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起業家ライブラリ

武野 團 氏

毛細血管で世界中の健康を見守り、健やかな社会を創りたい

武野 團 氏

あっと株式会社
代表取締役
ウェブサイトhttps://kekkan-bijin.jp/
事業内容毛細血管スコープ『血管美人』の開発製造および販売事業、健康事業社へのコンサルティング

「この治療ホントに自分に合っているの?」が開発のきっかけ

毛細血管スコープ『血管美人』は、あっと株式会社が製造販売をする毛細血管の血流を観察する機器だ。2009年の会社設立以来、すでに約1000台を販売した実績がある。主要な販売先は、医療機関や薬局チェーン、大手自動車企業の健康保険組合、大手サニタリー企業の商品開発部門など。大手サニタリー企業の商品開発部門では、商品の効能評価用として採用されている。

『血管美人』の開発者は、代表の武野團氏の父・武野照男氏だった。父に大腸がんが見つかったことをきっかけに、父が毛細血管スコープ『血管美人』の開発を始めたんです」と振り返る武野氏。電機店などを経営していた照男氏は自称発明家でもあるという、ユーモアあふれる人だった。電車の脱線防止システムや歩道橋昇降システム等、画期的なアイデアを考えることが好きな人だったそうだ。

病気が見つかってからの照男氏は、温熱療法などさまざまな療法を試していたが、それらが自身に合っているのかがわかならいことに疑問を感じていた。そんな中、治療の効果を自分で知るために着目したのが“毛細血管”だった。 考えを巡らせているうちに、とある文献と出会う。毛細血管の血流を観察すれば自身の体に起こっている小さな変化がわかるようになると知った照男氏は、「そんな機器を自分で作ろう!」と決意。これが『血管美人』の始まりだった。

 

大阪の「やったらええやん」が起業をあと押ししてくれた

自身の病気がきっかけで発明をした照男氏だったが、当初、余命半年を宣告されていたガンの罹患から8年後の2009年に他界。武野氏は父の開発した『血管美人』の事業を引き継ぎ世に広めていくため、それまで勤めていたジャスダック上場の電子部品メーカーを退職。2009年に、研究開発型ベンチャー企業のあっと株式会社を大阪で創業した。会社名の『あっと』は、“@(アットマーク)”が由来だ。「適切な人に適切な情報を伝える役割を担う会社にしたいと思いから、『あっと』と名付けた。

自分で事業を営みながら発明に没頭する父・照男氏を小さなころから見て育った武野氏は、起業すること自体にはハードルを感じることはなかったそうだ。

そんな武野氏の出身は京都である。 なぜわざわざ大阪で起業したのかと理由をたずねると、「大阪の人は挑戦者に寛容的だから、挑戦するあと押しをしてもらえる環境だった」という。

「何でもそうですけど、考えれば考えるほどリスクやネガティブな面が見えてきて、挑戦しない方が良いんじゃないかと思ってしまうんですよね。大阪は「とりあえずやったらええやん」と言ってもらえることが多いし、大阪人は新しいものでも面白いものを重視する傾向にある。だからこそ、本当に面白いと思わせることができれば口コミを広めてもらえたり、紹介してもらえたりする機会が多いのも良い点だと感じています。ぼくは深く考えずにやってしまうことが多くて(笑)「やったらええやん」精神を大切にするぼくには、大阪がちょうどよかったのかもしれません(笑)」と明るく語ってくれた。だが、実際には創業時の苦労も多かったそうだ。

「起業したてのころはどこもお金を貸してくれなくて、やっと貸してくれたと思ったら高金利。いま思えば当初はまだまだ手探りで、事業計画書を上手に作れなかったことや、自己資金を十分に用意できなかったことが原因だったのでしょう。それに、ぼくはあまり頭が良くないので(笑)」と、謙遜する武野氏。とはいえ、あっと株式会社は創業以来に一度も赤字となったことがなく、9期連続で増収している。苦労にばかり注目するのではなく、目標へ向かって突き進む武野氏の前向きな性格が高じた結果なのかもしれない。

 

『血管美人』で分かることを増やし、ヘルスケアから医療へ

毛細血管スコープ『血管美人』は、採血することなく簡単に毛細血管の血流を観察できる装置である。 観察ポイントは1.血管にねじれがないかどうか、2.太さは適正か、3.濁りがないか、の3点。自らが体内の微細な変化を観ることで、健康状態をチェックして 生活習慣を見直すキッカケにできるという。

「今までの装置は血流を観察する機器でした。今『あっと』で取り組んでいるのは、毛細血管を観察できるだけでなく数値化までできる機器の事業化です。今後は、毛細血管の状態と血液状態・年齢との相関や、肩こり・食生活などの生活習慣や疾病と毛細血管の関係性を科学レベルで分かるようにし、『血管美人』を生活習慣改善の指導に役立てたい。今はまだヘルスケアの域ですが、いずれは医療と呼べるレベルに引き上げて医療機関と提携したいですね」と武野氏は語る。

数値化することで属人性に依存せず、誰が測っても毛細血管の血流の状態が把握できるようになる。研究開発分野への導入が増えていることもあり、お茶や水、サプリなどの健康補助食品のメーカーが自社製品がどの様に毛細血管を変化させる事ができるかを検証中で、将来的には一人一人の状態に合わせたオーダーメイドの健康メソッドや商品を提案できる可能性もあるという。

「日ごろから体の変化に注意することで病気を未然に防ぎ、病気で亡くなる人を減らしたい」これは、父の遺志を受け継いだ武野氏の願いである。

「もっと小型化して、まずは体温計のような気軽に使えるツールをめざします。そして、ゆくゆくは生活の動線上に機械を設置して、わざわざ自分でチェックしなくても気づいたらチェックできているといった環境になれば」と、各家庭に1台ずつ設置される未来の展望も語ってくれた。

 

起業したいならめざしたいと思える起業家を近くで見るといい。

起業をすれば必ず成功するとも限らず、常にさまざまな不安と戦っている起業家は少なくない。順調に会社を成長させる武野氏だが、自身も常に自分の市場価値を気にかけているそうだ。

「ぼくがあんまり論理的思考のできるタイプじゃないので、論理的思考のできる方のそばにいることを重視しています。起業したいなら、起業している人の近くへ行くことを意識してみるとよいかもしれません。それこそ、ベンチャー企業へ就職するのも一つの手だと思います。それに、何のために起業するのかという点について深く掘り下げて考え抜くことが大切ですね」と、勇気がなくて起業への第一歩を踏み出せない人へメッセージを贈ってくれた。

 

取材日:2018年8月23日
(取材・文:永瀬なみ)

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