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起業家ライブラリ

西川 明秀 氏

日本全国を産油地に!ゴミから再生エネルギーを生み出す

廃棄物から生まれる水素をエネルギーに転換
   新しいビジネスモデルを推進する

西川 明秀 氏

株式会社BIOTECHWORKS-H2
代表取締役
ウェブサイトhttps://biotechworks.co.jp
事業内容・廃棄物を再生可能エネルギーに変換
・製品のCO2削減量を商品生産前から可視化するサービスの提供
・回収処理後の製品のCO2排出量算定
・CO2削減量の見える化プラットフォームの開発・運営

株式会社BIOTECHWORKS-H2(以下、BIOTECHWORKS-H2)は、廃棄物から水素(H2)を生成し、エネルギーに変換するスキームを構築している。多様な有機性廃棄物が処理可能で、従来の焼却処分と比べて二酸化炭素(CO2)排出量を最大約80%も削減できるという。日本各地域で排出されるゴミから二酸化炭素と水素を生成し、これらを原料としてe-fuel(合成燃料)も製造できる。「将来的には全国にプラントを設置し、日本全国を産油地にしたい」と語る代表の西川明秀氏に、ビジネスに懸ける想いと、これまでの歩みを伺った。

廃棄物は処分するものではなく“価値ある資源”となる

私たちの大きな強みは、その地域で発生する有機性廃棄物から水素を生成し、地域の特性に合った水素の活用方法を提案できることです。例えば廃棄物が多く出る都市部では、天然ガス発電所で使われるガスに水素を一定量混ぜ込むことで、発電に利用できます。水素は燃やしてもCO2が発生しないので、全体としてCO2排出量を減らすことができます。

株式会社BIOTECHWORKS-H2

冬に日照時間が短くなる豪雪地帯では、水素発電により、太陽光だけでは足りなくなる冬場の電力を補うことができます。他にも水素から生成したアンモニアで農業用肥料を作ったり、メタンガスを生成してガス発電に利用したりと多様な展開が可能です。

日本では、狭い国土に埋め立て地を確保するために、廃棄物をできるだけ小さく、そして安く処理することに重点が置かれてきました。私たちの考え方は、“いかに小さく低コストで処理するか”ではなく、“資源としていかに有効活用するか”ということに重点を置いています。

家庭や事業所から出る廃棄物処理に使われる自治体の税金は、1人あたり年間約20,000円(※)。その費用が削減できれば教育や福祉、医療などに回すことができ、その地域に暮らす人たちは、より安心して幸せな生活を送れるでしょう。人口も増え、街に活気が出ることで、結果的に税収も増えるという好循環が生まれます。

人口規模や産業などの事情はそれぞれ異なりますが、多くの自治体では、私たちのスキームを導入することで廃棄物処理の費用の軽減でき、利益の創出が可能です。つまり、廃棄物が“不要なもの”から一転、“価値あるもの”へと変わるのです。

※参考:環境省報道発表「一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和5年度)について」より
「Ⅲ 廃棄物処理事業経費の状況」

既存企業と協働することでビジネスモデルをつくる

私は大学で経済学を学びながら、22歳の頃にアパレル製品の企画・開発会社を立ち上げました。その後も、マーケティングとブランディングの知見を活かし、いくつかの事業を立ち上げました。業界歴は25年以上、BIOTECHWORKS-H2は6社目の起業です。

今回の起業の原点は、アパレル業界における廃棄物の深刻な実態でした。CO₂排出量は石油産業に次ぐ2位と言われ、大量生産・大量廃棄が常態化しています。廃棄される繊維製品を、何とかしてリサイクルできないかと考えたことが動機です。

1つの繊維製品には、綿などの天然繊維、ポリエステルやポリウレタンなどの化学繊維が混ざり、ボタンやファスナーなどにはプラスチックや金属と、いろいろな素材が使われています。繊維製品の廃棄物を分析したところ、家庭ごみと成分がほとんど変わらないことがわかりました。それなら、繊維製品に限らずリサイクルできない有機性廃棄物全体を、水素の生成という方法で正しくエネルギーに変えてしまおうというのが、私たちの考え方です。

さらに私たちのビジネスは、これまで廃棄物処理を行ってきた既存企業などに取って代わるものではないことも、重要なポイントです。参入障壁を崩すことなくシステムやライセンスとして手法を提供し、電力会社やエネルギー企業とは、生成したエネルギーを売買する関係です。競合するのではなく、共創することを重視しています。

廃棄物処理の主導権を取ることが目的ではなく、廃棄物を正しくエネルギーとして活用していきたい。そのために、既存の企業と協働関係を築くことも大切だと考えています。

エネルギー問題を解決することで世界平和に寄与する

私たちの最終目標は、CO2と水素から合成されるe-fuelの製造です。e-fuelはガソリンや灯油、ジェット燃料、軽油などに加工することができる人工的な原油とも言える燃料。製造には、水素が大量に必要です。日々生まれる廃棄物から水素を生成する私たちの手法は、水素の供給源にぴったりです。

日本では焼却処分が主流ですが、世界の多くの国では埋め立てによって処理されています。焼却コストを避けたいという事情がありますが、埋め立て地周辺では水質・土壌汚染、メタンガスによる火災などの問題も深刻です。さらに、人口増加に伴い、埋め立て処分には限界があります。これまで廃棄物処理にほとんど費用をかけてこなかった国に、適切に処理をしてもらうためにはどうすればいいのか。“廃棄物は資源であり、燃料になる”という私たちの手法が、その答えになりうると考えています。

現在の目標の1つは、2050年までに私たちのスキームが入った廃棄物処理施設を各都道府県につくること。その地域の廃棄物から生成された水素を使って、各地でe-fuelを生成する“日本全国産油地化計画”です。それが実現すると、産油国から原油を輸入しなくてもいい日が来るかもしれません。実際に産油国である中東の国々からも、私たちの技術について問い合わせがあります。

いま世界で起こっている戦争の背景には、エネルギー問題があります。私たちの技術がその解決の糸口となり、廃棄物が資源として平和と幸福に貢献できる。世界に平和をもたらし、人々の幸せに寄与する。私たちの事業は、そんな大きな可能性を持つものだと確信しています。

OIHをこんなふうに活用しました!

第2回HeCNOS AWARDに受賞し、大阪・関西万博の出展が決まりました。それをきっかけに、名古屋のスタートアップ施設でのピッチイベントにも参加。さらには、「NewsPicks」内の堀江貴文さんのYouTube番組「HORIE ONE」が大阪に来た際には、OIHから推薦をいただき、「出張メイクマネーサバイブ in 大阪」に登壇しました。これからもOIHでのつながりを大いに活用しながら、生まれ育った大阪を盛り上げていきたいと思います!

株式会社BIOTECHWORKS-H2

2025年開催、大阪・関西万博 大阪ヘルスケアパビリオン内での出展時の模様

取材日:2025年6月10日(水)
(取材・文 岩村 彩)

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