起こしデータベース化するフェーズを“集める”とするなら、これから挑戦するのは“動かす”“決める”という次なるフェーズです。情報提供だけでは問題解決には不十分だった弊社の取り組みを前進させ、より実現力の高いサービスへと展開します。今回のCIリニューアルはそのための組織改革の表現であり、空き屋問題を解決に導くという世の中に対する私たちの意思表示でもあるのです」と、代表取締役CEOの和田氏は言う。

持続可能な社会をめざすSDGsへの取り組みが進むなか、地方創生の観点からも必要不可欠となった空き家の利活用。和田氏のもとには新たな活動に大きな期待を寄せる所有者や事業者、地方自治体からの問い合わせが激増し、現在、日本全国を飛び回る多忙な日々を送っている。

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「ないのだったら自分でやろう!」それが新たな挑戦に向けた大きなチカラになる

実は、和田氏が起業した会社は、空き家活用株式会社が初めてではない。20歳のとき、亡き父の会社を継ぐことになった和田氏だが、事業についても経営についても何の知識も経験もなかった当時、4年ほどで廃業を余儀なくされ、家族を養うために不動産業界に飛び込んだそう。

「もともと人と話をするのが好きでしたし、営業という仕事は自分に向いていると思いましたね。私の父も非常に世話好き、話し好きで、商売は上手ではありませんでしたが、たくさんの方から慕われるような人でした。だから私も、人に喜んでもらえるような仕事をしようと、無我夢中で頑張りました」

そして、34歳になった2010年、「販売数やノルマではなく、お客様を第一に考えお客様にとってのベストプラクティスを提案したい」という想いで、株式会社オールピースを創業。市場に流通していない空き家に着目し、所有者に直接交渉して販売、買取に結びつけていくビジネスモデルを構築し、着実に実績と信用を獲得していった。

そんな和田氏に、大きな転機が訪れる。それが、かつて炭鉱の街として栄えた長崎県端島、通称“軍艦島”との出会いだ。日本初のRC造住宅がつくられた最先端の街が、廃坑と共に人が去り、今や巨大な廃墟の街になっている。ここに経営者勉強会のツアーで訪れたとき、ある経営者仲間に「君たち不動産業界が、軍艦島を日本中に作ろうとしている、その自覚はあるか?」と問われたという。

「言葉を失うほどの衝撃だった」と話す和田氏は、その後、日本の空き屋問題について調べ直し、その深刻さに直面。対策が必要だと叫ばれていても、積極的に取り組む会社がほとんどないことに気づく。

「ないのだったら、自分がやろう!未来の日本を軍艦島にしたくない!」

一念発起した和田氏は、日本の空き家問題という大きな社会課題の解決に正面から向き合っていくことになり、その想いが空き家活用株式会社の誕生へとつながっていく。そして、その根底には、20歳のときに志した「人に喜ばれる仕事」への変わらぬ決意があった。

空き家の所有者と利活用者を、人と街を、現在と未来を、「つなぐ」存在として

2021年にCIをリニューアルし事業や組織の再編を図ったのも、「人に喜ばれる仕事」を追求し続けるからに他ならない。
2018年から約4年間、空き家のデータベース化という画期的な取り組みを通して目の当たりにしたのは、情報を“集め”、提供しても、それ以降のフェーズである“動かす”“決める”につながっていかないという現実だったという。

「その最大の要因は、空き家問題は家屋というモノではなく、実はヒトの問題だということです。空き家の所有者の方が、家屋をどうするのか意思表示をしなければ次に進まないのですが、そのためには家財の片付けの問題、親族間の人間関係の問題、関わる業者への不信感、そして、長年暮らしてきた家屋への思い入れなど、さまざまな心の問題と向き合う必要がある。いわば対人のコンサルティングであり、従来の不動産売買の枠で解決できないことだと気づいたのです」

