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起業家ライブラリ

元治 孝文氏

業界初! “錦鯉の越境ECプラットフォーム「KoiFan(コイファン)」”で革新を

元治 孝文氏

株式会社KaaP
代表取締役
事業内容世界中の錦鯉愛好家と日本の錦鯉生産者(養鯉業者)をつなぐECプラットフォームを通じた錦鯉の販売・流通支援

独自の視点とアイデアで、錦鯉業界のビジネスのミライを大きく変える

“錦鯉”は、今や世界中に愛好家が存在するクールジャパンを代表する銘柄の一つ。最近は、海外の愛好家達により、オークションで一匹数千万円、時には数億円もの価格で取り引きされるシーンが、テレビのニュースなどで話題になるなど、その人気は高まっている。とはいえ、世の多くの人にとっては、「実際に錦鯉を買うにはどうすれば良いのか?」「価格は一体どれくらい? 相場がわからない」と疑問に思うことは多いだろう。

そんな世界中に存在する購入サイドの疑問を解決し、日本の錦鯉を育て販売する生産者=養鯉業者サイドの販売スタイルをも革新するのが、錦鯉のECプラットフォーム「KoiFan(コイファン)」だ。

「KoiFanは、泳ぐ宝石と呼ばれる錦鯉を安心かつスマートに購入できる業界初、日本初のECプラットフォームです。このサイトでは、メジャーなECモールに必要な機能を持っているのは当然のこととして、さらに業界初の試みとしてAIを活用した錦鯉の価値算定システムを搭載しようとしています」と語ってくれたのは、KoiFanの発案者であり、サイトの開発・事業運営を行う株式会社KaaPの代表取締役・元治孝文氏。同氏は、小さい頃から観賞魚が大好きで、いつしか錦鯉の虜に。自身が実際に飼いたいと思った時に、前述した「購入方法の不明確さ」「相場の不明瞭さ」といった消費者目線の疑問をきっかけとしてKoiFanを構想した人物である。
また元治氏は、2019年9月にKaaPを創業、令和生まれのスタートアップ企業として2019年12月には、大阪イノベーションハブ主催によるピッチイベント「ミライノピッチ2019」に参加。起業から半年未満ながら、一般部門でOIH賞を受賞し、そのニッチな分野に着目したユニークさと、業界の発展、クールジャパンの世界発信につながる社会貢献性の高いビジネスモデルで注目を集めた。

 

ビジネスで日本をはじめ、世界中の人々の幸せに貢献したいとの思いから起業

高校時代に、多民族国家であるマレーシアに一人旅をした時、多様な人々が国や地域それぞれに違う、独特の生活をする様子を目の当たりに。その時から「ビジネスを通して、自分が過ごしてきた日本社会に貢献しつつ、世界中の多様な人々が平和で幸せな生活を営めるような世界を実現したい」という思いを抱いた元治氏。
10代の頃から起業家マインドを持ち、大学卒業後は、世界中の人々の生活水準向上のために大規模な投資を行い事業を展開している、ある総合商社に入社した。そこでは、インフラ事業部門の経理や日本のメーカー向けの海外の工業用地販売、ベトナムのグループ会社では、日系メーカーの支援事業等、数々の事業に携わり、ビジネスに関わるさまざまなことを体験した。

同時に、「日本が誇るモノ、技術にもっと関われるビジネスをし、その業界はもちろん、世界の人も幸せにしたい」との思いも強まり、いくつかのビジネスアイデアを膨らませていったのだという。そうして約5年間の商社生活を終え、2019年6月末に事業を開始。数あるアイデアの中で元治氏が選択したのが、自分の趣味だった観賞魚、錦鯉にフォーカスした事業だ。

きっかけは、錦鯉が世界中でブームになっている一方で、一般の人は買い方も相場も分からないという現状からだった。「まずは、そんな業界独特の不透明感を払拭したいという思いから、市場調査を開始しました。次第に見えてきたのは、人手不足や長年の商習慣等から、海外のバイヤーを通さなければ海外に販売できないという現状。そのため世界の愛好家達は、日本の養鯉業者から購入するのと比べて、2〜4倍の価格で入手する方法しかなかったということに驚きました。また国内に500以上ある養鯉業者の多くは、小規模で高齢化も進んでいるということも知る中で、業界に若い方々がどんどん入ってこれるようにしなければならないとの思いは強くなりました」と元治氏は当時を振り返る。

これらの市場調査で得たデータから検討した結果、業界初・国内初の錦鯉のECプラットフォームというアイデアは生まれたのだった。

 

起業家達が集うピッチイベントへの参加を通して、ビジネスに磨きをかける

より確固たる事業モデルとするためにシステムの開発やPR活動を進める中で、元治氏はスタートアップ関連の複数のイベントに参加。そんな中で知り合った人から、大阪イノベーションハブのピッチイベントへの参加をアドバイスされる。「事業化に向けて色んなことを模索する中で、ミライノピッチへの参加を決めたものの、その頃は事業モデルも完成されたものではありませんでした。
でも大阪イノベーションハブのコーディネーターから、多くのアドバイスを受け、キャッシュフローや物流モデル構築等、ビジネスに磨きをかけることができたのは良かったこと。そして、一般部門でOIH賞をいただき、評価いただいたことは自信にもつながりました」とイベント参加がビジネスのブラッシュアップにつながったと話してくれた。

イベント前にも、事業の構想に賛同する業界の生産者の方々や地方自治体や金融機関の職員の方々から多くの支援を得ていたが、イベントで審査員をはじめとする方々から大きな評価を得たことは、自身の事業への自信を深めるきっかけとなったという。

 

業界初のアドバンテージを強みに、世界の錦鯉市場へ挑む

2020年2月に「KoiFan」のベータ版をリリースし、現在は、ユーザーの獲得や国内の養鯉業者への浸透と参画促進を図りながら、正式リリースをめざしている元治氏。今後は、価値算定システムの完成と運用開始、外国語への翻訳機能を搭載し、海外の業者と提携して海外へ直接販売を開始し、さらに錦鯉の効率的な養殖のためのデータ販売を始めるといったロードマップを描き、実現に向けて取り組んでいる最中だ。

「錦鯉は中国をはじめ、東南アジア、北米、ヨーロッパで高いニーズがあります。その中で最初は、東南アジア、ヨーロッパでの事業拡大を進め、その上で最大のニーズがある中国市場にも踏み込んでいきたいと思っています。私たちのサービスを活用いただいて、錦鯉を飼う楽しみや幸せを広げていくこと。そしてパートナーである養鯉業者さんや業界を活性化し、若い人に人気のある業界にして、若手の後継者が増えていく・・・。そんな貢献ができたら私も幸せですね」

最後に「錦鯉の魅力は?」という質問に対しては、「模様の美しさはもちろんですが、何と言っても人に懐くところですね。だから誰もがもっと簡単に買えるようにして、その魅力を浸透させていきたいです。実は錦鯉は、喧嘩や縄張り争いをしないため、平和を象徴する生き物と言われています。なので、錦鯉が世界中に普及することは、私の昔からの夢である世界平和に少しでも貢献できると思います」と語ってくれた元治氏。 その言葉には、社会起業家の原点である「社会のため、世の人のため」という思いがあふれていた。

取材日:2020年1月28日
(取材・文 北川 学)

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