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世界初の核心技術・画像処理AIPEを開発し、世界へ

高田 周一 氏/Shuichi Takada

代表取締役
会社名ArchiTek株式会社
ウェブサイトhttp://www.architek.co.jp/
事業内容情報通信機器などの回路部品、プロトタイプ開発を行う研究開発メーカー

“固いけど、やわらかいハードウェア“

画像処理AIPE。ArchiTekが開発したAIPE(ArchiTek Intelligence Pixel Engine)は、AI機能を有するとともに高性能・コンパクト・低価格という他にない特徴を持つ画像処理システムだ。自動車の追突防止装置や自動運転システム、ドローン、工場のライン検査、セキュリティカメラ、医療診断装置、モバイルなど、先進デジタル機器において人間の目の代わりとしての機能を発揮する幅広い分野への活用が期待されている。

その特徴を、「固いけど、やわらかいハードウェアだ」と語る。
「たとえば、従来の自動車の衝突防止装置の画像処理AIPEでは、画像認識の機能しか使えません。つまり、機能が固定され固くなってしまいますが、当社のAIPEはハードウェアでありながら、さまざまなアプリケーションをプログラムでき、複数の機能を柔軟に使えます。いわば、やわらかいハードウェアです。固いハードウェアをやわらかくしようとすれば、多数のCPUを積み込む必要があり、コストが高くなってしまいますが、AIPEはその必要がありません。また、仕様変更や追加があった場合、固いハードウェアは初めからチップを作り直さなければなりませんが、AIPEは柔軟に対応できます。まさに万能選手です」。

パナソニックから、たった一人で起業

高田氏は前職の松下電器産業(現・パナソニック)勤務時代に、コンピュータの構造を研究するR&D部門で、家電製品やゲーム機器、携帯電話など、さまざまなデジタル機器の回路設計に携わっていた。しかし、2010年に会社の半導体事業が不振に陥り、先行き不透明になったことから、「これ以上、ここにいても思うようなことはできない」と考え退職したという。

大企業から、たった一人で飛び出した高田氏は、デジタル機器のプロトタイプのデザインや回路設計を請け負う会社を起業したが、東日本大震災後の景気低迷時期と重なり、あまり受注を取れなかったそうだ。そういう状況の中でも会社の基盤づくりのために、会社員時代の仲間2名を誘い、国関係の仕事を下請けで受注していたが、「これでは発展性がない」と、独自回路の研究開発に没頭するようになった。
「研究費用は自己資金の他、大阪府や銀行系の助成金を充てていました。会社の売上はあまりなかったので、私たちの給料は最低限に抑えていました。みんな、市民税非課税でしたね。それでも何とか生きてこられたのは、サラリーマン時代の蓄えがあったことと、3名とも捨てるものが少なかったからです」。

転機となったNEDOの研究開発型支援事業

研究に明るい兆しが見え始めたのは2015年ごろ。NEDOの平成28年度研究開発型ベンチャー支援事業に採択されたことを機に、苦しかった状況は一変する。
「多くの企業からオファーをいただき、大企業の技術者とのコネクションが広がりました。また2017年末に、ある展示会に出展したところ、テレビ局の取材を受け、『日本にもアメリカのシリコンバレーに負けない技術を持つ会社がある』と紹介していただき、さらにオファーが増えました」。こうしたことがきっかけでVCから多額の投資を受け、資金的な目途も立ったという。

2018年8月にはNEDOの「高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発プロジェクト」に参画。同社が回路設計、チップ製造をソシオネクスト、アプリケーション開発を豊田自動織機が担当し、自動運転システムの開発が進んでいるという。

お手本は松下幸之助の水道哲学。「いいものを世界中に届けたい」

今後の戦略は、世界中にAIPEを広めていくこと。同社が世界中に販売するのは不可能なので、シリコンバレーの大手半導体会社などにバイアウトし、世界中に販売してもらうことも検討しているという。
「この戦略は、パナソニックの創業者である故・松下幸之助の水道哲学に基づいています。水道哲学とは、『水道の水は生命に関わる価値あるものだが、生産量・供給量が豊富なので安くて容易に手に入る。いいものを低価格で世の中に広げよう』という考え方です。アメリカのシリコンバレーの大手半導体企業などでは、大型サイズで1個1万円のチップを製作していますが、AIPEは小型ながら性能はほぼ同じながら、究極的には1/10消費電力、1コイン(500円)価格で提供し、広く世界中に広めていきたいと考えています」。

しかし、この戦略で利益を十分に確保できるのだろうか。「目となるCMOSセンサーは世界で年間70億個が出荷されています。その内、3%に当社のAIPEが採用されると約1,000億円の売上になりますが、大きな利益は期待できません。狙いは、AIPEチップに後付けで搭載するソフトウェア開発です。水のように世界中に広まったAIPEに搭載するソフトウェアを開発し、大きな利益をあげようとしています」。

求む!優秀なエンジニア

このような戦略により、2~3年後にはJカーブを描くことが期待されるAIPEではあるが、現在の課題は人材確保だと話す高田氏。知財戦略については、周辺特許まで取得するとコスト高になるため、できるだけ幅広い範囲で取得できるものを選別していきたいと話す。現在は、さらに技術を磨き、深堀りするためにもエンジニアの確保が急務だという。「一緒に大きなビジネスに挑戦してくれるエンジニアさんに、ぜひ来てほしいですね」とメッセージをいただいた。

 

「事業がうまくいく自信があれば、ぜひ挑戦してほしいですが、中途半端な決意やビジネスモデルなら、とてもリスキーなので一旦、立ち止まって考え直した方がいいと思います。また、事業プランは最初に描いたストーリー通り、うまく進むはずがないので、途中で軌道修正できる柔軟性と精神力のある人が向いていると思います」。
大企業から飛び出し苦労を重ねながら、事業を成功に導こうとしている高田氏ならではのアドバイスではないだろうか。

 

(取材・文:大橋一心)

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