だからこそ、和田氏は自らの事業領域を広げ、“動かす”“決める”のフェーズに積極的に関わっていくことを決心。世界共通のつなぐ記号である“ハイフン”をモチーフにし、“窓”をイメージした横長の長方形をロゴマークにすえ、空き家の所有者と利活用者をつなぎ、人と街をつなぎ、現在と未来をつないでいく――問題解決に向け、“つなぐ存在”をめざすことを世間に向けて表明した。

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それと同時に、組織改革にも着手。「社長の会社から、みんなの会社へ」という和田氏の言葉が表すように、一人ひとりが当事者として自らの役割と責任を果たす組織をめざし、最終的には社会に必要とされるパブリックカンパニーになるという決意が込められている。何かが大きく変わろうとするときには、何かしら軋轢はつきものだ。今回のCIに際しても、「今までのやり方ではダメだ。じゃあどうするか」という議論のなかで、メンバーからはさまざまな不満や厳しい意見も飛び出したという。

「それらを不満と捉えるのではなく、自分のこととして真剣に考えてくれているんだと嬉しくなりましたね。だから、もっとやれやれ!と(笑)。そしてメンバーの不満がドカンと噴火したときに、本腰を入れて組織の在り方やコミュニケーションを考え直すことができた。新たに完成したロゴマークや経営理念、ミッションバリューは、メンバーみんなの集大成なんです」と、和田氏は笑顔を見せる。

100年後も200年後も、人に喜ばれ社会に必要とされるパブリックカンパニーをめざす

しかしながら、新たな挑戦には、これまでにないリスクや問題も山積みだ。情報を集めるだけに留まらず、所有者一人ひとりと対話し想いに寄り添いながら個々の課題を解決していくには、膨大な労力とコミュニケーションスキルが求められ、より幅広い知識と視野も必要となるだろう。

だが、そうした状況を「大変だけど愉しんでいる」と和田氏は言う。

「不安はないけど、乗り越えるべき課題は山ほどある。今月乗り越えても、来月にまた新しい課題が立ちふさがるといった感じで、ずっと階段を昇り続けていくイメージです。本当に大変でしんどいけれど、それを乗り越えたときに新たな世界が見えてくる。今しんどいと思うことを、来年になれば余裕で超えていけるし、今日の苦労は必ず笑い話になる。そしてふと振り向いたときに、えらく高いところまで来たんだなと感じられる。だからこそ愉しめるし、さらに大きな課題を乗り越えるための力が湧いてくるんです」

そんな和田氏は、事業のほかにもYouTubeでの動画配信や芸人・タレントのコラボなど、空き家活用に向けた情報発信と啓蒙活動も開始。そのなかでより多くの所有者と利活用者をつなぐのはもちろん、潜在的な空き家ニーズの掘り起こしにもつなげていこうとしている。

「OIHを知って、その時の自分に合ったプログラムやピッチコンテストに参加する中で投資家やビジネスチャンスにつなげていただけたように、空き家所有者や利活用者のみなさんをつなぐ役割として、社会に貢献できれば嬉しいですね」と和田氏は言う。

現在、日本の住宅戸数6,240万戸のうち空き家数は849万戸。さらに、そのうちの349万戸は市場にも出ない未流通の物件で、所有者は相談する手段もわからず課題解決を待っている。空き家活用株式会社はそんな切なる想いに正面から応えるため、日本国内はもとより世界を視野に、大きな社会問題へと挑んでいく。

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「パブリックカンパニーになるというのが私たちの目標ですが、それは、自分たちが生きている今だけではなく、100年後も200年後も魂が続く会社でありたいという願いです。そのためには、良きことをもって利益をあげる会社こそが、最先端であり真に価値ある存在であることを証明したい。世の中には、いつの時代も課題や問題があり、それをビジネスで解決していくというのが私たちの基盤となっていくでしょう」

20歳で亡き父の事業を継いだとき、「人に喜ばれる仕事でちゃんと儲けるという“きれいごと”を、真剣にやり遂げてみたい、証明したいと思った」と話す和田氏。

「そのときの想いは今も変わらず自分の中にあります。いろんな人に喜んでもらい、人を幸せにしたい。それが、僕を突き動かしてくれるのです」

取材日:2022年1月14日
(取材・文 山下 満子)

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